涯受給できる「公的年金」の有難さ
介護付有料老人ホームの入居者の平均年齢は一般的におよそ85歳前後。最近の平均寿命や平均余命の伸びを考慮すれば、100歳まで生存した場合に必要な費用も視野にいれたプランニングの必要性も大げさではなさそうです。
そこで、力を発揮するのが生涯受給できる年金です。今回は、現 在の預貯金等はそれなりに持っているけど年金が少ない、または年金がない人が高齢者施設に入居した場合、最後まで費用を支払えないリスクもある例をお話ししましょう。
主な年齢の平均余命(単位:年)
0歳 | 60歳 | 65歳 | 85歳 | 90歳 | |
男性 | 79.59 | 22.78 | 18.88 | 6.27 | 4.48 |
女性 | 86.44 | 28.46 | 23.97 | 8.41 | 5.86 |
厚生労働省:平成21年簡易生命表
グループホームなどに入居し、月20万円支払う場合
夫を病気で亡くしたあと長年一人暮らしをしてきたA子さん(75歳)は、最近物忘れがひどくなりこのまま自宅で暮らすのが難しくなってきました。現在、子どもたちとグループホームの入居を話しあっています。A子さんは、それなりの預貯金があるので、入居一時金がない、または少ないグループホームなら毎月の費用は支払えると子どもたちは思っていました。
ところが、長年一人暮らしをしていたA子さんの手持ち金額は予想外に目減り。今、子どもたちが頭を悩ますのが入居しても「何歳まで払えるか」です。A子さんは老後に備え預貯金はそれなりに持っていましたが、毎月の賃貸アパートの家賃、公的年金からの年金ゼロが響きました。
老齢厚生年金受給額の平均平成22年3月末現在
全体の平均 | 65歳以降の男性 | 65歳以降の女性 |
156,692円 | 193,393円 | 111,681円 |
参考・国民年金のみ加入者の受給額の平均 48,922円
グループホームとは!
月15万円の年金は、20年受給なら3,600万円の預貯金と同じ
公的年金額は、ともすれば年○○万円(月○○万円)のみが一人歩きしがちですが、長生きすればするほど受給総額はかなりなものです。仮に、預貯金を2,400万円持っていて年金がゼロのA子さんと、預貯金を1,200万円持っていて年金額が月15万円のB子さんで比べてみましょう。一見、A子さんの方がリッチに見えますが、月20万円のグループホームに入居した場合、A子さんは10年分(85歳になるまで)の支払いで預貯金はなくなります。一方、B子さんは20年分(95歳になるまで)支払え、その後も年金額を月15万円生涯受給できます。長生きリスクをカバーする公的年金の良さが分かりますね。
グループホーム・20万円(月)の費用の支払いの場合
見える預貯金等と見えない年金、2本立てで効果大
「まさか自分が年金を受給するときが来るなんて、思ってもみなかった!」が、60歳になった多くの人の率直な感想です。年金額に対する感想は月20万円でも少ないという人、月10万円でもありがたいという人など様々です。
ときに、あと少し加入すれば年金の受給資格ができる人から、これまで納付した分として65歳から月4万円受給しても仕方がないと言われることもあります。その人には、月4万円(年金48万円)しか見えていないのです。仮に、65歳以降20年生存したら受取年金総額は960万円にもなることに気づいていないのでしょう。
しかし、セカンドライフのプランニングのために、年間収支表(キャッシュフロー表)を書いてみると、生涯受給できる老齢年金(ときに遺族年金)の有難さがはっきり分かります。セカンドライフプラン作成時に計上する預貯金は1回(総額が見える)ですが、年金は生涯計上(総額が見えない)できるからです。人生の勝負は、セカンドライフがスタートするときではなく、人生の幕を閉じたときで決まるのです。
今回の例で、預貯金等と年金の2本立てで備える必要性がわかりますね。
皆様も一度、預貯金と生涯計上できる年金、双方を組み合わせたセカンドライフプランを作成してみては如何でしょうか。プランを立てることで、どういった過ごし方ができるのか、事前に何を準備すればよいか見えてくると思います。