ローン支払いが月に13,000円も上がり、家計負担が重くなります。 繰り上げ返済が有効でしょうか。


ローン支払いが月に13,000円も上がり、家計負担が重くなります。
繰り上げ返済が有効でしょうか。

市田 雅良先生 (いちだ まさよし) プロフィール
 
  • 住宅ローンの見直しのポイント
  • 住宅ローン返済は短期決戦であれば変動金利もあり!
  • 返済計画のシナリオを作ろう!

飛鳥 一郎さん(仮名)ご夫妻のご相談

住宅を10年前に購入したので、住宅ローンは昔の住宅金融公庫の2段階金利です。今年から11年目に入り、ローン金利が4%に上昇します。購入段階からわかっていたのですが、このご時世での上昇は家計の負担が大きくなり、とても不安に思っています。そこで、繰り上げ返済すれば利息分がお得なので実行しようかと思います。その他にいい方法はないでしょうか。また、60歳の定年後もローンを払い続けなければならないことも不安材料です。なにかいい対策はないのでしょうか。

飛鳥 一郎さんのプロフィール

飛鳥 一郎 昭和34年10月11日生 40歳 会社員 世帯主
飛鳥 京子 昭和38年5月1日生 36歳 パート 配偶者 同居
飛鳥 郁子 平成3年8月8日生 8歳 小学生 子供:世帯主の扶養 同居

※ご家族の年齢は税務年齢(12月末時点での年齢)で表示しています。

現在の年間の収入

世帯主の収入 支出の部
給与収入 600万円 日常の生活費 240万円
社会保険料・税 113万円 教育費 235万円
可処分所得 487万円 住宅費(ローン&管理費) 132万円
生・損保保険料 24万円
貯蓄取り崩し ▲144万円
可処分所得合計 487万円 支出合計 487万円

※日常の生活費は月額20万円かかっています。

お子様の進学予定と予想される教育費用

西暦 入学金など 年間の教育費
長女 郁子 2010 大学他入学 私立文系/自宅 76万円 160万円
2029 結婚(予想) 200万円

現状のキャッシュフロー表

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当初融資 2段階型住宅ローン返済表(抜粋)

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一歩進んで、借り換えと繰り上げ返済併用を検討

住宅ローンの見直し方法

現状のキャッシュフロー表では、お子様の大学進学で教育費がピークになる時点でも住宅ローン負担があり、家計はピンチの状態が続きます。ただし、この時期では貯蓄残高が大きく減りますが、家計破綻とまではなりません。でも65歳以降の老後には貯蓄残高がマイナスとなり、家計破綻となる可能性が高いと予想されます。
対策をとるにしても、子供の教育費は削れないし、家計もゆとりのない状態となれば、残る優先順位は「住宅ローンを見直す」ことになると思います。 まず、飛鳥さんが検討されていた「繰上返済」を実行すればどうなるのかを具体的に検証し、次に他の解決法も検討してみましょう。

1.住宅ローンの繰り上げ返済を検討してみましょう

飛鳥さんが今検討されている「繰上返済」は、2010年11月に4%に金利変更があるため、12月に資金100万円を用意し繰上返済をするというものです。この場合のシミュレーションでは、どうなるのでしょうか?

<100万円の繰上返済の具体的例とその効果>

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<シミュレーションと検証ポイント>

  • 10/11/27現在の融資残高。 17,521,070円
  • 122回の残高から100万円を差し引いた額と、その額と一番近い融資残高を表の中から探します。17,521,070-1,000,000≒16,512,047近辺 150回付近
  • 150回から現在の返済完了回数を引きます。122回~150回 ○28か月この差が、100万円を入れたことによる効果となります。繰り上げ返済の為に用意する金額 17,521,070円 - 16,512,047円 = 1,009,023円
  • 次に、返済表の中で「利息分」などと記載されている項目の数字を合計します。その利息合計分が支払わずにすんだお得金額となります。
  • この例での得する利息は、利息トータル 1,590,609円(黄色の部分)となります。
  • 2010年12月のローンの引落は151回から進んでいきます。なお、金融機関によっては、返済する際に手数料がかかるところがあります。

<対策の効果>
繰上返済は確かに利息がお得(約159万円)になるメリットはありそうですが、それだけでは抜本的解決とはなりそうもありません。他の効果的な方法を探ってみましょう。

2.借り換えを検討してみましょう

繰上返済のほかに「借り換えローン」という方法があります。
不況から住宅ローンの返済が困難になる方が増加している事はニュースとなっています。でも、銀行側としては「ローン金利収入」は安定した収益を上げる稼ぎ頭といえます。そこで各金融機関は住宅ローン商品の取り扱いを増やしていて、借り換えローン商品は優遇金利の競争となっています。利用者としては「検討する価値あり」と思われますが、何でもかんでも借り換えを検討すればいいというわけではありません。

FPが勧める、借り換えを検討する場合にメリットがある一定の条件とは、

条件1 借入残高が「1000万円以上」あること ⇒(約1700万円)
条件2 返済期間が「10年以上」あること ⇒(約25年)
条件3 借り換え先の金利を利用すれば「1%以上」のメリットがあること(4%-1.275%=2.275%)

飛鳥さんは、以上の条件を満たしていますので、借り換えでのメリットを享受できそうです。

借り換えの手順と項目は
(1)金融機関を選ぶ
(2)返済金利と、固定金利か変動金利かを選ぶ
(3)返済期間を選ぶ
(4)保証料や登記手数料などの借り換え手数料を把握する

そこで、(1)から順に飛鳥さんとFPが一緒に調べることにし、銀行が出している金利情報を収集してみました。

変動金利 当初3年固定 当初5年固定 当初10年固定 当初20年固定
店頭表示金利 2.475% 2.9% 3.0% 3.15% 3.9%
2010年1月現在

近隣の金融機関を回って調べ、上記のローン商品を選ぶことにされました。
(PCにあまり詳しくないといわれるのでネット銀行は検討しませんでした)
実は、この金融機関は飛鳥さんが勤務する会社の労働組合と取引があり、ご本人口座もお持ちで利用されていました。そこで労働組合員用の金利の提示があり、店頭金利より引き下げた優遇金利制度があることがわかりました。 以下の表です。

変動金利 当初3年固定 当初5年固定 当初10年固定 当初20年固定
優遇金利 1.275% 1.7% 1.8% 1.95% 2.7%
2010年1月現在(住宅ローンのみの金利表示で、利用条件項目をクリアが条件)

50歳の飛鳥さんは、これから60歳までの10年をローン完済目標にするために短期決戦を計画したいということでした。
そうなれば少し複雑となりますが、「借換え」と「繰上返済」を組み合わせてプランニングしてみる事にしました。
まず、(3)の返済期間はとりあえず「20年」として、60歳までに繰上返済を2~3回実行して返済期間短縮を畳みかける事を計画に入れて、(2)の変動か固定かという選択では変動金利を選び、「1.275%」を利用することになりました。さらに、これには「保証料無料」という優遇条件が上乗せされていました。
ちなみに調べたところ、他の金融機関の優遇金利は0.975%というのがありましたが、保証料無しの場合には0.3%の上乗せがあり、結局のところ1.275%となり、同じ条件となることがわかりました。
また(4)のコストという点では、印紙税・登録免許税・登記手数料など、約28万円程度が必要ということがわかりました。

3.ローン返済プランのアドバイスとそのシナリオ

ご質問にあったような現状での繰上返済よりも、借り換えで金利減少メリットを受けつつ繰上返済をプランに入れ、短期決戦により果敢にローン残高を減少させていくことが飛鳥さんにとって望ましいし、実行可能なプランと考えられます。
(注意:飛鳥さんは50歳なので短期決戦として変動金利をあえて選んだわけですが、20代~40代であれば、他のイベントがあり長期返済で家計負担を抑える事が優先されるというアドバイスが一般的になると思います。)

シナリオ(1) 借換えを2010年3月に実行
シナリオ(2) 第1回目の繰上返済を2012年12月に100万円を実行
シナリオ(3) 第2回目の繰上返済を子供教育資金負担が無くなる頃の2015年に、500万円を実行
シナリオ(4) 第3回目の繰上返済を2017年12月に100万円を実行
シナリオ(5) 最後の繰上返済を2019年に、資金に退職金の一部を使って残債の230万円を一括返済し終了させる。

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借換えをしたが、繰上返済は行わなかった場合
30/02/27まで返済

回数240ヶ月 トータル返済額 元本 利息合計
合計 19,266,337 17,000,000 2,266,337

借換えしただけの返済では、利息合計が2,266,337円ですが、シナリオ通りですと利息合計1,294,532円となります。
ただし上記の表は利息の変動がないものと仮定して計算していますので、この返済開始から10年の間には利息の変動があることも十分考えられ、もし金利リスクが大きくなる場合にはこのシナリオ通りにいかないことになりますので、一つの目安として検討してください。

シナリオ実行後のキャッシュフロー予想
基本生活費を月額18万円(退職後は月額15万円)で家計の見直しを行い、住宅ローンの繰上返済を予定通り実行していった場合のキャッシュフロー表は、60歳以降も貯蓄残高は黒字の維持が可能となります。

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4.ライフプランの中での住宅ローン返済のポイント

今の世の中、いくら安定したところに勤めていたとしても、「絶対安心」とは限らないようです。声高に言いたくはない個人的感覚をあえて言いますが、残念ながら「生きていくリスク」が非常に高まっていると言わざるを得ない日本の経済状態はまだ続きそうです。つまり長期に働けない可能性が高まるのなら、長期に支払っていく費用には注意を払う必要があるということです。支払い保険料、長期の住宅ローンなど、要注意です。 でも、生活に欠かせない住宅は高価なものです。一括購入は難しく、住宅ローン商品を利用せざるを得ないのですが、早く返済を終えることを鉄則として考えたいものです。

昭和の初め住宅は数百万円で購入でき、退職金などを利用して即金で支払われるケースも多かったようです。しかしインフレで物価が上昇し住宅価格も高価になったため、ローンで購入するケースが多くなり、今では住宅ローンを組むのが当たり前となってきました。
昭和40年頃のローン返済方法は「元金均等方式」で返済するケースが多かったようです。この方法は、ローン返済し始めで「元金+利息」の負担が大きく、後半になるにつれ徐々に減ってきます。これは毎月の家計にとって逓減するものではありますが安定したものではなく、家計バランスがとりにくいものでした。そこで現在多くの方が利用している「元利均等方式」が、毎月一定額返済ということから家計に安定感があると好まれるようになってきました。

鉄則、 住宅ローン返済は可能な限り早く返す。とりわけ「生きていくリスク」が高い社会状況では、ローン債務を持つものは「短期決戦」を計画し、支払利息を減らすことで総返済額を少なくするよう心がけたいものです。そのためにはただ漫然と日常に追われて返済していくのではなく、トータル的に家計負担が少なくなるよう、ライフプランンを立てて、しっかりした返済計画を持つことがポイントとなります。

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