第6回:意外に知らない!? 日本の介護制度の現状と問題点(2)


前回は、介護問題を経済的な側面から見てきました。しかし、公的介護保険がスタートしたのは2000年4月。「介護保険は、どうやって利用するのですか?」という質問は今でもとても多く、認知度はまだまだ高くはないようです。

そこで今回は、公的介護保険の利用の仕方や、介護の現状について説明していきたいと思います。

介護保険制度を正しく理解することが介護対策の第1歩!

介護保険が導入されてまだ7年余りです。その期間の短さからか、まだその利用の仕方や仕組みなどを理解できていない方が少なくありません。そもそも介護保険制度は、寝たきりになってしまった場合など、日常的に誰か人の助けが必要になったときに利用できる制度です。年齢により利用できる人とできない人に分かれます。

年齢 保険料負担 介護サービス
65歳以上
(第1号被保険者)
あり 利用可
40歳以上65歳未満
(第2号被保険者)
あり 利用可
(老化が原因の場合)
40歳未満
(介護保険未加入)
なし 利用不可

介護サービスを利用できるのは、65歳以上の第1号被保険者になります。40歳~65歳未満の第2号被保険者は、老化が原因とされる病気に限り介護サービスを利用することができます。40歳未満の方は、そもそも介護保険料を支払っていないため、介護サービスは利用できません。

介護保険を利用するための2つのステップ

介護保険を利用するには、大きく分けると「要介護認定の申請」→「介護事業所との契約」の2つのステップを踏む必要があります。

Step.1 要介護認定の申請

介護サービスを受けるためには、介護が必要な状態であることを認めてもらう必要があります。これを要介護認定といい、右図ようにまず市町村役場の介護保険窓口に申請を行います。すると訪問調査員が自宅に訪れ「心身の状況に関する調査」を行ないます。その後、コンピューターによる1次判定、主治医の意見書等もふまえた2次判定を経て、申請から1ヶ月以内に認定通知が自宅に送られてきます。

認定通知には、要介護状態の区分が書かれています。比較的軽度の要支援が2段階、それより重度の要介護が5段階で評価されます。

要介護状態区分 身体の状態
要支援1 日常生活においてほぼ自分で行うことが可能であるが、立ち上がりなどに何らかの支援を要する状態
要支援2 上記のほか、薬の内服などの日常生活に、何らかの支援が必要となる状態
要介護1 日常生活動作のうち歩行などに、部分的な介護が必要となる状態
要介護2 上記に加え、移動や衣服の着脱などの日常生活に、より介護が必要となる状態
要介護3 日常生活においてほぼ全面的な介護が必要となる状態
要介護4 介護なしには日常生活を営むことが困難となる状態
要介護5 介護なしには日常生活を営むことがほぼ不可能な状態

Step.2 介護事業所と契約して、サービス開始

要介護・要支援の認定を受けたら、次に行なうのが居宅介護か施設介護かの選択です。居宅介護を利用する場合、まずケアプランの作成をケアマネジャー(介護支援専門員)に依頼します。ケアプランとは、どのような介護サービスをいつどのくらい利用するかという計画書のことをいいます。その後、ケアマネジャー、介護サービスを提供する事業者とケアプランをさらに検討し、介護事業者と契約することでサービスが開始されます。

一方、施設介護を利用する場合、希望の介護保険施設と契約し施設介護計画(ケアプラン)を作成してもらうことで、サービスが利用できます。施設利用は、要支援ではなく要介護の認定を受けていないと利用できないので、注意が必要です。

介護保険の利用の仕方は一度理解してしまえば難しくはありません。しかし、介護はこれらの手続きが終わってからスタートするのです。

ヘルパーさんは、家政婦じゃない! 介護にはできることとできないことがある

ヘルパーさんは介護を必要とする人のケアを行い、介護をしている家族の支援をしてくれます。とても頼りになる存在なので、私たちはついつい過剰に頼ってしまいます。「洗濯するなら家族の分も洗っといて!」「食事は家族の分もお願い!」などです。しかし、ヘルパーさんは、介護を必要とする人のために家に来てくれています。したがって、家族の食事の準備や洗濯まで手伝うために来ているわけではありません。

日本は少子高齢社会を迎えています。つまり、少子化の問題はこれから働き手が少なくなってしまうということであり、介護でいえばヘルパーさんの数も減るということになります。一方高齢化は、介護が必要になる人が増加するということを意味しています。すでに現在、ヘルパーさんは不足しているのですが、それにもかかわらず、「草むしりをしてくれ」「家の窓拭きをやってくれ」などと、介護とはまったく関係のない依頼をする利用者がいるのも事実です。介護保険のルールが浸透していない証拠でしょう。ヘルパーさんがそれを断ると、事業者にクレームとして電話がかかってくる場合もあります。



公的介護保険は、介護保険料と税金を財源として運営されています。今後、利用者の増加を考えると、介護財政も余裕のある状況ではありません。いつ赤字に転落しても不思議ではないのです。

ヘルパー不足に、財政難。本当に介護が必要な人に必要なサービスを提供していく公的介護保険を維持していくには、利用する私たちもそのルールや現状を理解していく必要があるのです。

介護が抱える大問題! ヘルパーさんは泣いている!!

厚生労働省は介護財政が赤字にならないよう、保険料収入をより多く集めることや、自己負担割合を高くしたり介護報酬単価(掃除や洗濯をしてもらったときの単価のこと)を減らしたりすることを検討しています。私たちにとって介護保険料や自己負担割合が高くなるのは避けたいところですが、介護報酬単価が安くなる分には、サービスを利用したときに支払う金額が減ることになるので、一見望ましいことのようにも思えます。

しかし、厚生労働省と私たち利用者の間に挟まれている介護事業者は大変なのです。2006年4月に介護保険法が大改正により、介護報酬単価は下げられ、訪問介護事業所や施設は、改正前と同じ仕事をしていても収入が減ってしまったのです。

介護ビジネスにかかる費用の多くは人件費で、ヘルパーさん等に支払うお給料になります。継続して介護事業を行なっていくには、経費節減しかありません。収入は介護報酬単価が決められているので、値上げはできないからです。利用者を増やすという方法もありますが、ヘルパーさんを採用しようと思ってもなかなか集まらず、簡単にはいきません。一方経費節減の方法は、ヘルパーさんのリストラか減給です。ヘルパーさんが不足している中、事業所としてはまず「減給」という手段をとらざるを得ません。

現在、ヘルパーの仕事で生計を立てるのはかなり厳しいといわれています。そこに減給です。生活していかれなければ、ヘルパーの仕事を続けていくことはできません。他の職業に移っていく人も少なくなく、ヘルパー不足に拍車がかかっています。そんな中で、「利用されるお客様に罪はない」と必死で働いているヘルパーさんもいるのです。

厚生労働省に対して、「もう少し介護報酬を高くしてあげなよ!」と言いたくなりませんか? でも介護報酬を高くするということは、我々が負担すべき介護保険料や、税金が増えるということにつながります。もしそうなれば、収入が年金のみで介護サービスを利用し、ぎりぎりの生活をしている人にとっては死活問題になってしまいます。しかし、今のままではヘルパーさんはどんどん減っていってしまいます。これが日本の抱えている介護の大問題なのです。

介護の問題を解決できるのは、私たち介護サービスの利用者!

2006年の日本の平均寿命が厚生労働省から発表されました。男性は79.00歳でアイスランドに次ぐ世界第2位、女性は85.81歳で22年連続世界第1位です。また、約50年後の2055年には、100人のうち40人以上が65歳以上の高齢者との予測がされています。健康なまま一生を全うできれば、こんなに幸せなことはありませんが、年を取れば人の手助けが必要になることもあります。

人間は誰でも歳を取りますので、きっと介護は他人事ではないはずです。これから更に高齢化が進むという大問題を抱える今、私たちにできることは介護制度を正しく理解し、ヘルパーさんに甘えるのではなく、一緒に解決していくことだと思います。大切なのは、日ごろから介護に対する問題意識を持つということです。

日本の介護問題はそう簡単に解決できることではありません。今回取り上げた話以外にも問題は沢山あります。そういった問題をひとつひとつ解決しなければ、日本の介護制度は崩壊の一途をたどってしまうかもしれません。そうさせないためにも、厚生労働省、介護事業者そして私たちが、現状を理解し協力しあう必要があるのです。

執筆:中野克彦(なかの かつひこ)CFP®, 1級FP技能士
リンク・イノベーション代表。介護コンサルタント。介護事業所や一般企業のコンサルタントとして経営戦略立案、マーケティング戦略の策定等を行なう一方で、FP講師として大学や資格学校、大手生保会社での研修など年間100本以上のセミナーをこなす。日本FP協会「くらしとお金の相談室」相談員。