第2回:おこづかいゲーム「ニーズ&ウォンツ」


『小学生のための親子マネー教室』が2007年6月にある銀行にて開催されました。教材は子供が楽しみながらお金を学ぶことのできる、おこづかいゲーム「ニーズ&ウォンツ」、インストラクターはこのゲームの考案者である羽田野博子さんです。羽田野さんは3人のお子さんへのマネー教育実践体験をもとにこのゲームを考案し、2005年2月に金銭教育啓蒙活動のためにNPO団体「マネースプラウト」を設立。同団体の代表を務めています。

このゲームでは、親子で楽しみながらお金について学ぶことができるのが特徴です。
今回は、おこづかいゲーム「ニーズ&ウォンツ」を取材しました。

「おこづかいゲーム」の概要

まずゲームを始める前に、「ニーズ」と「ウォンツ」の違いを子供たちに説明します。

「ニーズ」・・文房具や日用品など必要なもの(生活必需品)
「ウォンツ」・・おもちゃやお菓子など、必ずしも必要でないもの(嗜好品・ぜいたく品)


ニーズとウォンツの違いを子供たちが理解できたらゲームを始めます。ゲームのルール自体はすごろくと同じで、さいころを振って出た目を進むというものです。ニーズのマスに止まったら「ニーズカード」を、ウォンツのマスに止まったら「ウォンツカード」を引きます。そして限られたおこづかいの中でやりくりをしながら、「ニーズカード」に書いてあるものは必ず購入し、「ウォンツカード」に書いてあるものは買うか買わないかを子供に判断させ、それぞれ買ったものと残金をおこづかい帳や預金通帳に子供たちが記入していきます。また、親は子供と一緒になって買うか買わないかを考えながら、インストラクターから時々出される親への質問やアドバイスを通して、子供に何を学ばせるべきかのヒントをつかんでいきます。

この他に、世の中にはお金では買えない大切なものがあることや、物を大事にしなければならない等ということも学べるように工夫されています。

そして、誰かがゴールをしたら手持ちのお金や銀行に預けた分などを合計し、ポイントに換算して、最終ポイント数の多さを競うというゲームです。

実際にゲームをやってみよう!

いよいよゲームスタート。最初に2000円ずつおこづかいをもらい、じゃんけんで順番を決めてからさいころを振って、出た目をすごろくの要領で進みます。

インストラクターである羽田野さんのガイドに従ってゲームが進行し、「ニーズ」「ウォンツ」それぞれに止まったらカードを引いて、その商品を購入。例えば、ニーズカードに「ノート120円」と書いてあれば120円を支払って、おこづかい帳にその度ごとに記入していきます。途中、インストラクターがお母さんに「ところで、ダイヤモンドはニーズですか?ウォンツですか?」と聞くと、「ダイヤモンドはニーズかな?」と自信のなさそうに言うお母さんのそばから子供たちが「ウォンツだよ!」と突っこみが入り、会場に笑いが起こります。

また、子供が財布を落としたときには、今にも泣き出しそうな子供を講師が慰めてあげつつ、「銀行に預けておくと、お財布を落としても後で銀行からおろせるからね」と説明して預金をすることの意味を教え、お父さんやお母さんには「財布に限らず物を失くしたときにも、すぐに物を与えないようにすると子供は物を大事にするようになるのですよ」と、さりげないアドバイスが行われます。また、「ハッピーカード」というものもあり、そこには「おばあさんに席を譲ってあげた」「ふきそうじを手伝った」などが書いてあります。そしてそのカードを引いた時にはみんなで「えらいねー」と拍手してあげると、子供も嬉しそうな表情に。

このような体験を通して、お金では買えない大切なものもあるのだということも学んでいきます。誰か1人がゴールに到達した時点でゲーム終了。残金と「ニーズカード」「ウォンツカード」「ハッピーカード」など獲得したカードを決まったポイントに換算し、最後に利息などを加えて計算し、優勝者にはプレゼントが配られました。

こうして、子供たちは「ニーズとウォンツの区別」や「お小遣い帳のつけ方」、さらには「お金では買えないもの」などを学んでいきます。また、親もこのゲームを通じてお金の大切さを子供に教えることができ、例えば買い物に行ったときに「これはニーズだから必要だね」とか「これはウォンツだから我慢しようね」など、一緒に一つ一つ確認することにより、子供もより理解が深まっていきます。

ゲームを行った感想

さて、ゲーム参加者の感想はどうだったでしょうか。
以下が子供さん、ご両親それぞれの感想です。

(参加した子供の意見)

  • とても面白かったです。ニーズとウォンツの言葉を初めて知りました。
  • お財布を落としたときのために、貯金をした方がいいのかな、と思いました。
  • お金は使うだけでなく、人のために募金することもあるんだな、と思いました。

(ご両親の意見)

  • 子供といっしょに楽しくゲームで参加できました。今後もお金について親子で話ができたらいいと思います。
  • おこづかいの与え方の勉強になりました。また、参加します。
  • 子供の目が、輝きながら楽しく過ごしているのが、母としてもすごくうれしかったです。今はまだ家庭では「おこづかい制度」をしていませんが、今月から早速始めてみようと思います。楽しいひとときをありがとうございました。

お子さんはゲームを通して、「ニーズとウォンツの違い」や「預金の仕組み」或いは「世の中にはお金で買えない大切なものがある」など、人それぞれ色々なことを学んでいたようでした。また、ご両親に多かった声としては、お金に関して子供と日頃、どんな話をすれば良いかを考える上で参考になったという方が多かったようです。

ゲーム考案者の羽田野博子さんに聞く

現代の世の中には、いつでも誰にでも簡単に貸してくれるお金があふれており、今の子供が大きくなってひとり立ちしたときに騙されたりしないか、などと心配になったりします。意外に思われる方も多いかもしれませんが、実は小学校や中学校、もちろん幼稚園でもお金の使い方など、いわゆる「金銭教育」は行われません。しかし、小学生や中学生ともなれば、おこづかいやお年玉をもらって、マンガやゲームを買うのは当たり前のようになりますし、歳とともに使う額もどんどん大きくなっていきます。子供が小さいうちに「お金の大切さ」というものをきちっと教えてあげることができれば、カード破産などの悲劇から守ってあげられるのではないか。自分の3人の子供へのマネー教育の実践体験を基に、世の中に何らかの形で金銭教育を広めたい。そんな思いから、このゲームを作成しました。

このゲームを通じて子供たちには、単におこづかい帳や預金通帳をつけて自分のお金を把握するということだけでなく、それ以外にも「お金では買えない大切な物」や「人のためにお金を使うことの重要さ」更には「お金の怖さ」などについても同様に身につけてほしいと思っています。また、このゲームを通じて子供だけでなく、お父さんやお母さんにも「ニーズ」と「ウォンツ」の違いを今一度認識してもらい、また子供に対して「物を大切にする心の育み方」や「子供に何を教えるべきか」などについてを学んで欲しいと思っています。そして、「おこづかいゲーム ニーズ&ウォンツ」を通して、単に楽しむためだけに留まらず、このゲームを通じて親子でお金について話をするきっかけにして欲しいと願っています。

親子で楽しみながら学ぶ

子供たちに「ニーズ」「ウォンツ」という言葉は難しすぎるのではないか、と心配していましたが、インストラクターが「ノートはニーズとウォンツのどっち?」「アイスクリームはどっち?」と繰り返し、何と5分ぐらい説明をしただけで子供はきちっと理解できていたのには驚きました。

また、おこづかい帳をつける意味や貯金をする楽しさなどについて、子供たちが目をキラキラさせながらこれほど短時間に学んでいく様子や、子供のゲームを通じてご両親が「私自身が勉強になりました。」と嬉しそうに語っていたのが印象的でした。

子供にお金のことを学ばせながら、一緒に親もお金の大切さを再認識でき、そして子供に「お金」というテーマに対してどう接してあげればよいのかが一挙両得で学べる。そんな親子で楽しめるゲームでした。

またこのゲームの素晴しいところは、終わったあとに親子でお金について語り合うことができることです。日本人の中には「お金について話すのはあまりよくないこと」と思っている人も多いのが現状ですが、お金は我々の生活に深く結びついているもので、正しい知識を子供の頃から身につけるというのは重要なことです。このゲームがきっかけでお金に興味を持ち、親子との会話を通じて金銭知識を身につけさせることは、これからの時代において益々大事になってくることなのではないでしょうか。

執筆:坂本光(さかもと ひかる)CFP
一級ファイナンシャルプランナー・CFP®、心理カウンセラー。2006年5月週末起業を決意し、通信事業者に勤務しながら合同会社FPアウトソーシング代表を務める。ファイナンシャルプランニングに関する個別相談・セミナー講師としても活動中。