高齢期の投資、忘れがちな「自己責任」の姿勢 ~日経平均15年ぶりに2万円台に~


日経平均15年ぶりに2万円台に

株式市場が久々に活況です。バブルが弾けた(1989年12月)当時の日経平均株価は38,915円、その後IT(情報技術)バブル期(2000年4月)に20,000円に戻して以後、15年ぶり(2015年4月22日終値)に20,000円台となりました。ちなみにこの原稿を書いている6月1日の終値は20,569円、為替は124円76銭と久々の円安です。景気も少し上向いてきた中高齢期の介護・医療のコスト増、年金不信などの報道もあり、老若男女を問わず貯蓄から投資にジワジワとシフトする人も増えています。参加しないと世の中から取り残された雰囲気さえあるのがある意味恐ろしい現象です。

しかし、自分を客観的にみることができなくなりやすい高齢期の投資は要注意です。今回は、実際にあった金融機関と高齢者の攻防の実態なども交えてお話します。

日経平均株価のチャート

表:日経平均株価(月末値) Wikipedia「日経平均株価」より引用


キャンペーン金利などの理解が必須

(1)定期預金+投信 セット

多くの人が初めて手にする大金となる退職金ですが、昨今の低金利で預け先に迷いがち。そこで各金融会社は「退職金」を対象にしたキャンペーンを実施しています。今後長い付き合いをしていただくための顧客獲得が目的です。退職金に限らず、注意が必要なのはキャンペーンチラシの内容と金利です。

キャンペーン商品の主な特徴は、①定期預金の期間が短いこと・金利が年利で示されていること②投資商品と一緒に購入すると金利が高いことです。

例えば、A銀行で、新規で全申込総額の20%以上を投資信託で購入し、残りを円定期預金(3ヶ月)にした場合、円定期預金の優遇年利が2%。年利2%(月利0.16%)3ヶ月が過ぎれば、自動解約されA銀行の通常の預金金利が適用されます。

(1)定期預金+投信 セットの説明図

(2)高利回りの定期預金など ~目的別に内容の違いを生かす

商品はインターネットや電話に対応のダイレクト定期預金。預け入れ期間は1年(単利)、3年(半年複利)、5年(半年複利)があります。テレホンバンキングでは途中解約可能ですが、解約時は普通預金金利が適用されます。但し、一部解約はできないので、ライフプランをたてて計画的に維持し増やす商品です。一般的に金利は少し高めです。なお、キャンペーン商品ではありませんが一部解約可能(預け入れ3ヶ月後)な定期預金もあります。柔軟性がある分、金利はダイレクト定期より低目。いずれもインターネットバンキングでは中途解約不可です。

ダイレクト定期預金 (一部解約不可) 
  300万以上
5年・半年複利 年 0.35%
3年・半年複利 年 0.30%
1年・単利 年 0.26%
定期預金 (預け入れから3ヶ月後、一部解約可能)
  100万円以上
 
2年(半年複利) 年 0.25%
1年(半年複利) 年 0.20%

※金利はすべてイメージです。

(3)仕組預金(満期日繰上特約付円定期預金)

(1)定期預金+投信 セット

上記の期間10年の仕組預金の注意点は、①銀行の判断により満期日が当初満期日(10年)から繰上満期日(4年、5年、6年、7年、8年、9年のいずれかの時、市場金利が低ければ満期前に期日が繰り上がる)に繰り上がることがある②原則中途解約不可なので、中途解約した場合、元本より目減りします。中途解約すると解約金利で利息が計算され元本は保障される普通の定期と異なるところです。10年後の金利を予想し、自分のライフプランとつき合わせ納得した金額と期間を決めます。一口に◯◯預金がつくものでもいろいろあるのですね。今後の用途と預け入れ期間により遣い分けが必要です。

(4)毎月分配型外貨建債券

高齢者に人気の投資信託です。公的年金は偶数月に前2ヶ月分が支給されるため、毎月分配金が支給されるしくみが人気の理由です。分配金は投資信託の純資産から支払われるため、その分基準価格が下がります。ときには計算期間中の収益を超えて支払われることもあり、その分基準価格が前期に比べ下落します。最終的な損益は、基準価格+過去分配金額で判断します。

(4)毎月分配型外貨建債券

毎月分配金がでる一見嬉しいしくみですが、以下のリスクも承知しておきたいものです。
① 毎月分配しているので管理コストも大
② 為替そのもののリスク大と、外貨を円に、円を外貨に変える為替手数料が必要
③ 分配金と基準額で損益を判断することを忘れがち
④ 毎月分配しているため、複利の効果が減少   などです。

<参考> 通算損益の通知制度

分配金を毎月支払う「毎月分配型」は、運用成績が悪いときも分配金を元本から取り崩して支払うケースもあるため、全体の損益が見えにくいリスクがありました。そこで、証券会社等に平成26年12月以降購入した投資信託を対象に「通算損益」の通知が義務付けられ(改正投資信託法)、分配金と元本の合計で実質的な損益が分かるようになりました。

投資家保護の点では嬉しいことですが、高齢者は届いた書類を未開封または開封しても理解できてない人も少なからずいることも忘れてはいけません。

定期預金の更新手続き時が危ない

最近あったBさん(70代後半)の場合でお話ししましょう。定期預金が満期になったので銀行に更新手続きに行った窓口でよくわからないまま「毎月分配型外貨建債券」を購入した例です。帰宅したときの弾んだ第1声が「ぜったい儲かる商品を購入した!」から、内容の理解不足が伝わってきます。行員は、1年間の分配金の合計だけ説明し、基準価格の上下に一切触れず、長い説明時間の最後に毎月分配金がでる商品だと説明したとのこと。購入時の手数料、運用中の信託報酬、外貨建てのリスク、為替ヘッジの意味すら本人は理解していませんでした。

円安で市場が活況気味なので一概に現状では悪い商品ではありませんが、もう少し高齢者に分かる説明が欲しいが本音です。または、高齢者本人が理解できないなら自分で購入しなければいいのですが、手元にお金があり欲があるから契約したようです。本人も自宅に帰り反省、分からない商品は購入をしない基本方針を思い出し翌朝早く解約できました。

定期預金の更新手続きに行ったつもりが、別室にて現役時の話題に気分が高揚、雰囲気でよさそうだと契約してしまったとは本人の弁。怖い話だけどよくある話かも…。

高齢者勧誘ルール ~ 70代後半は微妙な年齢

一般的に高齢者は、身体的な衰えに加え、記憶力や理解力が低下 (本人がそのことに気づいていないことが多い) しがちなため、高齢顧客にリスク商品を勧誘によって販売する際のルールが平成25年10月に決められ、平成25年12月6日より施行されています。75歳以上の顧客に株式投資信託などを販売する場合、役職者による事前承認や面談内容の録音など求め、80歳以上の場合は営業の担当者とは別の役職者が勧誘の翌日以降に受注の手続きをする必要がある、などです。

しかし、上記のBさんの例からみてもルールがきちんと守られているかは疑問です。現に、Bさんが翌日契約解除に出かけた場で、行員から顧客は70代、80代もかなりいらっしゃるとの話題もでた様で、今後こうしたトラブルは増え続ける気がします。あわせて、相続対策として一時払いの終身保険などもちらっと話題に上がったようです。リスク商品を解約しに行った場で、未だに他の商品の紹介をするのが金融機関のたくましさでしょう。

今回は70代後半の高齢者についてお話をしましたが、定年後の延長上に70代、80代があります。いつか投資から身を引くときも頭に入れて、上手に利益確保にいければベストです。

そのためには、金融機関のルールづくりも大切ですが、私たち自身も運用に関し、ある年齢になったら自分を律し、毅然とした投資スタイルを身に付けていくことも求められています。

高齢者が投資トラブルに合わないためのポイント

投資に限らず、トラブルにあう人は何度も会う傾向にあります。高齢期の投資で気をつけたい以下のことを今後の参考にしてください。人ごとではありません。

  1. 投資関係の連絡は、できるだけ携帯電話は使わない。直でやりとりすると即対応できる便利さがあるが、1人で判断して行動して失敗も増える。
  2. リスク商品購入の場では、自分から余分なことを話さず、スキをつくらない。行員などが本人の自慢話に耳を傾ける意図も知らず話し続けると、本来の来店目的から外れ、商品の内容分析が甘くなる。
  3. 諸々の儲け話の電話勧誘に即反応しない。頭を冷静にする時間を必ず設ける。
  4. 高齢期こそ、資産の整理整頓、お金のことを配偶者や家族と話し合っておく。意思疎通が一番、「ばらまき」はせず、自分の貯めたお金は自分で有効に使うくらいの感覚を身につける。
  5. 自分なりの投資スタイルを身につけ、家計はシンプルにメリハリを付けた管理をする。
  6. 欲はほどほどに!蓄えたお金は大切に!
  7. 日頃から、人任せにしないお金の管理能力を養っておく。「足るを知る」満足感で、お金に振り回されない生き方が、お金を有効に使う習慣を養う。
  8. 市場はずっと活況が続くわけではない。自分を知り引き際も意識しておく。

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