「ある程度貯蓄が貯まったので、定期に預けるより保険にした方がいい」と 保険外交員の人に言われました。実際のところ、どうなのでしょうか?


「ある程度貯蓄が貯まったので、定期に預けるより保険にした方がいい」と
保険外交員の人に言われました。実際のところ、どうなのでしょうか?

村井 英一先生 (むらい えいいち) プロフィール
  • 生命保険は、主に2つのタイプに分けられます。
  • 現在加入しているのは、全て貯蓄重視タイプの保険です。
  • 保障重視タイプの保険がなく、万が一への備えが不足しているようです。

前田 香織さん(仮名 40歳 自営業)

今まで、すぐに使わない貯蓄は、かんぽ生命の保険にしていました。先日も「ある程度の貯蓄が貯まったので、定期に預けるより保険にした方がいい」と言われました。このまま保険ばかりにしてよいのかと、心配になっています。アドバイスをください。

前田 香織さん(仮名 40歳 自営業)のプロフィール

家族構成 : 俊夫さん (夫 36歳 自営業 年収351万円)
香織さん (妻 40歳 自営業 年収44万円)
長男 (7歳)
長女 (5歳)
次男 (3歳)

<収入>(単位:円)

月々 ボーナス 年間合計
世帯主の給与 260,000 390,000 3,510,000
配偶者の給与 30,000 80,000 440,000
合計 290,000 470,000 3,950,000

<支出>

月々 毎月の支出とは 別の支出(年間) 年間支出
家賃 0 0
食費 10,000 120,000
光熱費 6,200 37,120 111,520
通信費 12,500 150,000
被服費 0 0
医療費 6,000 72,000
教育費 2,600 9,000 40,200
ガソリン代 6,000 72,000
レジャー費・交際費 4,000 48,000
小遣い 50,000 600,000
その他 16,900 362,320 565,120
合計 114,200 408,440 1,778,840

<金融資産>

金融商品 金額
普通預金 1,250,000
定期預金 12,300,000
国債 5,000,000
投資信託など 500,000
合計 19,050,000

<生命保険>

保険の種類 被保険者 保険会社 保険金額
終身保険 かんぽ生命 6,000,000
終身保険 かんぽ生命 8,000,000
養老保険 かんぽ生命 2,000,000
養老保険 かんぽ生命 2,000,000
学資保険 かんぽ生命 6,000,000
個人年金(確定) A生命 11,100,000
合計 35,100,000

同じタイプの保険にばかり加入するのは得策ではありません。
万一の備えが不足しているので、保障重視の保険を検討しましょう。

1.保険に加入する目的を考えましょう。

前田様からは、ご家庭の家計の状況と加入されている生命保険の内容を伺いましたが、いずれも丁寧な詳細を教えていただき、この場で御礼を申し上げます。家計は大きな無駄遣いがなく、堅実なご家庭の状況が見て取れます。また、保険商品の内容から、保険期間まできっちりと把握されており、しっかり管理されているのがよくわかります。
そのような方でいらっしゃるからこそ、比較的早く貯蓄もたまり、ご担当の外交員の方からご提案を受けるのだと思います。今までも、貯まった貯蓄から一時払いの保険に加入されていたようですね。
しっかりと管理されている前田様ですが、保険の加入目的についてはあまり深く考えずに、勧められるままに保険にされていたのではないでしょうか。外交員の方も、よい商品をお勧めしているとは思いますが、必ずしも、ご家庭の必要性にピッタリなものとは限りません。その結果、加入している保険の状況とご家庭の必要性がずれている場合もあります。この機会にもう一度、保険加入の目的を考えてみましょう。
保険商品には、死亡した場合に保険金が出る死亡保険や入院した場合に給付金が出る医療保険などいろいろなものがあります。しかし、大きく分けると、次の2つのタイプに分類できます

1つは、保障重視タイプの保険です。多くは掛け捨てで、満期金はありませんが、少ない保険料で大きな保障が得られます。具体的には、定期保険(定期死亡保険)、医療保険、自動車保険などがこのタイプになります。
もう1つは、貯蓄重視タイプの保険です。多くは満期金があり、掛け捨てではありません。その代わり、保険料の割りに保障はそれほど大きくありません。具体的には、終身保険(終身死亡保険)、養老保険、学資保険などがこのタイプです。終身保険には、満期金がないはず、と思われるでしょう。確かに、終身保険は死亡した場合に保険金が支払われるもので、一生涯続く保険ですから満期金はありません。しかし、この保険は途中解約した場合に受け取る解約返戻金が大きく、貯蓄の代わりに使える保険商品です。そのため、貯蓄重視タイプといえるのです。

この2つのタイプは、保険の利用目的を考える上で、大変重要です。保険に加入する際は、検討している保険商品がどちらのタイプなのか、それがご家庭の状況に合っているのかと考える必要があります。例えば、死亡した場合に保険金が出る死亡保険でも、定期保険(定期死亡保険)はご主人に万が一のことがあった場合(死亡した場合)に奥様やお子様の生活費や学費を賄うために加入します。一方、終身保険(終身死亡保険)は万が一に備えるという面もありますが、将来に資金が必要となった際に解約して解約返戻金を受け取るという使い方もできるという点が、加入の要素となります。中には、解約返戻金の金額をよくして、解約での受け取りを目的としている商品もあるぐらいです。貯蓄重視タイプの保険は、保障の付いた貯蓄商品と考えてもよいでしょう。

前田様の加入されている保険の一覧を見ますと、どうでしょうか。終身保険、養老保険、個人年金。いずれも貯蓄重視タイプの保険です。ところが、医療保険は特約でついている以外、保障重視タイプはほとんどありません。ご主人様の万が一の場合に対して、将来に向けた貯蓄はしっかりされているものの、万が一に備えた保障は十分なのか心配なところです。貯蓄重視タイプの保険でも、ある程度の保障はありますが、保障重視タイプの保険のような大きな保障はありません。この点を、家計の状況や将来の家計の予想をしながら、確認してみましょう。

2.しっかり貯蓄をされていますので、現状では将来の家計に心配ありません。

家計の状況を拝見すると、育ち盛りのお子様が3人いらっしゃるにもかかわらず、しっかりと財布の紐を締め、無駄な支出はされていないようです。前田様ご自身はもちろん、お子様にも無駄遣いをしないように、しっかりと教育されているのではないでしょうか。貯蓄が十分にできるのはお子様が小さいうちです。今のうちにしっかりと貯めておきましょう。
3人のお子様は年が近いので、高校・大学の進学が重なります。その頃は、家計の赤字が続くことも考えられますが、既に大学進学費用を学資保険で準備されています。私立か公立か、どの学部に進学するか、自宅外通学となるか、などで予定以上にかかることもありますが、貯蓄が取り崩せるようでしたら、それほど心配はありません。貯蓄が底をついてしまうようだと、今から家計の見直しが必要ですが、前田様の場合はその心配はなさそうです。将来の家計の状況と貯蓄残高を予想した表とグラフでも、その点が確認できます。

<今後ののキャッシュフローを別ウィンドウで表示>

<今後の家計状況の予想(グラフ)を別ウィンドウで表示>

ここで、子供の教育費がどれくらいかかるのかを確認してみましょう。下の表は学校でかかる費用に学校外でかかる活動費などを加えた、教育費の総額です。給食費やスポーツクラブ・学習塾なども含まれます。

1年当たりの教育費の平均

(単位:万円、大学の公立は国立)

小学校 中学 高校 大学
公立 30.8 48 51.6 51.1
私立 139.3 123.6 98.1 117.6

(文部科学省「子どもの学習費調査(平成20年度)」、
独立行政法人日本学生支援機構「学生生活調査(平成20年度)」より作成)

お子様が学校を卒業されたあとは、老後の資金準備に入ります。では、老後に備えて必要な額はどのくらいでしょうか。総務省の家計調査(平成22年調査)によると、二人以上世帯の平均支出は1ヶ月あたり、60代で28.6万円、70代以上で23.8万円となっています。もっとも、平均値というものは富裕層のために高めに出る傾向がありますので、実際はもう少し低めに見ても問題ないでしょう。前田様の場合、老後の支出と予備費の合計で概算7,000万円、年金収入が概算4,500万円とすると、65歳の時点でおおよそ2,500万円の貯蓄があれば安心と考えられます
前田様は、養老保険、個人年金、そして終身年金でも老後の資金を準備されています。学費のピーク時にも貯蓄の落ち込みが大きくないので、老後に貯蓄が枯渇する心配はありません。先程の表とグラフを見るとよくわかります。

3.ご主人様に万が一のことがあった場合が心配です。

では次に、考えたくはないのですが、ご主人様に万が一のことがあった場合(死亡した場合)の家計の状況を考えましょう。ご家族で自営業を営んでいらっしゃるとのことで、お仕事の状況によって収入がかなり変わってきます。ここでは、単純にご主人様の年収に相当する分がなくなったと考えて計算しています。

<万が一の場合のキャッシュフローを別ウィンドウで表示>

<ご主人様に万が一のことがあった場合の家計状況の予想(グラフ)を別ウィンドウで表示>

ご主人様に万が一のことがあった場合に出る保険金は、終身保険と養老保険の合計800万円だけとなっています。現在の預貯金をそのまま取り崩していくと、お子様3人の大学卒業までに貯蓄が底をつくことになります。場合によっては進学先を断念することにもなりかねません。そのような事態に備えて、保険があるのですが、貯蓄重視タイプの保険は大きな保障がありませんので、それほど効果が期待できません。その点、保障重視タイプの保険ならば、大きな保障があり、万が一の場合に頼りになります。
特に前田様の場合は、貯蓄はしっかりとできているのに対し、万が一への備えが不足しています。定期保険、または収入保障保険(家計保障保険と言っている保険会社もあります。)への加入を検討されてみてはいかがでしょうか。お仕事の状況にもよりますが、保険金は1,000~2,000万円で十分でしょう。ちなみに、収入保障保険は保険金が年金の形で出る保険で、保険料も安く、お子様の成長とともに遺族保障額が少なくなることに対応していますので、理にかなっています。これらの保障重視タイプの保険は、保険料が掛け捨てとなりますが、万が一に対する必要な備えといえましょう。今また、貯蓄重視タイプの保険を重ねて加入するよりも、安く、効率的に家族の安心が手に入れられます。

さらにもう1つ、考えたいことがあります。自営業というお仕事柄、ある程度の資金はいつでも動かせるようにしておきたいものです。急な業績の不振や収入減に備えて、いつでも引き出せる普通預金や解約しやすい定期預金においておくことは大切なことです。保険商品にすると、すぐに解約した場合に損失となってしまいますので、簡単に使ってしまわないというメリットもあります。しかし、どうしても資金が必要な時はそれがデメリットとなります。老後の資金は潤沢にあるものの、子供の進学費用が工面できないということにもなりかねません。前田様の場合は、現状ではお子様の進学についてそれほど心配はありませんが、やはり教育費がかかる時期が集中しますので、収入が不安定になっても心配要らないように、ある程度の資金を預貯金に置いておく方がよいでしょう。サラリーマン家庭ではありませんので、「ある程度貯蓄が貯まったので、定期に預けるより保険にした方がいい」とは安易に言うことはできません。

いかがでしょうか。まとめますと、ご主人様の万が一に備えて、保障重視タイプの保険の加入をお勧めいたしますが、さらに追加で貯蓄タイプの保険へ加入することはお勧めしません。既に十分に加入されているからです。貯蓄重視タイプの保険は、特に以前に加入したものは予定利率が高く、なるべく解約しないほうがよいでしょう。ただ、昨今の経済情勢を踏まえると、保険会社の格付などに十分に注意しておくのが賢明です。

ご参考:主な格付機関

㈱日本格付研究所 http://www.jcr.co.jp/
㈱格付投資情報センター http://www.r-i.co.jp/jpn/
スタンダード&プアーズ http://www.standardandpoors.com/home/jp/jp
ムーディーズ・ジャパン http://www.moodys.co.jp/Pages/default_rating.aspx

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