夫婦で会社を経営し順調ですが、 二人とも生命保険に入っていません。


夫婦で会社を経営し順調ですが、 二人とも生命保険に入っていません。

宮塚 達夫先生(みやつか たつお)プロフィール
  • 保障の必要性を考えましょう。
  • 定期的に保険を見直しましょう。
  • 会社の経営状態も常にチェックしましょう。

今井 泰孝さん(仮名 35歳 自営)のご相談

夫婦二人で会社を経営しています。
経営は順調で、収入も順調に推移しており、昨年念願のマイホームを手に入れることができました。
現在、生命保険には全く加入しておらず、不安を感じています。また保険会社の営業の方からも声をかけられています。加入するとすれば、どのような保険に加入したらいいのか、私たちに合った生命保険を教えてください。

今井 泰孝さん(仮名 35歳 会社員)のプロフィール

家族構成 : 今井 泰孝さん(仮名 35歳 自営 手取り年収1,200万円)
洋子さん(仮名 妻 34歳 自営 手取り年収800万円)
詩音さん(仮名 長女 2歳)
住居 : 持ち家 (2,200万円借り入れ、住宅ローン返済中、団体信用生命保険なし)
職業 : 工業デザイナー(現在、ご主人の仕事のサポートを奥様がしている)
60歳でリタイヤしようと思っている。
毎月の生活費 : 35万円(住宅ローンは除く)
貯蓄 : 3,500万円
住宅ローン残高 : 6,000万円(残34年・ご主人名義・団信あり)
住宅ローン毎月返済額 : 23万円
国民年金加入 : (未納なし)

死亡や病気で事業への影響が大きい経営者は、
ケースを良く検証して、必要な保険に

1.保障の必要性を考えましょう。

確かに今井さんのように、生命保険に加入していないと不安だと感じる方がたくさんいらっしゃいます。
しかしながら、ただやみくもに勧められるままに加入することは、大切な資産をドブに捨てることにだってなりかねません。
生命保険は、リスクを保険料というお金でヘッジするひとつの方法であり、今井さんの資産・収入によっては、まったく必要ないということだってあるのです。

生命保険には大きく分けて、被保険者が亡くなったり、高度障害になった場合に保険金が支払われる死亡保険と、病気やケガで入院したり手術を受けた場合に保険金が支払われる医療保険がありますが、それぞれ今井さんに必要なのかどうかケース別に考えていくことにしましょう。

2.死亡保障について

a.ご主人に万が一のことがあったら、事業の継続が困難となってしまう場合

マイホームには団信がついているので住まいは安心ですが、残された奥様とお嬢様の生活費や教育費等を確保する必要があります。
詩音さんが18歳になるまで遺族年金も支給されますが、生活費は不足し、奥様が働くにしても、小さなお子様がいては多くの収入は望めないでしょう。

下記の表をご覧ください。

<ご主人に万が一のことがあったら、事業の継続が困難
となってしまう場合のキャッシュフロー表を別ウィンドウで表示>

この表は、ある条件を仮定して、今後の貯蓄推移をシミュレーションしたものですが、奥様57歳時に貯蓄が無くなってしまうことになります。
仮に90歳まで貯蓄残高をプラスにしておくためには、ご主人を記名被保険者とする6,000万円程度の死亡保障が必要ということになります。
もちろん、毎月の生活費などの前提条件を変えることによって保障額を増減させることは可能ですが、いずれにしろ死亡保障は必要と考えられます
ご自身で、残された家族にどの程度の生活を送らせてあげたいか考えてみてください。

b.ご主人に万が一のことがあっても、事業が継続できる場合

<ご主人に万が一のことがあっても、事業が継続できる場合の
キャッシュフロー表を別ウィンドウで表示>

現在の奥様の収入のみが継続されると仮定した場合でも、奥様90歳時の 貯蓄は十分あり、保険は不要と考えられます。

c.奥様に万が一のことがあった場合

<奥様に万が一のことがあった場合の
キャッシュフロー表を別ウィンドウで表示>

現在の奥様の収入分を人件費と考え、ご主人の収入分は変わらないとしても、やはり保険は必要なさそうです。

d.どんな保険に入ればいいのでしょうか。

現時点では、上記aの、ご主人に万が一のことがあったら、事業の継続が困難である場合のみ、6,000万円程度の死亡保障が必要ということになります。 しかし、これはあくまでも現時点での必要保障額です。
ご主人がご健在の期間が長くなればなる程、貯蓄も増えていき、逆に必要保障額は減少していくからです。

5年あるいは、10年の定期保険に加入してみてはいかがでしょうか。
定期保険はいわゆる掛け捨ての保険ですが、その分保険料が安いのが特徴です。 そして、5年または10年経った時点で保障額を見直すことをお勧めします。

毎月、あるいは毎年、保険金を決まった額だけ受け取れる年金形式の収入保障保険もありますが、今井さんの場合、サラリーマンとは違い、必要保障額が決まった額だけ逓減していくパターンではないので、やはり定期的に見直しをされた方がいいと思われます。

e.法人保険も検討してみましょう。

経営が順調な今井さんの場合、法人契約で長期平準定期保険に加入するという方法もあります。
この保険は定期保険の一種なのですが、その保険期間満了のときにおける被保険者の年齢が70歳を超えていること、その保険に加入したときにおける被保険者の年齢に保険期間の2倍に相当する数を加えた数が105を超えるものであることなどが要件となります。

契約者 :法人 記名被保険者 :ご主人 保険金受取人 :法人

という形で契約します。

当初保険料の2分の1が損金算入できるので、節税対策にもなり、万が一の場合に法人が受け取った保険金を、死亡退職金として今井さんが受け取ることになります。
在任年数、死亡時の報酬額によりますが、法人が支払った退職金は一定額損金算入が可能となり、またこの保険は解約返戻金が貯まっていくので、経営状態によっては途中で解約して資金繰りに利用することも可能ですし、退職金原資に充てることも可能です。
今井さんにとっては、かなり大きなメリットがありそうです。
尚、この保険の場合、他にも要件がありますので、加入を検討する場合は専門家にご相談された方がいいでしょう。

3.医療保険について

a,高額療養費

重い病気などで病院等に長期入院したり、治療が長引く場合には、医療費の自己負担額が高額となります。
そのため健康保険には、家計の負担を軽減できるように、一定の金額(自己負担限度額)を超えた部分が払い戻される高額療養費制度があります。

今井さんの場合、上位所得者となり、1か月の負担限度額は

150,000円+(医療費-500,000円)×1%
    (多数回該当の場合は83,400円)

となります。

仮に1月から12月まで入院し、毎月30万円の自己負担がかかったとすると、健康保険から7割負担されているので、本来の医療費は毎月100万円ということになり、1月から3月の自己負担限度は

150,000+(1,000,000-500,000)×1%  =155,000円
4月から12月は  83,400円
1年間で  155,000円×3+83,400円×9=1,215,600円

の自己負担が必要になります。

入院時の差額ベッド代、先進医療の先進技術部分などは対象外となりますが、一日5,000円、毎月15万円の別途出費がかかったとしても、年間の支払い額は治療費と合わせて約300万円です。
当然仕事もできないでしょうから、年間収入をゼロ、あり得ないとは思いますが、5年に一度1年間の入院を繰り返したとします。

<入院した場合のキャッシュフロー表を別ウィンドウで表示>

この場合でも、今井さんの場合、経済的には十分やっていけるようです。

長期療養が必要になった場合の収入減をカバーするために、所得補償保険の加入は検討されてもいいかと思いますが、医療保険は必要なさそうですね。

もっとも、親族にガンになった方が多いとか、特別な事情がおありでしたら、ガン保険に加入して、安心を買っておくのもいいでしょう。

4.まとめ

現在の今井さんの資産・収入から考えると、限られたケースのみ、生命保険が必要ということになります。
また今後、貯蓄が増えていけば、もっと必要性は薄れていくでしょうし、逆に収入が減ってしまった場合などは、もっと大きな保障が必要になることだって考えられます。
個人経営の場合、会社と家庭は表裏一体の関係ですので、常に双方の現状を把握して、必要性をチェックしていくことが必要です。
会社経営にとって経費節減が大切なように、保険料という無駄な?家計の出費を少しでも抑えて、幸せで豊かな家庭を築いていただければと思います。