父亡き後、1人暮らしの母の資産運用法は?


伊藤 美和先生 プロフィール
貯蓄や投資を始めてしばらくすると、誰の頭にも思い浮かぶのが1000万円という夢の数字。
1000万円お金を貯める」ということはハードル走に似ています。100万円、300万円とハードルをクリアするごとに貯まるスピードはどんどん加速していきます。この「貯める・殖やす」のコーナーでは、皆さんがハードルを楽に越え、早くゴールにたどりつけるよう、お手伝いができればと思います。何でもお気軽にご相談ください。

橋本 真理子さん(仮名)のご相談

昨年父が亡くなりました。母は小規模アパートを管理しながら、相続した自宅に一人で暮らしています。アパートは全4戸のうち1戸に独身の妹が住み、残り3戸を賃貸にしています。アパートローンは残5年、ローン残高は500万円ほどです。貯金が2000万円ありますが繰り上げ返済をした方がいいか、貯蓄に回した方がいいか、長女である私に相談してきました。父亡き後、資金運用で悩んでいる母が心配なので、アドバイスをお願いいたします。

橋本 真理子さん(仮名)のプロフィール

43歳、専業主婦。別居の母(70歳)は一戸建てで1人暮らし。

・収支の状況

収入
 月収(年金/手取り) 210,000 円  月収(不動産/経費除く手取り) 50,000 円
毎月のおもな支出 残額 85,000 円
 住宅費 0 円  食費 120,000 円
 水道・光熱費 15,000 円  通信費(携帯代を除く) 5,000 円
 こづかい 10,000 円  教養・趣味・娯楽費 10,000 円
 被服・交際費 10,000 円  医療費 5,000 円
年払いの支出
 自動車税 40,000 円  交通災害共済 5,000 円
 火災保険 10,000 円  その他損保 10,000 円
 固定資産税 110,000 円  国民健康保険 40,000 円

・現在の貯蓄

毎月の積立額 貯蓄総額
 普通預金 85,000 円 1900万円
 社債 —- 200万円

・現在の暮らしと毎月の支出について

  • 健康で1人暮らしをしていて、子供と同居予定はない。
  • 長女(夫は転勤族)、次女(未婚のシングル)とも経済的依存関係はない。
  • 不動産収入は毎月20万円あるが、諸経費(ローン返済は月9万円・税金ほか)を除くと、毎月の手取りは4~5万円ほど。
  • 毎月貯金はしていないが、余剰分はそのまま普通預金に放置してある。
  • 不定期の支出は月々の余剰金より支出。足りない場合は普通預金を取り崩している。

・不動産ついて

  • 自宅
    昭和60年4月購入の一戸建て。
    時価は2370万円(土地2000万円・建物370万円)。
    ローンは完済済み。リフォームは一昨年済み。
  • アパート
    昭和63年7月築(2階建て・総戸数4戸・1戸は次女が居住)
    時価は3580万円(土地3200万円・建物380万円)。
    ローンは残5年、ローン残額は約500万円(金利1.85%)。
    大規模リフォームは平成20年を予定。

・今後の予定&ライフプラン

  • 普段の友人関係を大切にして健康で暮らしたい。
  • 自家用車は3~4年後を目処に今の車を処分して買い替えはしないつもり。
  • 友人との海外旅行も体力的にキツくなってきたので、3~4年後からは国内のバスツアーぐらいにするつもり。

・今後予定している出費

予定時期 必要額
 旅行 毎年 20万円
 墓購入 平成16年 200万円
 アパートリフォーム 平成20年 200万円

・今後予定している出費

  • 投機はイヤだが、投資はしてみたい。普通預金では利率が低すぎて不満。
  • ある程度の安全を確保しながら、もう少し効率の良い運用をしたい。
  • 死亡保険金を普通預金に入れたままになっているが、運用方法がわからない。
  • 普通預金でアパートローンを一括返済した方が良いのでは?
    (返済金利を超えるような資金運用ができないし、子供に借金を残したくない)

アパートローンの一括返済が必ずしも得策とは限りません いろいろな運用方法を考えた上で結論を出しましょう

現状について

毎月のやり繰りは食費がやや多いものの(外食も含めて月10~13万円)、収入の範囲内ですし、他の支出に大きな無駄も見当たらないので、このままで特に問題はないでしょう。ただし高脂血症の持病があるとのことなので、健康には十分留意した上で、グルメライフをお楽しみ下さい。

アパートローンについて

アパートローンの借入れ金利は1.85%です。上昇傾向にあるといっても、まだまだかなり安い水準です。ローン残額も500万円を切っているので今無理に返す必要はありません。
もちろん繰り上げ返済しても余裕はあるので問題はありませんが、いろいろな活用法を比較検討してから最終的に決断することをお勧めします。

繰り上げ返済する代わりに、「手元の普通預金を利用して、アパートの大規模修繕を数年前倒しで行う」という手があります。リフォームにかかるお金は、予定額よりオーバーするのが一般的ですし、大規模修繕となれば尚更です。また要介護状態になるリスクが年々高くなることを考えても「元気なうちに」リフォームを済ませておくことは一つの危険回避策です。すぐリフォームということではなくても、業者に見積もりを出してもらい資金繰りを考えてから、資産運用について再検討してみてはいかがでしょうか。

また、もし資産運用を始めるなら手元の流動資産(普通預金)を減らさない方が得策かと思います。資産運用するということは、多かれ少なかれ「元本割れ」のリスクを背負うことになるので、そのお金はイザという時すぐに換金できない可能性が生じます。ですから資産運用にお金を回すなら、繰上げ返済は見送った方が安全策と言えるでしょう。

介護が必要になった場合の対処を考えて

ご高齢の1人暮らしの方の場合、介護状態になるリスクに備える必要があります。1人暮らしの方が要介護状態になると、優先的に特別養護老人ホーム(毎月の負担が安い介護付きの公的老人ホーム)に入れるケースもありますが、症状が軽いと「100~200人待ち」ということもザラです。独身の妹さんが近くにお住まいなことも、順番待ちには不利です。妹さんが経済的に独立(働いている)なら、お母様の介護を引き受けることは難しいにもかかわらず、身内(特に女性)が比較的近くに住んでいると、役所は単なる「1人暮らし」とは見なしてくれないのがよくある現実です。

そうなると「ケア付きのグループホーム」や「有料老人ホーム」などへの入居も考えることが必要となってきます。幸い最近は、社宅や独身寮だった建物をコンバージョン(使用目的を換えて、改築して利用)することで、開設時にかかる費用は低価格化が進んでいます。最近私が取材をして「ここなら私も入居してもいいな」と思えるような施設はいずれも入所一時金が1000万円以下でした。高齢者は「介護が必要になったら不動産を処分して有料施設へ」とお考えの方も多いようですが、手元に流動資金がある程度あれば、不動産を処分しなくても介護に対応していける道が最近開けてきているのです。そうした最新情報もふまえて、手元に流動性資金をいくら残しておくかを考えてみてはいかがでしょうか。

高齢者の資産運用

橋本さんのお母様の現在の預貯金は、普通預金1900万円+社債200万円です。社債は発行会社が万が一倒産すれば「紙くずになる」可能性のあるリスク商品です。橋本さん親子に「資産運用している」という意識は薄いようですが、お母様は実は運用の第一歩を踏み出されているのです。高齢者の場合、運用に回すお金の目安は資産(不動産は除く)の10~20%ほどです。ですから運用に回すお金はこれ以上あまり増やさない方がいいのでは、というのが個人的見解です。

高齢者になってからこれ以上の(資産の10~20%を超える)金額を資産運用に回すことは、基本的にはお勧めできません。経験豊富な投資家でも加齢によって判断力が衰えて、思わぬ失敗をしてしまうことがよくあることです。ですから「高齢&初心者」の投資は、より慎重に考える必要がありますし、ある程度知識のある人の継続的なサポートがあることが望ましいと思います。

橋本さんのお母さまの場合は不動産を2つ持たれているので、ある程度インフレにも対処していけることを考えても「資産運用する必然性」は、そんなに高くありません。もしチャレンジするとしても「運用益をアテにする」ということではなく、知的余暇として100~150万円ほどの投資金額で「楽しんでみる」という姿勢でトライしてみてはいかがでしょうか。

以上を踏まえて橋本さんのお母様の資金(2100万円)の活用例と運用例(100万円)を考えてみました。今後の資産運用の参考としていただければ幸いです。

チェック! <資金(2100万円)をどう活用する?>

チェック! <資金(100万円)をどう運用する?>

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