自分の加入している保険が適正なものなのか、よくわかりません。


自分の加入している保険が適正なものなのか、よくわかりません。

井上先生 井上 信一先生 (いのうえ しんいち) プロフィール
 
  • 家計の受けるダメージの大きさで優先順位をつけて保険を検討していきましょう。
  • 今の契約をあえて継続するのも見直し手段の1つです。
  • お金の出し手は同じ家計。貯蓄と保険のバランスも大切です。

平田 エリ子さん(仮名 35歳 会社員)のご相談

8年前に契約した保険会社から見直しプランの提案を受けています。もともと今の内容をよく理解しないまま続けていましたが、自分に合った保険がどういうものなのか教えて頂けますか?

平田 エリ子さん(仮名 35歳 会社員)のプロフィール

職業 : 上場企業の総合職(勤続12年)
収入 : 520万円(額面)
貯蓄 : 400万円、年間50万円の積立を継続。別途、母親の貯蓄がある。
家族 : 母親(66歳、別居で既婚の妹家族がいる)
住居 : ガンで他界した父親が所有していた戸建住宅に母親と2人暮し

シングルの方は「収入確保」と「蓄財」を優先課題に!
加入中の保険は貯蓄の代わりに継続し、新たに所得補償保険を準備

1.保障(補償)のモレや偏りがないかをチェック!

加入している保険が果たして自分に合っているのか?もしかしたら無駄な保険に入っているんじゃないか?あるいは必要なものが欠けていないだろうか?平田さんのように、今ひとつ自分の保障内容に自信が持てない方は少なくないと思います。その原因にあるのは、保険の仕組み自体のわかりにくさもさることながら、「商品ありき」で保険を捉えようとする点にあるような気がしています。

例えば長寿化に伴い、ケガや病気への備えとして『医療保険』に加入する方が増えています。とりわけ「日帰り入院から給付金が貰えるもの」は、昨今のスタンダードとして人気が定着しています。確かに商品性だけに注目すると、少しでも有利と思える特徴に惹かれてしまうのはもっともです。しかし、家計が被るダメージを考えた時、必ずしもそれは合理的な判断になっておらず、保障のモレや偏りを招いていることもあるのです。

生命保険や損害保険は、予期せぬ事態(リスク)により家計に深刻なダメージが及ぶ場合に備え、金銭的な補てんをするために加入するものです。ここでいう家計のダメージとは、「予定していた収入が減少または途絶してしまうこと」、そして「予定外の高額な支出が発生してしまうこと」の2つに分けることができ、さらには下表のとおり、その要因別におよそ8つに細分して考えることができます。

表1 家庭生活のリスクと保険商品

リスクの種類 リスクの内容 自助努力による代表的な準備手段
予定外の収入減少 死亡 扶養者の死亡により遺族の生活設計が狂う 定期保険、終身保険など
就業不能 就業不能により自分や家族の生活設計が狂う 所得補償保険
失業 失業により自分や家族の生活設計が狂う
老後 自分や家族の老後生活が苦しくなる 個人年金保険、貯蓄・投資商品
予定外の支出増大 医療費用 高額の医療費用が発生する 医療保険、ガン保険
介護費用 高額の介護費用が発生する 介護保険
資産損害 資産損害により修理・買い替え費用が発生する 火災保険、地震保険、車両保険
損害賠償 損害賠償責任を負う 個人賠償保険、自賠責保険、対人・対物賠償保険

このように整理すると、保険に求める優先順位の高さは、「その事故が起こる確率」や「保険金等を貰える可能性」ではなく「事故が起きた時のダメージの大きさ」によることが再確認できると思います。多くの方が自動車保険の対人・対物賠償を無制限で契約しているのも、感覚的にこの優先順位を理解しているからではないでしょうか。

先の医療保険も全く同じ。わざわざ高い保険料を払ってまで短期入院に備えるより、むしろ確率的には低いものの入院長期化によるダメージのほうがずっと怖いはずです。また、医療保険の保障の柱である入院給付金は退院するとそれで終わってしまいますが、退院後も通院治療や在宅治療が長引いてしまったら?とりわけガンなどはその期間が数年にも及ぶ場合もあるといわれます。その時の治療費は果たして保険でカバーできるものになっているでしょうか?さらに、療養中は働けなくなってしまう可能性もあるわけですが、この間の収入確保こそ実は一番重要だと気付くのではないでしょうか?(会社員の加入する健康保険では、最長1年6ヵ月の休業補償を受けられますが、その期間を超えて就業不能状態が続いてしまうと、家計が受けるダメージは相当深刻な状況といえます)。

とはいえ、ほとんどの場合では公的年金制度や公的医療保険制度等の社会保障等や、会社員であれば福利厚生制度等により最低限の保障を受けられるので、保険で必要なのはその不足分です。また働き方や家族構成など、家計の置かれている状況によりダメージの程度も異なりますので、重視すべきリスクに合わせて保険を考えていけば良いのです。

ちなみにシングルの方は、扶養家族がいなければ死亡保障は特段必要ないと思われます。その代わり、万が一の時に家計や身体を支えてくれる家族がいなければ、就業不能状態や高齢時の要介護状態は既婚者やお子様のいる方よりも深刻になることも考えられます。したがって、まず『所得補償保険』等で万が一の場合でも収入が減少・途絶してしまうリスクを回避し、保険料負担が重くなることを避けるために現在加入中の死亡保険を解約するのが検討案の方向性の1つとして考えられます。

2.積立貯蓄の代わりとして現在の契約をこのまま継続してみる

さて、平田さんがご契約の「生前祝い金付定期保険」は、通常の掛け捨て型の定期保険に生存時祝い金が特約付帯されている商品です。当然、その分だけ積立保険料が加算されているので保険料は高額になっています。もしこれから加入を検討するとしたら、再考する余地のある保険かもしれません。

ただし、平田さんの契約概要をみると、これから支払う保険料合計額(102万9,000円)よりも生存時に受け取れる祝い金等の残りの合計(130万円)が多くなることが見込めます。これは当該積立金を約束する保険契約には見られる特徴で、保険期間の経過期間に比例して、積立金や解約返戻金に対する保険料からの充当割合が増していく仕組みが影響しているためなのです。保険期間の前半では払った保険料の割にあまり貯まっていなかった積立金が、既払込積立保険料部分に係る積み増し分も加わって、後半になってようやく増えてきたと考えて頂ければ良いと思います。

表2 現在のご契約内容の概要

主契約【3年ごと生前祝い金付定期保険】

契約時年齢 27歳
保険期間 15年(42歳まで)
死亡・高度障害保険金 1,000万円
祝い金 10万円(計40万円)
満了時祝い金 100万円
特約
疾病・災害入院特約 日額5,000円(15年満期)
女性疾病入院特約 日額5,000円(15年満期)
保険料 保険料月額12,250円据置金等
据置祝い金 10万円
積立配当金 3万6,000円
解約返戻金(35歳時) 47万円

ともあれ、今後支払う保険料については3.8%相当の利回りで積立を行えると計算することができます。今の低金利状態ではもちろんのこと、これから先も積立やまとまったお金を預ける場合に付利される預貯金等の金利がこの水準を上回る経済環境にならない限り、ある意味では現在の保険が効率的な蓄財手段と考えることもできます。加えてこれまで契約者配当金が付いていることから、契約時より保険会社の運用環境が好転している背景も予測できます。配当金が今後も支払われるかどうか保証はできませんが、少なくとも、保険会社の経営悪化により破綻するような場合がない限り、ほぼ確定利回り商品と捉えても良いでしょう(保険会社が破綻すると、このような貯蓄性のある保険金額は真っ先に減額対象となります。現段階では契約保険会社の財務状況やその健全性を測るソルベンシー・マージン比率に大きな問題は見られないようですが、今後も注視しておくと良いでしょう)。

一方、いま解約しても既払込保険料の一部等が解約返戻金として戻ってきます。新たに加える保険と合わせた保険料負担が重ければ解約するのも一考です。ただし、万一平田さんが亡くなってしまった場合、お母様が受給されている年金で生活を維持していけるか、またはどの程度貯蓄があるのかにより、解約して不安が残る場合は死亡保障と医療保障等がセットになった割安な共済商品に1本加入しておくと安心でしょう。

まとめ

既婚者やお子様のいる家計に比べ、シングルの場合は負担が軽く済むと思いがちです。しかし、老後は自身の要介護状態までを含めた生活費を1人分の年金で賄っていかねばならないため、人生の後半期では逆に厳しい生活環境になる場合もあります。その分、働けるうちに将来に備えてどれだけ蓄財できるかがポイントですが、この現役期間中に収入がストップして貯蓄を取り崩さねばならなくなる事態は非常に痛手となります。

したがって、保険による備えも「収入確保」を中心に、不安であれば高額支出が懸念される「介護費用」や「特定疾病」に備える保険に絞込み、できるだけ貯蓄に回せる金額を多めに取っておくのが肝要だと思われます。

平田さんの場合、貯蓄手段としては高い利回りが見込める商品がたまたま加入中の『生存祝い金付定期保険』であったため、保険料は積立とみなし、そのまま継続することをお勧めします。7年後の満了時までに受け取る祝い金(総額140万円)は、その時点の金利情勢等に応じて定期性預貯金に預けるか、一時払い型の『個人年金保険』や『介護保険』を検討してはいかがでしょうか。一方、純粋な保障商品として加えることを検討したいのが『所得補償保険』となりますが、高額医療費の負担が心配なら、一般的な医療保険ではなく先進医療給付や通院給付の充実した『ガン保険』に絞込み、これに「女性疾病特約」程度を付帯しておけば安心でしょう。

保険を検討する際には、他方で貯蓄のことを同時に考えるのが大切です。「貰えたら嬉しい」程度の保障内容の保険に固執するのではなく、いざとなったら賄える範囲の額は貯蓄でカバーすると割り切り、相当痛手の大きくなるものだけを保険で準備しておくという発想に切り替われると思われます。今回、保険会社から提示されている見直しプランが平田さんの今後の生活を重視し、このような考えに即したものであれば詳しい話を伺ってはいかがでしょうか。