第18回:介護保険【子供に話すお金の話】


日本は高齢化社会を迎え、介護を必要とする人数も年々増えており、深刻な問題となりつつあります。例えば誰かが寝たきりになると、その人を介護する家族の人たちにも気持ちの余裕がなくなってしまい、精神的に追い詰められてしまうケースも少なくありません。

この問題を何とかしようと、日本の政府は2001年に「介護保険法」というものを定めて、国を挙げて介護を支援する体制を整えました。そこで、今回は日本の介護保険制度について学んでみたいと思います。


日本の介護保険制度の仕組みはこうなっている

以下の介護保険制度がどうなっているのかを見てみましょう。

<図1>日本の公的介護保険のしくみ

年齢 保険料の支払い 介護が必要になったら
0~39歳 支払わなくてよい もらえない
40~64歳 支払う もらえる
(ただし原因が老化のみ)
65歳~ 支払う もらえる


まず、介護保険は40歳以上が対象なので、0~39歳までは関係ありません。保険料を支払う必要はありませんし、その代わりに介護サービスを受けることはできません。

40歳になったら介護保険に全員強制的に入ることになるため、保険料を支払わなければなりません。そのかわり介護が必要になったら、介護に必要なサービスを受けることができます。

ただし、65歳以上であればどんな原因であれ、介護が必要と認められた場合はサービスを受けることができるのですが、40~64歳までの人は、老化が原因で介護が必要になった場合でないとサービスを受けられません。つまり40~64歳までの人は、交通事故などで寝たきりになった場合は、「老化」が原因ではないのでサービスを受けられないのです。

どんなサービスが受けられるの?

市町村に申請をして「この人は介護が必要である」と認められると、介護サービスを受けることができます。介護サービスは、それぞれの症状に応じて7段階に分かれており、重い症状であればあるほど、たくさんのサービスを受けることができるようになっています。

具体的には以下のようになっています。下にいくほど症状が重くなります。

  からだの状態(めやす) サービスを受けられる額
要支援1 日常生活の一部に介護が必要。

ただし症状はそれほど重くない。
49,700円
要支援2 104,000円
要介護1 立ち上がりや歩くのが不安定。
排泄や入浴などに一部手助けが必要。
165,800円
要介護2 立ち上がりや歩くのが自分では困難。
排泄・入浴などに一部または全面的に介助が必要。
194,800円
要介護3 立ち上がりや歩行などが自力では不可能。
排泄・入浴や服を脱いだり着たりするのに全面的な手助けが必要。
267,500円
要介護4 寝たきり状態が続き、日常の生活能力が低下している。
排泄・入浴や服を脱いだり着たりするのに全面的な手助けが必要。
306,000円
要介護5 日常生活全般について全面的に手助けが必要。意志の伝達も難しい。 358,300円

この場合、実際に介護にかかったお金のうちの9割を負担してくれるので、利用する人はサービスを受けられる額の範囲であれば1割だけお金を払えばよいのです。ただし、全てが介護保険の対象となるわけではなく、例えば食費あるいはおむつなどの介護用品といったものは介護保険の対象にはなりません。

例えば、要介護3の人が介護に25万円支払った場合、サービスを受けられる金額は267,500円までですので、全てが保険の対象と認められれば25万円の1割の2万5千円ですみます。

しかし、25万円のうちの5万円が介護保険対象外だとすると、残りの20万円は1割負担ですみますが、あとの5万円は全額自己負担になります。

つまり、20万円×10%+5万円=7万円となります。

介護はいくらぐらいのお金がかかるの?

要介護認定2の人が介護保険以外で平均48,731円(家計経済研究所:介護保険導入後の介護費用と家計より)かかっているので、サービスを受けられる額の194,800円を全て使った場合で計算すると、1ヶ月にかかる費用は以下の通りとなります。

<図2>1ヶ月にかかる費用

ちなみに、もし介護保険の制度がなかったら、1ヶ月にかかる費用は 194,800円+48,731円=243,531円ですので、なんとと毎月17万円以上も安くなるのです。

しかしながら、このように保険が適用になったとしても1ヶ月で約7万円はかかります。

もし介護が長期化して10年かかるとすると、7万円/月×12ヶ月×10年=840万円 という金額になります。

また、さらに症状が悪化した場合は、これ以上お金がかかるケースもあり、介護保険が認められたとしても、合計で1000万円以上かかってしまうことも多いのが現状です。

課題山積み!日本の介護制度

以上、介護保険制度を使ったとしても、それでもたくさんのお金がかかってしまうことについてお分かりいただけたかと思います。では、お金の準備ができれば問題は解決するのでしょうか。いや、実はお金以外にもまだまだ問題がたくさんあるのです。

介護サービスを受ける上で欠かせないのが、身の回りのお世話をしてくれる介護ヘルパーさん。ところが、そのヘルパーの人数が足りないのです。

少子高齢化の影響で、毎年お年寄りの割合は増えるのに対し、働き手は少なくなっています。実はすでにヘルパーの人数が足りない状況ですのでこれから将来にかけて、ヘルパーはどんどん不足していってしまいます。しかも、日本政府に財政が厳しいため、政府が2006年4月に法律を改正して、国が支給するヘルパーさんへの手当も減らしてしまいました。そのため、ますますヘルパーさんが不足しているのです。

また、介護をお願いする人たちのマナーの悪さも目立ちます。日本のヘルパーさんは安い給料でも一生懸命に頑張ってくれているのですが、そんなヘルパーさんに「ついでに家族全員の洗濯や食事もお願い」と、健康な人の分まで頼む人も多いのです。

ヘルパーさんは家政婦ではありませんので、介護が必要な人にしてあげなければならないことがいっぱいあるのですが、断ると苦情を言う人もいるため、なかなか断れないのです。このような形で少ないお給料で頑張っているにも関わらず、家政婦のように働かされてますます忙しくなり、そしてますますヘルパーになりたいという人が少なくなってしまっているというのが今の介護業界なのであり、日本の介護制度は危機を迎えているのです。

これからお年寄りの割合が増えていく日本で安心して暮らすためには、こうしたヘルパーさんの支援を、国を挙げてしっかりと行っていく必要があるのです。

執筆:坂本光(さかもと ひかる)CFP
一級ファイナンシャルプランナー・CFPR、日本キャリア開発協会認定キャリアカウンセラー、日本応用カウンセリング審議会認定心理カウンセラー。2006年5月週末起業を決意し、通信会社に勤務しながら合同会社FPアウトソーシング代表を務める。ファイナンシャルプランニングに関する個別相談・セミナー講師としても活動中。