相続対策のやり過ぎにご注意! ~人生は計画どおりには行かない~


人生は計画どおりには行かない

相続税と贈与税の改正(平成27年1月施行)に伴い、巷では税セミナーが活気づいています。そこで、仕事と個人的興味から近くにある人気レストランで開催された税理士による「イタリアンランチ・相続税対策セミナー」に参加してきました。会費は3,000円+ワンドリンク付きです。帰り際には、分厚いためになりそうな本までいただきました。

会場は活気に溢れ、料理は美味しく、お話しは分かりやすく興味が持てましたが、会場をよく観察してみると、講師の知り合いやすでに取引のある顧客、提携銀行の行員などがほとんど、私のような新規のお客は少ない印象でした。都心などに不動産を多く持つ人や、郊外に農地を多く持つ人、金融資産をそれなりに持っている人など対象に、税改正に向けた顧客獲得商戦の熱気が伝わってきました。

税改正に伴い、これまで相続税などに無縁だったそれなりの資産家にも対策が必要になってきましたが、対策をしすぎてイザというとき自分のために自由に使えないのでは意味がありません。今回は、たった一度の人生をイキイキ暮らすために、改正のうち主に相続対策を上手にして欲しい気持ちを込めてお話しします。

相続税と贈与税の改正~平成27年1月施行

平成27年1月から相続税と贈与税の内容が変わり増税となります。相続税では、基礎控除の減額と最高税率の引き上げです。仮に、夫婦と子ども2人の家庭で父が死亡した場合、基礎控除の金額は8,000万円でしたが、改正後は4,800万円と4割の減少です。現在、自宅や預貯金などの課税相続財産が6,000万円なら相続税はかかりませんが、改正後の相続税は60万円必要です。


【夫死亡し、妻と子ども2人が残された場合】

法定相続分図解 妻が法定相続分1/2、子にそれぞれ法定相続分1/4

<基礎控除額>
4割減

基礎控除額 平成27年1月施行前後の比較図 改正前に8,000万だったものが改正後4,800万となり、40%減に

<相続税早見表の比較>

遺産総額 改正前 改正後
配偶者がいる場合 配偶者がいる場合
子1人 子2人 子3人 子1人 子2人 子3人
6,000万円 0 円 0 円 0 円 90万円 60万円 30万円
8,000万円 50万円 0 円 0 円 235万円 175万円 137.5万円
20,000万円 1,250万円 950万円 812.5万円 1,670万円 1,350万円 1,217.5万円

※税額(千円未満切捨)は、法定相続分どおりに遺産を相続し、配偶者の税額軽減を最大限利用。


改正後は、課税額相続財産が6,000万円で妻と子どもが1人~3人までなら税金は最大で90万円、高いか低いかはその人によりますが、単純に対策しすぎると残された妻の高齢期の支出が困難になる可能性もあります。夫のみに資産が集中している場合などは現在の年齢も考慮し、資産の内容を確認して考えることも必要でしょう。

仮に、金額が自宅などの不動産と預貯金などと合わせた額とするなら、高齢者施設入居や介護費用など考えるとゆとりを持った老後資金としては多すぎることはありません。対策しすぎないで税金(自分が快適に生きるコスト)を払う考え方もあっていいのかも知れません。課税相続財産の中身、残される妻の資産の多少などで違ってきます。もちろん、資産が多い人は、将来の二次相続のケースを考慮した対策も必要ですが、いつも何が一番大切かを見極めておきましょう。

小規模宅地の特例

小規模宅地の特例とは、亡くなった人の自宅、店舗や事務所など事業用に使用していた宅地は、一定の面積まで80%~50%引きで評価されるものです。対象となるのは「居住用宅地」と「事業用宅地」で、亡くなった人または亡くなった人と生計を同じにしていた親族が使用していたもので、宅地に建物などがあることです。宅地を相続や遺贈で取得した人が特例を受けられます。例えば、自宅の敷地を配偶者や子などが相続する場合、240㎡までは80%引きで計算してくれる優遇制度です。今回は適用面積が330㎡に拡大された改正後の居住用用地のみ保有している場合でお話しします。適用面積の拡大で有利になりましたが、一定地域で地価も上昇傾向にあり油断はできません。

小規模宅地の特例図解 平成27年1月施行前後の比較図

小規模宅地の特例の改正
  ~親が高齢者施設に入居したとき(平成26年1月施行)

改正前は、親などが自宅をそのままに老人ホームに入所した後死亡しても、小規模宅地等の特例を使うには、①老人ホームなどに入所時に介護が必要 ②高齢者施設の所有権や終身利用権を取得していないこと ③自宅はいつでも生活できるように維持管理ができていることなどの要件を満たす必要がありましたが、改正後は以下のように要件が緩和されました。

小規模宅地の特例の改正 解説図

小規模宅地の特例を使用できるかどうかで課税相続税額は大きく左右します。改正前は、自立で介護付有料老人ホームなと゛に入居した場合、終身利用権などを取得していれば特例を利用できませんでしたので相続人にとり嬉しい改正です。

高所得者の社会保険は負担増!

相続税の改正で、これまで相続税とは無関係だった都市部に不動産を持つ人や高所得のサラリーマン、公務員などにも相続税発生の危機の可能性が言われています。だからと言って、いたずらに相続不安を抱える前に、所得が多い人こそ、最近の世の中の状況を把握した備えが求められます。所得の高低に限らず老後は平等に訪れ、寿命が伸びた分介護や医療の御世話になる期間が長く負担が増えるからです。

所得が多ければ年金収入などもそれなりに多く、継続的に社会保険の負担が高負担になります。既に、65歳以上で一定以上の所得のある人の介護保険の利用者負担が1割から2割に決定しています(平成27年8月施行)。一定以上の所得とは160万円(単身者で年金収入280万円)以上、2割負担が高額になる場合、自己負担限度額を超えた分は高額介護サービス費が支払われます。高額介護サービス費の自己負担限度額はこれまで通り3.72万円が基本ですが、高齢者医療制度の現役並所得者に相当する人については、4.44万円に引き上げられます。

自己負担2割とする水準 解説図(厚生労働省 老健局 重点事項説明資料)

【負担限度額(月)】

負担限度額(月) 解説図(厚生労働省 老健局 重点事項説明資料)

※厚生労働省 老健局 重点事項説明資料 平成26年1月

合わせて、介護保険3施設など(特別養護老人ホーム、介護老人保険施設、介護療養型医療施設とショートステイ)について、食費や居住費の補助の要件に資産が追加されます(平成27年8月施行)。夫婦世帯で2,000万円程度、単身で1,000万円程度の資産がある人は、補助の対象外になります。かつ、施設入所時世帯分離していた場合でも、配偶者に住民税が課されていれば補助の対象外、非課税の遺族年金や障害年金なども判定時考慮されます。つまり、それなりに継続的収入や資産がある人の負担は増えるということです。

かつ、厚生労働省は70歳以上の高齢者の外来医療費の自己負担限度額の引き上げの検討を考えているようです。平成29年度までに改正の措置をとるとのことです。新たに相続税を心配する一部の層の高齢期の支出は私たちが思っているより膨らむことお分かりですね。

変わる社会保険と税金など支出をシビアに把握し、気力・体力・経済力がある今から、将来のこと備えたマネー感覚を養っておきたいね!

制度を理解し早めに準備 ~私の人生に活かす~

資産があってもなくても相続は単純にソントクで片付けられない分野です。今回は主に税改正で相続税が発生する瀬戸際の人について、相続の改正内容のごく一部についてお話ししました。税改正に伴い、誰もが知らなかったでは済まされないことがおこりそうです。まずは、自分で税情報を集めてみてはいかがでしょう。合わせて自分の資産などを書き出す、ありたい生き方を書き出し、そのためのコストを書き出してみましょう。

あなたのことはあなたしかわかりません。不動産などの評価や手続きは専門家に任せるとして、自分なりのスタンス、ありたい生き方をしっかり決めた上で専門家に相談もいいでしょう。相続がスムーズにできたと、最期まで自分らしく過ごせたかは別物です。支払い可能な税金の許容範囲なども決めておくといいでしょう。

いずれにしても、自分の資産がある程度あれば希望する生き方を通すことが可能です。あり余る資産がある人以外は自分のお金はゆとりを持って残しておきましょう。今と将来を見つめたマネープランの試算が基本です。子への贈与なども一度渡したお金はもどらないことを肝に命じ、子に対する過度の期待を封じるのも対策の1つかも知れませんね。

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