多重ローンを抱えて貯蓄もできません。一本化して乗り切る事はできるでしょうか?


市田 雅良先生 (いちだ まさよし) プロフィール
  • ローンの現状を正しく知ること
  • 多重ローンをまとめて一本化することは必ずしも良くない
  • 教育費の負担は、親子で分担を

幸田久義さん(仮名)のご相談

長男と次男が浪人しながら希望する大学へ入ったものの、留年し授業料がかさみ、教育ローンが増えました。時を同じくして母が要介護認定を受け、週に一回ヘルパーさんにも来てもらっています。

幸い、住宅ローンは繰り上げ返済で50歳までに完済していますが、2008年までの教育資金確保のために、退職金の前借をお願いして400万円を会社から借りました。貯金がたまらない状況で、老後資金は3,000万円程度を目標としたいのに、このままでは心配です。さらに三男が大学進学を希望していて、資金的にはピンチです。多重に借りたローンの返済を、1本にまとめて整理したほうがいいのでしょうか?

幸田さん(仮名)のプロフィール

家族構成
51歳 会社員 世帯主
51歳 パート 配偶者
長男 23歳 大学4年 世帯主の扶養
次男 21歳 大学2年 世帯主の扶養
三男 15歳 中学3年 世帯主の扶養
※ 母同居  78歳  
■家計の状況
《現在の所得と収支状況》
<夫の年間収入>
給与収入 600万円
その他収入 ※下記明細 0万円
社会保険料・税 ▲100万円
夫 可処分所得 500万円
<妻の年間収入>  
給与収入 98万円
社会保険料・税 0万円
妻 可処分所得 98万円
<その他>  
母より 24万円
カードローン融資 110万円
可処分所得 合計 732万円

<年間支出の部>
日常の生活費 360万円
教育費 300万円
住宅費 15万円
生・損保保険料 36万円
ヘルパー費用 12万円
貯蓄額からの取り崩し ▲221万円
ローン返済※表1 230万円
(日常の生活費は、 食費・光熱水道費・被服費・通信費交通費・ 医療費・家事用品・交際費・こづかい等)
支出合計 732万円

※ 母から生活費負担を月2万円。妻は介護もありパート収入は月8万円前後

■預貯金・保険の内訳
預貯金・保険の内訳
夫名義の預貯金 400万円(退職金の前借の残高。退職時に返済予定)
簡易保険 満期時200万円(平成21年4月満期)
学資保険 満期時200万円(平成23年9月満期)

カードローンの整理をまず第一に考えて家計を立て直しましょう

幸田家の現状と家計の特徴を知る

ローンの現状分析

表1 多重ローンの内訳
  現在借入額 元利支払額(月額) 借入金利 返済期間
教育ローン 2,750,000 55,770 8.00% 60ヶ月
カードローン1 1,100,000 16,500 18.00%
カードローン2 2,200,000 27,500 15.00% 60ヶ月
自動車ローン1 1,237,500 42,680 9.36% 33ヶ月
自動車ローン2 827,750 49,720 10.02% 18ヶ月
合  計 8,115,250 192,170

多重にローンを抱えると、やはり混乱してしまうでしょう。そこで表1のように、まずはローンの返済一覧を整理してみましょう。

カードローン1と2は、教育資金と義母様の介護費用資金に借りたものです。借入額は総額811万円と、住宅ローンに負けず劣らずの大金となっていて、その借入金利はというと、住宅ローンとは比べ物にならないほどの高金利となっています。

このままいけば2~3年程度で貯蓄が底をつき、多重債務者として自己破産に突き進む可能性があります。

多重ローンを1本化は有効か?

多重の債務をまとめれば返済が楽になるというイメージがあり、それを進める金融機関がありますが、果たして本当に1本化は有効なのでしょうか?ちょっと検証してみましょう。

表2 年間返済予定表(支払額)
    1年目 2年目 3年目 4年目 5年目
教育ローンカードローン1 元金 465,960 504,680 546,480 591,910 640,970
利息 203,170 164,450 122,650 77,220 28,160
カードローン1(元金据置払方式) 元金 0 0 0 0 0
利息 198,000 198,000 198,000 198,000 198,000
カードローン2(元利均等払方式) 元金 319,427 370,777 430,378 499,565 579,853
利息 306,432 257,267 197,666 128,479 48,171
自動車ローン1 元金 413,710 454,190 369,600 0 0
利息 98,340 57,970 1,430 0 0
自動車ローン2 元金 537,900 289,850 0 0 0
利息 58,630 8,580 0 0 0
トータル 元金 1,736,997 1,619,497 1,346,458 1,091,475 1,220,823
利息 864,572 686,267 519,746 403,699 274,331
  2,601,569 2,305,764 1,866,204 1,495,174 1,495,154
  10.65% ←8,115,250円に対する864,572円の実効利回り

◆整理その1 一覧表の作成

表2は、ローンの一覧表を作成してみました。ローンのいくつかが満期を迎え、減少することが、時系列でわかります。例えば、自動車ローン1は18ヶ月後に満期を迎え、自動車ローン2は33ヶ月後に満期を迎え終了します。ただし、カードローン1は元金据置払方式のため、残高が減っていないことに注意しましょう。ここで注目すべき点は、多重債務の1本化を考える時に、返済期間の長短があるにもかかわらず1つにまとめようとすることは、いたずらに返済期間を長期化することにつながるということです。

◆整理その2 実効金利の検証

実行利率という面から検証してみましょう。残高8,115,250円に対する1年間の利息864,572円の実行利率は、単純計算してみれば10.65%となっています。貸し手である金融機関は利率12%を超え18%までを設定しているところが多く、1本化を検討するなら、この10.65%を下回る利率の融資先があるかどうかということになります。

◆1本化の検証

金融機関(この場合、銀行)にローンをまとめる相談を持ちかけた場合、まずは金融機関側の厳しい本人審査があります。そこをクリアしても、次に融資限度額の壁があり、限度額設定を300万円としている金融機関が多いようです。つまり、一般的にローン残高約800万円のこのケースでの1本化は、難しいことになります。でも、調べれば応じてくれる銀行はなくはなく、ローン1本化可能の商品がある東京スター銀行などは、審査に通れば、自動車ローンと教育ローンを除いたカードローンを対象に一本化可能です。しかし、幸田家のローンの特徴を考えれば、「全部まとめて一本に」というやり方は、必ずしも最善の方法とはならないでしょう。
幸田さんの会社は、退職金の前借ができたので助かりました。最近、従業員の多重ローンの対策に親身になってくれる企業が増えています。労働金庫とタイアップして、解決策の相談ができるといったところです。ひとりで悩まないで早期に相談することが、不安を取り除く第一歩だと思います。

◆教育ローンの負担増とその乗り切り方

教育費は早くから計画し準備できる資金とされており、子供が生まれれば、まずは保険型や貯蓄型で教育資金積み立てを始めるというのが定石となっています。でも、資金需要のピークである高校・大学進学の資金需要時に、保険満期金や積立額では不足するという場合には、ローンを検討しなければ対応できないこともあります。そこで、まずは国民生活金融公庫貸付や財産形成貯蓄の融資を利用する方法、あるいは奨学金制度を利用するというのが、金利面などで、民間ローンに比べて効果的に活用できます。その次の選択肢として、銀行などの金融機関の教育ローン融資を利用することが上げられます。銀行の教育ローン融資の対象は幅広く、公的な教育ローンと違って対象となる学校の範囲が幅広く、幼稚園、小学校、中学校も対象となっています。

ここで考えておくべき重要なポイントとして、「子供が自らローン返済にあたる場合は、事前の心の準備が必要」という点です。ローンを突然負担させるのではなく、10代半ばあたりから親子共に家庭での金銭教育で検討し、早期の心の準備に勤めることが大切なことだと思います。そもそも、教育ローンが増加し返済に不安があった場合は、親の責任負担と子供の責任負担の所在を明確化し、子供の自立性を尊重した解決法を探りたいものです。そこで例えば、「幸田家では親負担の教育費の上限は、長男・次男では年間100万円とし、三男の教育費用も、学資保険の満期金200万円以外の親負担の上限を100万円とする」といったことを、親子間で相談してください。

家計破綻にならない解決策

◆解決策1-多重ローンについて

多重にあるローンのうち、間もなく返済終了が迫っているものについては1本化せず、カードローンの330万円について検討します。今回は「おまとめローン」のある銀行で、一部1本化の返済シミュレーションをしてみます。幸田さんはすでに住宅ローンは返済済みなので、金利の低い「有担保のフリーローン」などを検討する価値はあると思いますが、今回の解決策では上記の条件で検討することにします。

表3 おまとめローンに組み直し後の年間返済予定表(支払額)
    1年目 2年目 3年目 4年目 5年目
教育ローン 元金 465,960 504,680 546,480 591,910 640,970
利息 203,170 164,450 122,650 77,220 28,160
「おまとめローン」の場合
金利10.5%
元金 337,105 374,259 415,501 461,293 512,126
利息 325,432 293,421 252,179 206,387 155,554
自動車ローン1 元金 413,710 454,190 369,600 0 0
利息 98,340 57,970 1,430 0 0
自動車ローン2 元金 537,900 289,850 0 0 0
利息 58,630 8,580 0 0 0
トータル 元金 1,754,675 1,622,979 1,331,581 1,053,203 1,153,096
利息 685,572 524,421 376,259 283,607 183,714
  2,440,247 2,147,400 1,707,840 1,336,810 1,336,810
  8.40% ←8,115,250円に対する685,572円の実効利回り

※ 2本のローンをまとめることにより1年目の負担は増えるが、計画的に返済する事により、2年目以降の負担が少なくなる。

◆解決策2-教育資金について

幸田家では、今後親負担の教育費の年間上限を長男・次男で100万円とし、三男の教育費用は学資保険の満期金200万円と親負担の年間100万円を上限としてシミュレーションをします。

◆解決策をとった場合のキャッシュフロー表

まとめ

幸田家の不安の原因は、お母様の介護と教育資金の負担増でローンが増えたことでした。そのため、将来の見通しが立たなくなったことに不安が増大されていったものと思われます。そこで、多重にあるローンのひとつずつの特長をつかみ整理していくことで、目的意識を持って返済することが大切になります。

お子さんが3人もいれば、教育費の捻出には大変苦労されるところでしょう。そこで、親も子も一緒になり、どう資金調達をすればいいのかを考え、親がすべての資金を負担することはできないことを子供が理解する必要があります。なぜなら、親にとっても、あと10年もすればリタイアメントし老後資金の算段をする必要があるからです。

親のライフプランやお金のやりくりを子供にさらけ出すということは、一昔前までは考えられにくいことでしたが、これからは、「子供の自立を促す」という意味からも、こういった親の姿勢を見せることは大きな意味を持つのではないでしょうか。