第10回:キャッシュフロー101


どんなゲームなの?

ロバートキヨサキ氏が書いたベストセラー「金持ち父さん貧乏父さん」の初版本が2000年に日本で売り出されてからはや7年あまり。株式投資や不動産投資は個人にも広く普及し、金銭感覚を身に着けるために考案されたキャッシュフロー101は投資を学ぶことができるゲームとして根強い人気を保っており、現在も日本各地でゲーム大会が開催されています。日本に一大ブームを巻き起こしたこのゲームを通じて、どんなことが学べるのでしょうか。実際にゲーム大会に参加してみました。

キャッシュフロウ

どんなゲームなの?

このゲームを一言で言うと、お金を稼ぐためには「自分が働く」のではなく、「お金に働かせる」ことを体験するゲームといえます。言い換えると、「お金を稼いでくれる資産をいかに作るか」がこのゲームのポイントとなります。

このゲームは人生ゲームのようにボードゲーム形式になっており、まず最初に職業を選びます。職業は「警察官」「看護婦」「弁護士」や「医者」などさまざまです。それぞれの職業には、毎月の収入額と支出額が記載してあります。またゲーム盤には、内側の円と外側の円の2つがあり、最初は内側の円をすごろくの要領で回ります。内側の円では、職業に応じて給料がもらえます。そして、給料をもらわなくても生活ができるようになると、外側の円に進むことができます。外側の円にあるマスの中から好きなマスをゲームが始まる前に決め、そこに止まったら上がりとなります。

ルールもすごろくと同様で、サイコロを振って出た目の数だけ進みます。最初は内側の円をまわり、「チャンス」のマスに止まると、「ディールカード」を引きます。そのカードには、将来値上がりしそうかどうかがある程度予測できる株や不動産の値段が書いてあり、カードを引いた人に買う権利があります。そして、不動産や株を売買しながら進むのですが、ここで重要なのは“自分が働かずして得られるお金”(「不労所得」といいます)をいかに多く稼げるかがポイントになります。例えば、株であれば配当をもらえますし、銀行に預けていれば利子がもらえます。また不動産を持っていれば、家賃が入ってきます。このような「不労所得」を多くすることが重要なのです。

なぜ重要かと言うと、このゲームで外側の円に出るためには給料をもらわなくても良いようにする必要があるからであり、そのためには「不労所得が毎月の支出額を上回る」ことが必要だからです。不労所得が毎月の支出額を上回れば、もはや自分で働いて給料をもらわなくても暮らしていけるので、「内側の円」で働くことをやめ、外側に出ていくことができるのです。これを「ラットレースから抜ける」といいます。

もともとラットレースとは、ネズミが回し車の中でクルクル走り続けることを言うのですが、転じて「生活をしている間は働きながら稼ぎ続けなければならない」ことを意味しています。ところが、もはや働かなくても生活ができるのであれば、働く必要はありません。仕事をやめて外側に行き、あとは「上がり」のマスに向かっていけばよいのです。

早速ゲームをしてみましょう。

ゲームのルール説明が一通り終わると、さっそくゲーム開始です。最初はお互いに要領がわからず、説明を詳しく聞きながら進みますが、だんだん慣れてくるとスムーズになってきます。と同時に、それぞれゲーム参加者の性格が出てきます。お金をなるべく沢山貯める人、手当たりしだいに株や不動産を買う人、儲かると判断した時に気前よくパーっと使う人、などなど。

このゲームでは、お金が足りなければ利子を払えば借金をすることも可能です。

ある不動産を買うときに、借金で利子を払っても、それ以上の収入が得られれば買った方が得になります。お金を借りるということは、日本では「あまり良くないこと」、あるいは「危険なこと」という常識がありますが、実際はお金を借りることも大事であることを学んでいきます。また、もし支払う利子の方が多ければそのときは買わず、その代わりにお金持ちの人に権利を売るという交渉もできます。

キャッシュフロウ

反対に、お金が手元に残っていないと不安な人は、不動産や株をいつまでも買えずにいるため、不労所得が増えていきません。そういう人は、いつまでたってもラットレースを抜けられずにいるのです。

ある人はラットレースから抜けて、自分のゴール(目標)に向かって歩いているのに対して、またある人はいつまでたってもラットレースから抜けられないのはまさに社会の縮図といえます。

このゲームは時間で区切られており、今回は1時間が終わった時点でゲーム終了となります。夢をつかんだ人、ラットレースから抜けられたけど、夢をつかめなかった人、いつまでもラットレースから抜けられなかった人などさまざまでした。

キャッシュフロークワドラントの考え方

図

ロバート・キヨサキ氏の基本的な考え方は、この上図の4つのパターンに基づく「クワドラント」という考え方に集約されています。

人々が生活するために稼ぐ手段は、この4つのパターンのどれかに属しています。

E・・ サラリーマン
S・・ 自営業
B・・ 社長、経営者
I・・ 投資家

「E」はEmployeeの略で、サラリーマンが対象です。会社員や公務員などが該当します。「S」はSelf Employee(もしくはSmall Business)の略で、自営業者です。スポーツ選手や弁護士・税理士などの個人ビジネスが該当します。「B」はBusiness Ownerの略で、会社の経営者など、「I」はInvestorの略で、投資家がそれぞれ該当します。

このうち、左側の「E」「S」と右側の「B」「I」には決定的に大きな違いがあります。その違いは何かというと、左側はお金を稼ぐために「自分が働く」のに対し、右側はお金を稼ぐために「自分が働くのではなく、お金に働いてもらう」ということです。
例えば、ビジネスオーナーで言えば、会社の経営者は給料を支払って雇っている社員に働いてもらいますし、不動産投資を行う投資家であれば、投資をしたビルやマンションなどが家賃を稼いでくれる、といった具合です。

このクワドラントのうち、どこに属していても経済的に自由になることは可能ですが、「B」あるいは「I」が持つ技術を使うことができれば、より早く経済的な自由を得られるというのが、ロバート・キヨサキ氏の考え方です。

このゲームは、いかにしてクワドラントの「左側」から「右側」へ早く移行できるのかを体験するゲームなのです。

最後の反省会が大事

ゲームが終わった後に、ゲームの参加者どうしでお互いに感想を話します。実はこの感想がとても大事なのです。自分はどこが良かったのか、あるいはどこがうまくいかなかったのか、次に行う場合はどうしたいのか、などなど。

このゲームはサイコロの出た目などによって運・不運もあるでしょう。あるいは進め方や考え方に改めるべきポイントがあったのかもしれません。いずれにしても、人生そのものなのです。そして、このゲームの良いところは、何度でも遊べるところです。こうして5回やると5回分の、10回やると10回分の人生の疑似体験ができるのです。

もちろん運もありますが、このゲームが上手な人には必ず理由があるのです。そのコツがつかめると、クワドラントの図で示した「右側」の世界、つまり、“ビジネスオーナーや投資家”になれるコツがつかめるようになります。

このゲームに参加をした感想

日本の大半はサラリーマンあるいは自営業者です。したがって、クワドラントでの左側にいる人がほとんどであり、ゲームの中でいえば内側をぐるぐると回っている人です。そしてほとんどの人はきっと、「自分が外側の円に出て、クワドラントの右側であるBやIとして生活をする」などと考えないのではないでしょうか。そういった意味では、BやIの世界があるということを知り、擬似的に体験しておくことは良いことだと思います。

ここで勘違いしてはいけないのが、決して「全員が不労所得を目指すべきだ」と言っているわけではありません。ただ、世の中では、クワドラントの図で言うところの「右側の世界」を知る機会が少ないのが現実でしょう。そういった意味では世の中の仕組みをわかりやすく、また特にお金持ちがどうやってお金を生み出しているかを理解するうえで、とても役に立つゲームです。

このゲームを通じていろいろな考え方を身につけ、その上で自分の向いている職業がサラリーマンなのか、自営業なのか、あるいは不労所得を稼いで夢を追いかけることなのか、自分の中で一番良い選択肢を見つけることができればよいのではないでしょうか。

執筆:坂本光(さかもと ひかる)CFP
一級ファイナンシャルプランナー・CFPR、日本キャリア開発協会認定キャリアカウンセラー、日本応用カウンセリング審議会認定心理カウンセラー。2006年5月週末起業を決意し、通信事業者に勤務しながら合同会社FPアウトソーシング代表を務める。ファイナンシャルプランニングに関する個別相談・セミナー講師としても活動中。