第96回:同じような収入なのに、「貯まる家計」と「貯まらない家計」の違いは?


同じような家庭環境、同じような収入であっても、「貯まる家計」と「貯まらない家計」があります。この貯める力(貯蓄力)の差が長い年月の間に大きな差となって現れ、将来の選択の幅に大きな影響を与えます。

今はひと昔前に比べると、同じ収入でも実際に使える「可処分所得」は減ってきています。社会保険料のアップ、増税、受益者の負担増など、じわじわと負担が大きくなってきているのも1つの要因です。その傾向は今後も強まる一方と見られており、そんな時代だからこそ、「貯蓄力」が重要になっているのです。

今回は、今後の人生設計に欠かせない「貯蓄」について考えてみましょう。まずは、一般的な貯蓄事情を見ていき、その後に貯まる家計と貯まらない家計の違いや、貯めるためのポイントなどについて解説します。

貯蓄のない世帯が22.2%!?

金融広報中央委員会の「家計の金融行動に関する世論調査」(2009年、2人以上世帯)によると、全世帯平均で約77.8%が貯蓄をしている一方で、貯蓄のない世帯が22.2%となっています。この貯蓄のない世帯を世代別で見ていくと、若い世代ほど貯蓄のない世帯が多いです。20代が28.7%と最も貯蓄のない世帯の割合が高く、次いで30代の24.0%、50代の23.2%、40代の22.6%と続きます。

<貯蓄の有無について>
世代 貯蓄有り 貯蓄無し
全体 77.80% 22.20%
20代 71.30% 28.70%
30代 76.00% 24.00%
40代 77.40% 22.60%
50代 76.80% 23.20%
60代 80.10% 19.90%
70代以上 78.70% 21.30%

※金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査」(2009年、2人以上世帯)

一般に家計においては、子どもの教育費の負担が重くなるにつれて、貯蓄ができなくなる様子が推測できます。その一方で、60代になると、退職金などが入ってくるためか、貯蓄のない世帯の割合は19.9%と一旦減るものの、70代以上は、貯蓄を取り崩すことになるためか、21.3%と上がります。

<一世帯当たり金融資産保有額(平均貯蓄額)について>
世代 一世帯当たりの金融資産保有額(平均値)
全体 1,124万円
20代 248万円
30代 458万円
40代 771万円
50代 1,086万円
60代 1,677万円
70代以上 1,379万円

※金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査」(2009年、2人以上世帯)

また、同調査の中の一世帯当たり金融資産保有額(平均貯蓄額)を見てみると、貯蓄のない世帯も含めた平均値は、全年代の平均で1,124万円となっています。年代別では、60代が退職金などがでるためか1,677万円と最も多く、次いで70代以上の1,379万円、50代の1,086万円と続き、さらに40代の771万円、30代の458万円、20代の248万円と若くなるにつれ、少なくなります。

なお、平均貯蓄額の数値はあくまでも平均であり、それと比べることに大きな意味はありませんが、「貯蓄力」の一つの目安にはなるのではないでしょうか?

貯められないのはなぜ?

普段の相談業務の中で多くの家計を拝見していて感じるのですが、同じような家庭環境、同じような収入であっても、「貯まる人」と「貯まらない人」がいます。実際に「どうしても貯められない」と悩んでいる方も多いのですが、その貯められない理由を整理してみると、次の5つのパターンに分けられることに気付きました。

貯められない5つの理由
1 特別な事情があって貯められない
2 あればあるだけ使ってしまう性格のため貯められない
3 貯める目標が明確でなく、やりくりをする気にならないため貯められない
4 住居費・車関係費用、保険料、ローン返済などの固定支出が、支出の5割を超えるので貯められない
5 そもそも収入が低くて貯められない

1.特別な事情があって貯められない

これに該当する方は、今年だけ、あるいは一定期間だけの特別な事情はなかったでしょうか? 実際に家計が混乱していたり、あるいは大きなお金が出ていく時期であれば、「貯められている」と実感するのは難しくなります。また、恒常的にお金がかかる場合、貯めることそのものを諦らめざるを得ない時期もあります。例えば、下記項目に心当たりはないか、チェックしてみてください。

  • 子どもが生まれたばかりで、支出のペースがつかめない。
  • 今年、住宅を購入して、さまざまな支出が発生した。
  • 車を現金で買うなど、大きな支出があった。
  • 今年、子どもが幼稚園や保育園に入り、幼稚園代や保育料がかさみ、貯められない。
  • 子どもが小学校や中学校から私立で、既に教育費がかかる時期に突入している。

この中に該当するものが1つでもある人は、現段階で「貯蓄力がない」と判断するのは間違いです。「貯められない特別な事情」が今年だけ、あるいは一定期間だけのことなら、その後は「貯められる家計」になる可能性があります。また、該当項目の影響がなくなった頃に、それでも貯められないかどうか、再度確認し直してみるといいでしょう。

2.あればあるだけ使ってしまう性格のため貯められない

これに該当する方は、実際のところ多いです。未来のために貯めなくてはいけない、という危機感がなく、心のどこかで「どうにかなるさ!」と根拠のない自信を持っており、今のままではいつまでも貯められない状態が続きます。

3.貯める目標が明確でなく、やりくりをする気にならないため貯められない

これに該当する方も、けっこう多いです。例えば、比較的収入が高い層で、いつでも貯められるという安心感からか、入ってくるお金も多い一方で、いろいろと使って出ていくお金も多く、結果としてお金が貯まらないというパターンです。

4.住居費・車関係費用、保険料、ローン返済などの固定支出が、支出の5割を超えるので貯められない

これに該当する方も、けっこう多いです。実際に住居費・車関係費用、保険料、ローン返済などの固定支出が家計を圧迫すると、家計にゆとりがなくなり、お金を貯めるのが難しくなります。

5.そもそも収入が低くて貯められない

上記の四つの理由に該当しない方の多くがこのタイプです。もちろん、収入が低めであっても貯められている方もいますが、逆に、これ以上は節約しても削れないという状況の家計では「節約しましょう!」と言っても効果はありません。

こうすれば貯められる!

普段の生活においては、貯められなくても何とかなりますが、問題なのは、教育資金やマイホーム資金、繰上返済、リフォーム、車の買い替えをはじめ、将来的に貯めておかなくてはいけないものがあるにもかかわらず、貯められていない状況となっていることです。
まずは、この状況を認識して「貯めること」を心がけると共に、実際に貯められるように我が家の家計を変えていく必要があります。具体的には、前述の5つのタイプ別に、貯められるようになる方法を考えてみましょう。

1.特別な事情があって貯められない

このタイプの方は、特別な事情の影響がなくなるまで「待つ」しかありません。「今は貯められない時期」と自覚していれば、焦ることもないでしょう。また、「貯める時期」については、具体的にイメージをしておくとよいでしょう。

2.あればあるだけ使ってしまう性格のため貯められない

このタイプの方は、着実に貯められるようにするには、給与天引き自動積立による貯蓄がお勧めです。一般に会社員などの方の給与天引きといえば「財形貯蓄」ですが、住宅取得資金なら「住宅財形」、子供の教育資金なら「一般財形」、老後資金なら「年金財形」が定番で、その他にも一般財形にしておいてまとまったら別の商品に預け換えるのも一つの手です。また、誰でも可能なものと言えば「自動積立」で、目的に合わせて、預貯金、投資信託、保険などを活用すると、積立金が口座からの自動引落しのため、”強制貯蓄効果”があります。

  • 給与天引きを利用する…財形貯蓄(一般財形、住宅財形、年金財形)
  • 自動積立を利用する…積立定期、積立貯金、積立保険、積立投信など
  • 積立専用の口座を作る…この金融機関の口座は引出しをせず、積立や運用だけを行う

3.貯める目標が明確でなく、やりくりをする気にならないため貯められない

このタイプの方は、目標を明確にして、具体的に貯畜計画を立てることが解決策となります。例えば、マイホームが欲しいなら「3年後までに頭金を600万円貯める」とか、子供の教育資金を貯めるなら「子供が高校入学前までに400万円貯める」など、毎月どう貯めるかのプランに落とし込みます。また、決めたことを紙に書いて、壁に貼って家族で共有するのもいいでしょう。「いつか」「そのうちに」と逃げていると、将来の選択肢が狭くなってしまいますので、ここで決断をして未来の可能性を広げたいものです。

  • 目標やライフプランを明確にして、貯蓄計画を立てる
  • 貯め方は自分に合った方法を考える

4.住居費・車関係費用、保険料、ローン返済などの固定支出が、支出の5割を超えるので貯められない

このタイプの方は、固定支出の割合が高いせいで貯蓄ができないという状況にあります。
一般に固定支出の割合を減らすには、車をなくす・減らす、家賃が安いところに引っ越す、住宅ローンを見直す、保険を見直す、カードローンやマイカーローンは貯蓄やボーナスで早く返してしまう、などの「家計の大手術」が必要です。

  • 車をなくす、2台あるなら1台にする
  • 家賃が安いところに引っ越す、実家に一旦入る
  • 住宅ローンの見直しをする、繰上返済は返済額軽減型で行う
  • 各種保険を見直す
  • カードローンやマイカーローンなどは貯蓄やボーナスで早く完済する

5.そもそも収入が低くて貯められない

このタイプの方は、節約をがんばっても限界があります。実際に相談業務の中で、「食費2万円、レジャー費3000円、水道光熱費1万3000円、パパのこづかい1万円」といった家計を拝見したことがありますが、もはや「節約」も行きついている状態です。その場合は、収入を増やす手段を考えることが貯蓄への道であり、スキルアップをして収入が高くなる仕事に変えていく、また結婚していて片働きであるなら、妻が働ける環境を整えて「共働き」にする、といったことを検討してみましょう。

  • 計画的にスキルアップを図り、キャリアを向上させることで、収入を増やす
  • 結婚している場合は、妻の働き方を考える(働く時間、働き方など)

以上、貯めるためのタイプ別の対処法を整理してみました。これをチェックして、目先のことだけを考えず、長期的に有効な方法を見つけてくださいね。なお、そもそも貯められている、貯蓄力があるという人は、何も問題はありませんので、今のまま目標に向けて貯蓄をしていきましょう。

2011年4月
ファイナンシャルプランナー
住宅ローンアドバイザー
豊田眞弓

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