確定申告で医療費控除申告したいのですが、基準を満たしているでしょうか? また、親戚が昨年被災しましたが、こちらは確定申告をしたほうが良いと言われました。


今回、回答いただく先生は…
鈴木 暁子先生 (すずき あきこ) プロフィール
  • 医療費控除の基準は2つあります。
  • 人間ドック費用も医療費になる場合があります。
  • 災害により被害を受けた場合は所得税を軽減できる可能性があります。

飯田智美さん(仮名 50歳・パート主婦)のご相談

昨年けっこう医療費がかかりました。というのも通常の医療費のほか、人間ドックでコレステロール値がひっかかってしまい、再検査の後、投薬治療を続けており薬代がかかっているのです。医療費控除を申告しようと思ったのですが、友人に「人間ドック費用は医療費控除の対象にならない。また10万円以上かかっていないと医療費控除はできない」と言われました。人間ドックの費用(7万円)を除くと6万円程度です。この場合は確定申告できないのですか。
また、ついでで恐縮ですが、親戚が昨年夏の豪雨で自宅が浸水してしまいました。こちらは確定申告をしたほうが良いと言われましたが、どのようにすれば良いのでしょうか?

飯田智美さん(仮名 50歳・パート主婦)のプロフィール

家族構成
家族 年収
本人
(50歳・パート主婦)
120万円

(52歳・会社員)
650万円
子ども
(20歳・大学生)
    その他

  • 智美さんの給与所得控除:65万円
  • 智美さんのその他控除:基礎控除 38万円
  • ご主人様の給与所得控除:184万円(650万円×20%+54万円)
  • ご主人様のその他控除:2,526,180円
  • (社会保険料控除 966,180円、基礎控除 38万円、配偶者特別控除 38万円、 扶養控除 63万円、生命保険料控除 12万円、地震保険料控除 5万円)

人間ドックも医療費控除の対象になる場合があります。災害に遭うと、被害額に応じて所得税が減免されます。

1.制度の概要を理解しましょう。

飯田さん、こんにちは。50代ともなると、ご自身では健康だと思っていても、検査をすると何かしらひっかかってしまう世代ですよね。でも早めに気づいて大事に至らないようにすることは重要です。今回も「早めに気づいて良かった」と思うべきでしょう。
とはいえ、人間ドック費用は日帰りコースであったとしても6~7万円はかかります。自分のためとはいえ大きな支出であることに違いありません。

ご質問の医療費控除についてですが、医療費控除を適用するには要件があります。
自分と家族の医療費の合計から、保険等で補てんされた金額を引いたものが「10万円」を超えた場合、超えた分の金額が控除の対象となる。

これは一般的に知られているケースですね。多くの方がこのケースで申告されていますが、実はこれ以外にもうひとつ基準があるのです。

その年の総所得金額が200万円未満の人は、総所得の5%を越えた部分の金額が控除の対象となる。

200万円の5%が10万円ですから、200万円未満の場合、5%は10万円未満ということになります。つまり所得の低い人は基準が下がるのです。
智美さんの場合、年収120万円ですので、給与所得控除後の所得は55万円。その5%である27,500円を超えた分を医療費控除の対象とすることができます。
この基準をご存知ない方はけっこういらっしゃるので、知っておくと良いでしょう。

2.人間ドック費用も医療費になる場合があります。

5%基準の件とは別の話になりますが、おっしゃるとおり人間ドックや健康診断等は「検査」であり疾病の治療を行うものではないので、原則として医療費控除の対象にはなりません。ただし、検査によって疾病が発見され、かつ引き続きその疾病の治療を行った場合は、人間ドックや健康診断等も「治療のための診察」とみなされるため、医療費控除の対象となるのです(発見されただけではダメ。引き続きの治療を行うことが必要です)。

智美さんは「検査によって疾病が発見され、引き続き治療を行っている」わけですので、 今回の人間ドック費用も実は医療費控除の対象となります。つまり飯田家では13万円が医療費となるわけです。

さて、そうなると結局どのように申告するのが一番有利か確認してみましょう。

    ①5%基準で智美さんが申告する場合
  • 医療費控除の対象=13万円-27,500円=102,500円
  • 医療費控除適用前の智美さんの所得税額=(120万円-65万円-38万円)×5.105%=8,678円≒8,600円(100円未満切り捨て)
  • 医療費控除適用後の智美さんの所得税額=(120万円-65万円-38万円-102,500円)×5.105%=3,445円≒3,400円
  • 智美さんの消費税還付予定額=3,400円-8,600円=▲5,200円 → 5,200円還付されます。
    ②ご主人様が申告する場合
  • 医療費控除の対象=13万円-10万円=3万円
  • 医療費控除適用前のご主人様の所得税額=(650万円-184万円-2,526,180円)×10.21%=217,863円≒217,800円(100円未満切り捨て)
  • 医療費控除適用後のご主人様の所得税額=(650万円-184万円-2,526,180円-3万円)×10.21%=214,800円
  • ご主人様の消費税還付予定額=214,800円-217,800円=▲3,000円 → 3,000円還付されます。
【所得税率】
課税される所得金額 税率 控除額
195万円以下 5% 0円
195万円を超え 330万円以下 10% 97,500円
330万円を超え 695万円以下 20% 427,500円
695万円を超え 900万円以下 23% 636,000円
900万円を超え 1,800万円以下 33% 1,536,000円
1,8005万円を超え 4,000万円以下 40% 2,796,000円
4,000万円超 45% 4,796,000円

(国税庁HPより)

結果的には智美さんが申告するほうが還付額はやや多くなりそうです。

3.災害により被害を受けた方には、所得税を軽減させる2つの方法があります。

ご親戚が昨夏の豪雨災害で被害に遭われたとのこと。心よりお見舞い申し上げます。
災害によって自宅や家財などに損害を受けた場合は、確定申告で所得税を軽減できる場合があります。

①災害減免法による所得税の軽減免除
災害によって受けた住宅や家財の損害金額(保険金などにより補てんされる金額を除く) がその時価の2分の1以上で、かつ、災害にあった年の所得金額の合計額が1000万円以下のときにおいて、その災害による損失額について雑損控除を受けない場合は、災害減免法によりその年の所得税が軽減されるか又は免除される。

【災害により軽減または免除される所得税額】
所得金額の合計額 軽減又は免除される所得税の額
500万円以下 所得税の額の全額
500万円を超え750万円以下 所得税の額の2分の1
750万円を超え1,000万円以下 所得税の額の4分の1

(国税庁HPより)

②雑損控除
災害減免法は、損害が時価の2分の1以上でないと使えません。損害額が2分の1に満たないような場合には、納税者であるご親戚の方の自宅や家財などについては雑損控除が使えます。この場合次のいずれかのうち大きい金額となります。

  • (差引損失額)-(総所得金額等)×10%
  • (差引損失額のうち災害関連支出の金額)-5万円

なお損失額が大きく、その年の所得金額から控除しきれない場合には、翌年以降3年間まで繰り越し、毎年の所得金額から控除することができます。

ただし災害減免法、雑損控除とも、損害保険金などで補てんされた分は除きます。また、り災証明書や保険金による補てん額をなど必要な書類もありますので、準備していただきましょう。
ご親戚の方の損害額や補てん額、所得などによってどれが適用できるか、いずれも可能な場合はどちらか有利な方を選択していただくと良いでしょう。
国税庁より説明書が開示されていますので、ご参考になさってください。
https://www.nta.go.jp/about/organization/osaka/topics/saigai/h30/pdf/02.pdf

初めて確定申告をされる方は「面倒」と思うことが多いようですが、私はぜひ経験していただきたいと思っています。特に会社員の方は基本的には年末調整によって税金の清算をしてもらえるので、税金や社会保険料についてあまり意識しない方が多いように感じます。

確定申告の書式を見ていただくと気づかれるかと思いますが、収入と所得の違い、税金がかかる仕組みなどがおわかりいただけると思います。
今後も税金や社会保険料は負担が増えていくかもしれません。裏を返せば家計の中で使える実質金額は減っていくことになるので、賢いやりくりのためにも税金や社会保険料にしっかりアンテナを張ってください。

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