父の不動産や預貯金に高額な相続税がかかりそうです。 相続税の計算方法と概算額を教えてください。


父の不動産や預貯金に高額な相続税がかかりそうです。
相続税の計算方法と概算額を教えてください。

宮塚 達夫先生 (みやつか たつお) プロフィール
  • 計算の順番を覚えましょう
  • 非課税枠や有利な制度を利用しましょう
  • 早めに専門家に相談しましょう

林 悦子さん(37歳 仮名)のご相談

今年から相続税の基礎控除額が縮小され、増税になったと聞いています。父親の土地家屋や金融資産を合計すると基礎控除額では収まらないため、父が亡くなったときに相続税は発生すると覚悟しています。しかし、実際にいくらかかるのか心配です。家族会議で、おおよその分配方法も決めてあります。大まかな相続税の納付金額を教えてください。

林 悦子さん(37歳 仮名)のプロフィール

家族構成 (相続関係者)   
父 : 森 雄一 75歳
母 : 森 節子 67歳
長男 : 森 浩 42歳(両親とは別居)
長女(本人) : 林 悦子 37歳(両親とは別居)

<父の資産>

土地80坪 8,000万円
家屋 2,000万円
預貯金 8,000万円
生命保険金 3,000万円

<財産の分配方法>

土地家屋・生命保険金
長男 現金 4,000万円
長女 現金 4,000万円

非課税や特例の適用など順に計算して合計を出し、
相続人ごとの額の比率で算出します。

(1) 正味の遺産総額を求めましょう

まずは、相続財産の総額を計算します。相続財産の総額とは、本来の相続財産、みなし相続財産、相続時精算課税対象財産、相続開始前3年以内の贈与財産を合計したものをいいます。
ここでみなし相続財産とは、死亡保険金、死亡退職金、個人年金などを受け取る権利、遺言によって借金を免除された利益などのことで、林様のお父様の場合、生命保険金がこれに該当します。

林様のお父様の場合、資産は土地、家屋、預貯金、生命保険金を全部合計すると

8,000万円+2,000万円+8,000万円+3,000万円=2億1,000万円

になりますが、その額が相続財産の総額になるかというとそうではないのです。

土地について

今回のように、土地をお母様が相続する場合、「小規模宅地等の特例」という制度を利用することができます。
被相続人と生計を共にしていた親族が土地を相続した場合、330平方メートルまでの土地の評価を80%減らすことができるのです。お父様の土地は80坪(=約264平方メートル)ですので、すべて80%評価減できるのです。
つまり、土地の相続財産評価額は、

8,000万円×(100%-80%)=1,600万円

となります。

生命保険金について

死亡保険金には法定相続人の数に応じた非課税枠が設けられています。非課税枠は500万円×法定相続人の数となります。林様のお父様に相続が発生した場合の法定相続人はお母様とお兄様、林様の3人なので、非課税枠は1,500万円となり、

3千万円の生命保険金の相続財産評価額は1,500万円

になります。

合計してみましょう

上記を踏まえて林様のお父様の相続財産を計算してみると、

土地1,600万円+家屋2,000万円+預貯金8,000万円+生命保険金1,500万円 =1億3,100万円

となります。

そして、この金額から実際にかかった葬儀費用を控除した額が、正味の遺産額となります。なお、葬儀費用には香典返しの費用や仏具代は含まれませんので、注意が必要です。今回は、葬儀費用500万円をお母様が支払ったものとし、正味遺産1億2,600万円として計算してみます。

(2) 課税遺産総額を求めましょう。

(1)で出た金額から基礎控除額を差し引いた金額が課税遺産総額となります。
林様もご存知の通り、今年から基礎控除額が縮小され、

3,000万円+(600万円×法定相続人の数)

となったので、林様ご親族の基礎控除額は4,800万円になります。
従って課税遺産総額は、

1億2,600万円-4,800万円=7,800万円

になります。

(3) 法定相続分の金額を求めましょう。

今回の法定相続分はお母様2分の1、お兄様と林様がそれぞれ4分の1になりますので、一旦法定相続分で按分したものと仮定して相続税の額を計算します。

お母様 7,800万円×2分の1=3,900万円
お兄様 7,800万円×4分の1=1,950万円
林様   7,800万円×4分の1=1,950万円

(4) 相続税の総額を計算しましょう。

(3)で出た金額に対する税額を相続税の速算表に当てはめて計算してみましょう。

相続税の速算表
課税価額 税率 控除額
~1,000万円以下 10% 0
1,000万円超~3,000万円以下 15% 50万円
3,000万円超~5,000万円以下 20% 200万円
5,000万円超~1億円以下 30% 700万円
1億円超~2億円以下 40% 1,700万円
2億円超~3億円以下 45% 2,700万円
3億円超~6億円以下 50% 4,200万円
6億円超~ 55% 7,200万円

※国税庁:タックスアンサー 相続税 NO.4155 相続税の税率より抜粋
参考: http://www.nta.go.jp/taxanswer/sozoku/4155.htm

お母様 3,900万円×20%-200万円=580万円
お兄様 1,950万円×15%-50万円=242.5万円
林様   1,950万円×15%-50万円=242.5万円

3人の相続税の合計は1,065万円 になります。

(5) 各相続人が取得した財産額に応じて按分しましょう。

(4)で計算した相続税の総額を、実際に相続した課税財産額で按分します。
お母様の課税相続財産は土地1,600万円、家屋2,000万円と生命保険1,500万円から葬儀費用500万円を差し引いて4,600万円、お兄様は現金4,000万円、林様も現金4,000万円ですから、それぞれの割合は、

お母様 4,600万円÷1億2,600万円=36.5%
お兄様 4,000万円÷1億2,600万円=31.75%
林様   4,000万円÷1億2,600万円=31.75%

となり、それぞれの相続税金額は、

お母様 1,065万円×36.5%=約388.7万円
お兄様 1,065万円×31.75%=約338.1万円
林様   1,065万円×31.75%=約338.1万円

となります。

(6) 税額控除を差し引きましょう。

(5)で計算したお母様の納税額は約388.7万円ですが、実際の納付額はゼロになります。何故でしょうか?相続税には下記の税額控除という制度があるからです。

a. 贈与税額控除
b. 配偶者の税額控除
c. 未成年者控除
d. 障害者控除
e. 相次相続控除
f. 外国税控除

今回お母様には、 bの配偶者の税額控除を適用することができるのです。配偶者の税額控除とは、配偶者の課税価格が1億6,000万円まで、もしくは、課税価格が1億6,000万円を超えても相続する財産が法定相続分以内なら、相続税はかからないという制度で、お母様はいずれの要件も満たしているので、納付額はゼロになります。

(7) 納めるべき納税額

これまでのプロセスで林様ご親族の相続税納税額概算は下記の通りです。

お母様 0万円
お兄様 約338.1万円
林様   約338.1万円

今回、お兄様も林様も相続財産が現金なので、相続税の納付には何ら問題はありません。ただし、今後お母様がお亡くなりになり、2次相続が発生した場合は、どうでしょうか?

今回適用された小規模宅地等の特例や、配偶者の税額控除を使うことができません。二次相続のことまで考えると今回の一次相続に関しても、もっと有利な財産分与の方法があるかもしれません。相続税の納付で困らないように、FPや税理士などの専門家に相談して、早めに対策を講じておくといいでしょう。

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