高齢で授かった子ども。親としてできるだけのことはしてあげたいと思うのですが、教育費はどれくらいみておけば良いでしょうか。

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高齢で授かった子ども。親としてできるだけのことはしてあげたいと思うのですが、教育費はどれくらいみておけば良いでしょうか。

今回、回答いただく先生は…
鈴木 暁子先生 (すずき あきこ) プロフィール
  • お子様が遅い場合、ライフプランに与える影響を知っておきましょう。
  • ベースとなるプランを立て、そこから調整してみましょう。
  • 「どれだけ出したいか」ではなく「どのくらいまでなら出せるか」という視点で。

小林純子さん(仮名 40歳・専業主婦)のご相談

38歳で3つ年上の夫と結婚しました。晩婚でしたが子どもを授かることができ、現在出産準備中です。年齢的にも子どもはこの子1人だけにしますが、親として子どもの興味や可能性については広げてあげたく、できるだけのことはしてあげたいと思っています。
ただ、自分も夫も「もう結婚はないかな」と思っていたので教育費のことはまったくわかっていません。教育費予算としてどれくらい、どのように準備すれば良いでしょうか。

小林純子さん(仮名 40歳・専業主婦)のプロフィール

家族構成
家族 生活費 住宅ローン 貯金
本人
(40歳・専業主婦・第一子妊娠中・10月出産予定)
360万円 108万円
(65歳まで)
約500万円

(43歳・会社員)
手取り年収:650万円
約500万円

父親が退職後に大学入学するので、教育費と老後の備えをそれまでに 節約強制的な貯蓄だけでなく、収入増のための準備も進めましょう

1.晩婚、晩産がライフプランに与える影響を理解しましょう。

小林さん、こんにちは。秋にご出産を控えておられるとのこと。体調には十分ご留意ください。高齢で授かったお子様だけに、待ち遠しさもひとしおでしょう。
とはいえ、家族が増えると教育費という現実的な心配事も発生します。昨今、女性の結婚年齢が上がり、それに伴い出産年齢も上がってきています。高齢出産の医学的な面でのリスクは今回のご相談では触れませんが、ライフプランには大きく影響することもあるので、まずその点について理解していただきたいと思います。

下記の図をご覧ください。

人生の中で貯金しやすい時期としにくい時期があるのをご存知ですか?
人生には三大資金といわれる、住宅資金、教育資金、老後資金がありますが、これらが支出される期間は多くの方が貯金しにくくなります。したがって、第一の貯め時として、独身時代から結婚してお子様が乳幼児くらいまでの期間があります。家族が増えても乳幼児の間は生活費が激変するほどはかからないでしょう。この時期の頑張り次第で後半の貯め時の苦楽が変わります。

一般的なケースとして30歳くらいで結婚、30代前半でお子様を授かり、30代半ばで住宅を購入したとすると、30代半ばくらいから支出が増え始め、40代から50代前半くらいまでが支出のピークとなります。この時期は貯めにくい時期といえます。

ただし、お子様の教育資金支出が終わる50代後半は、現役世代とセカンドライフの家計との転換期といえます。その分を丸々貯蓄に充てることができ、期間は短いものの一気に貯蓄のスパートをかけることができます。この期間が第二の貯め時です。

では小林家のケースを見てみましょう。

小林家の場合は、先ほどのケースに比べ、ライフステージがそれぞれ約10年程度遅くなります。それにより、40代後半くらいから支出が大きく増え、60歳定年時は三大資金すべてが重なることでピークとなります。また、50代後半の貯金のラストスパートもできません。つまり老後資金準備が非常に難しくなるわけです。このことを意識して家計管理をする必要があります。

2.ベースとなるプランを作り、そこから対策を検討しましょう。

親として、できる限りお子様への投資はしてあげたいというお気持ちは十分理解できます。ただ、前段で気づいていただいたように、教育資金に重きを置きすぎると、老後資金不足に陥りますので、まずここは冷静に家計と向き合いましょう。

教育費の統計をご覧ください。

【進学コース別学習費】
すべて公立 小学校から私立 中学から私立 高校から私立
幼稚園(3年) 145 145 145 145
小学校(6年) 193 916 193 193
中学校(3年) 143 398 398 143
高校(3年) 135 311 311 311
合計 616 1,770 1,047 792

(単位:万円)

※文部科学省平成28年度「子どもの学習費調査」を基に算出。千円単位は四捨五入
※幼稚園は私立とする
※金額は「学校教育費」「学校給食費」「学校外活動費」合計

【進学コース別大学の教育費】
  国公立 私立大学(文系) 私立大学(理系)
入学費用 69 93 87
在学費用 434 645 721
合計 503 738 808

(単位:万円)

※㈱日本政策金融公庫平成29年度「教育費負担の実態調査結果」を基に算出。千円単位は四捨五入
※入学費用:受験費用、学校納付金、入学しなかった学校への納付金
※在学費用:年間の学校教育費(授業料、通学費、その他)、家庭教育費(補修教育費、けいこごとなど)

調査の平均値ではありますが、中学から私立に通わせ、私大文系に進学させるとすると、4年後(ご主人様47歳、純子さん44歳)から18年間でざっと1,800万円近くかかります。さらにお子様の卒業はご主人様が66歳時となりますので、年金生活になっても教育費負担があるわけです。では、この統計値を当てはめて、小林家の家計の推移を見ていきましょう。なお、今回は教育資金の老後資金への影響を見たいので、その他支出は旅行費、固定資産税程度としました。実際は車や家具・家電などの買い替えなど、他にもまとまった支出が発生するとお考えください。

■小林家の家計推移キャッシュフロー表(中学から私立の場合)

中学から私立に通わせた場合の家計の推移です。
小林さんご夫妻は、65歳にならないと年金がもらえない世代です。したがって、ご主人様は60歳退職後も働くことを前提としました。それでも中学から私立に通わせることになると、老後資金は純子さんが女性の平均寿命となる頃に枯渇します。
次に高校から私立に通わせた場合の家計の推移です。

■小林家の家計推移キャッシュフロー表(高校から私立の場合)

とりあえず先ほどよりは赤字転換が遅くなっていますが、その他支出が考慮されていないので、これでも実際にはもっと早い段階で赤字になっている可能性が高いとお考えください。このように、小林家では教育資金支出のタイミングが遅いことが、想像以上に老後資金準備への影響を及ぼすことがおわかりいただけたかと思います。

3.収入を増やすことと教育資金の方針がポイントです。

小林家の家計改善は今から実行しましょう。

■小林家の家計推移キャッシュフロー表(対策を考慮した場合)

①世帯収入をアップする
ご主人様の収入だけでは老後資金が枯渇する可能性が高いので、純子さんがパート収入を得ることも目指してください。
お子様が小さいうちは家を空けられないと思いますので、小学校高学年か中学入学の頃になりますでしょうか。その場合、純子さんもそれなりの年齢になっているため、仕事の選択肢も狭まってしまうかもしれません。ですから、育児期間中に、パソコンスキルはぜひ上げておきましょう。また医療事務など専門的なスキルを身につけることができれば、時給の良いパートも狙えます。ぜひ、育児期間中はご自身の価値を高める期間としてください。

②支出を見直す
ご夫妻はこれまで独身時代も長く、趣味や旅行にお金を使えていたと思いますが、家族が増えることを機会に、生活費の見直しも行いましょう。自治体にもよりますが、乳幼児の間は医療費はほとんどかかりません。また育ちざかりになる前は、食費などもそれほどかかるわけではありませんので、いわゆる第一の貯め時にあたるのが今なのです。

お子様が物心つく頃からは家族旅行費などはケチりたくないですよね。そのためにはお子様が小学校入学までの間は旅行費などを抑えるなどメリハリをつけましょう。

また、塾や習い事もあれもこれもでは月謝だけでもバカになりません。親御さんの目からお子様の興味や資質などをしっかり見て、厳選することも必要です。

お子様の成長に伴い、食費や被服費など生活費が上昇します。逆にお子様が大学生になったらお小遣いはアルバイトで準備させるのも良いでしょう。

③強制貯蓄で大学費用を準備
教育資金の中でも負担が大きいのが大学費用です。ただ、準備期間は18年ありますから、最初から計画的に準備していきましょう。
家計の推移表には記載してありませんが、現状の児童手当の制度が続けば、生まれてから中学卒業までに200万円の手当を受け取れます。これはお子様名義の通帳を作り、すべて将来の教育資金に充てましょう。

また必要な資金は強制的に貯めるしくみにしておくと良いでしょう。家計が苦しくなるとどうしても貯金を後回しにしてしまいがちです。昔より返戻率(払込保険料に対して受け取れる保険金の割合)が低くなってはいますが、強制的に準備する方法として学資保険があります。支出を見直して削減した分を保険料に回し300万円の保険金額を設定できれば、児童手当を合わせて大学費用のかなりの部分をカバーできます。

加入時の注意点は、返戻率を確認することです。場合によっては払い込んだ保険料より受け取れる額が小さい元本割れのケースもあります。逆に加入期間が長いほど返戻率は上がりますので、加入するのであればできるだけ早いほうがお勧めです。ちなみに妊娠中でも加入できる保険会社も増えているので確認してみてください。

昔から教育費は「聖域」と言われ、削減しにくい支出です。デフレの時代でも教育費は安くならないので、世帯収入や他の支出とのバランスを意識しないと、教育資金の支出割合が増えていることに気づきません。

昨今、それなりの収入がある会社員世帯でも奨学金を利用して進学するお子様が増えています。借りるのも返すのもお子様ですので、卒業後の返還が大きな負担となるケースも少なくありません。「できるだけのことをしてあげたい」とお金をかけてあげることよりも、お子様が奨学金を利用しなくても(あるいは利用したとしても少額で)済むよう資金準備をしてあげることのほうが、お子様の将来のライフプランを守ることにもなります。 「いくらまで出してあげたい」ではなく「いくらまでなら出せるか」という視点で考えていただくことが重要です。

もうすぐご出産です。それまでご夫婦で話し合い検討しながら、今は無事出産を終えられることを最優先とし、穏やかに日々を過ごしてください。