収入は多いのになかなか貯蓄が増えません。 マイホームを購入しても大丈夫でしょうか?


収入は多いのになかなか貯蓄が増えません。
マイホームを購入しても大丈夫でしょうか?

村井 英一先生 (むらい えいいち) プロフィール
  • 貯蓄が増えない家計のパターンに陥っています。
  • 「必要経費」と思われるものにこそ、節約の余地があります。
  • 優先順位を考え、お金を使うものと節約するものに分けましょう。

太田 真由美さん(仮名 40歳 会社員)のご相談

夫婦共働きですので、それなりに収入はあると思うのですが、思うように貯蓄が増えません。そろそろマンションが欲しいし、子供の私立中学受験も考えています。家計改善のアドバイスをお願いします。

太田 真由美さん(仮名 40歳 会社員)のプロフィール

家族構成 : 真由美さん (妻 40歳 会社員 年収400万円)
哲也さん  (夫 41歳 会社員 年収500万円)
長男 (10歳)
長女 (8歳)

<収入>(手取り収入)(単位:円)

月額 ボーナス 年収
夫の収入 320,000 650,000 5,140,000
妻の収入 280,000 400,000 4,160,000
合計 600,000 1,050,000 9,300,000

<支出>

金額 臨時支出 年間支出
住居費 55,000 660,000
食費 84,000 1,008,000
光熱費 28,000 336,000
医療費 3,000 36,000
被服費・雑貨 13,000 80,000 236,000
通信費 35,000 420,000
自動車関連費 67,000 160,000 964,000
教育費 58,000 200,000 896,000
教養・自己投資 39,000 50,000 518,000
小遣い 70,000 180,000 1,020,000
旅行 240,000 240,000
家具・家電購入 100,000 100,000
その他・使途不明 20,000 240,000
保険料 44,000 528,000
貯蓄 15,000 100,000 280,000
合計 531,000 1,110,000 7,482,000

<金融資産>

金融商品 金額
普通預金 230万円
定期預金 50万円
投資信託 20万円

<加入している生命保険>

種類 被保険者 保険金 月額保険料
定期付き終身保険 2,500万円 15,500円
定期付き終身保険 2,500万円 13,100円
学資保険 長男 100万円 7,370円
学資保険 長女 100万円 7,840円

必要経費と思っているものも、今一度見直しをして、
家族にとって優先順位の低いものは思い切って節約しましょう。

1. 収入が多くても貯蓄がたまらないパターン

家計簿を拝見すると、そのご家族の性格や行動パターンなどがよく見えます。太田様のご家庭は、皆さん行動的で、いろいろなことに積極的に取り組んでいる様子が目に浮かびます。自己研さんにも熱心で、ご自身を高めようとされている姿勢が感じられます。ただ、家計の管理という面では、その前向きさがアダとなることもあります。家計改善にも積極的に取り組んでいかれれば、そう遠くないうちに貯蓄を増やすことができるでしょう。

太田様は、ご夫婦二人とも正社員として働いており、世帯収入は同じ世代に比べると多い方だと言えます。だとすれば、平均以上に貯蓄ができていてもおかしくないはずです。ところが、ご自身も認識されているように、なかなか貯蓄がふえていきません。むしろ少ない方だといってもよいでしょう。このままの状態でマイホームを購入し、子供を中学から私立に進学させると、明らかに家計は破たんします。

<現状でのキャッシュ・フロー表を別ウィンドウで表示>

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それほど無駄遣いをしているつもりはないのに、貯蓄が貯まらない。なぜでしょう?
太田様は、収入が多いのに貯蓄が増えない家庭の典型的なパターンに陥っています。このようなご家庭は、実は少なくないのです。年収1,000万円前後の家庭に多い〝症例〟です。本来ならば、平均以上に収入があるのに、平均以下の貯蓄しかできていないのです。しかも、とりたてて贅沢をしている、というわけではありません。このパターンの特徴は次の3点です。

収入が多いのに貯蓄が増えない家計の特徴

1 平均よりもワンランク上の生活スタイル

ご主人だけの片働きにしろ、共働きにしろ、世帯の年収が1,000万円前後になると、日常の生活はお金に窮することがなくなります。その余裕が、支出の増加へとつながります。もちろん、収入が多いのですから、多少の贅沢は許されます。しかし、「少し雰囲気の良いお店での食事」「欲しかったブランドのバック」「年に1~2度は海外旅行」が重なると、結構な金額となってきます。特に、「平均よりもワンランク上の生活スタイル」を志向するようになり、ブランド物や高級品に手を出すようになるのも、この年収の家庭の特徴です。

2 マイホーム、自動車、子供の3つにお金をかけている。

「マイホームを持ちたい」。家庭を持てば、誰でも考えることです。今の時代、自動車の保有ぐらい決して贅沢ではありません。「子供にお金の心配をかけたくない」という親心は当然のことです。いずれも、1つひとつは贅沢ではありませんし、むしろ普通のことです。しかし、3つとも、十分に思いをかなえようとすると、年収1,000万円の家庭でも余裕はなくなります。どれもが、大きな金額のかかる支出だからです。

3 自分への投資、子供への投資が積極的

新しい知識を吸収したり、スキルを身に付けることはビジネススキルを高めてくれます。仕事をしていくうえで、自分の価値を高めることは大切なことです。それはやがて、将来の収入増につながることが期待できます。しかし、そのための費用は決して小さなものではありません。将来の収入増につながると思えばこそ、つぎ込む費用も多くなります。子供の教育にかける費用も同じです。将来を思えば、惜しげもなくお金をかけてしまいます。

以上の点を踏まえて、太田様の家計の状況を見てみましょう。まず、貯蓄を除いても毎月の支出が50万円超で、手取りでの月収を超えています。その分はボーナスを取り崩していることになります。また、貯蓄も含めた年間の総支出が、手取りでの年収を超えており、貯蓄をしながら、貯蓄を取り崩している状況です。全体として、支出オーバーになっていることは否めません。特に、マイカーローンを含めた自動車関連費、通信費、教育費、教養・自己投資が多くなっています。これらを中心に見直しながら、全体として家計のスリム化を図ることが大切です。

2.家計のスリム化の処方箋

では、どのように見直していけばよいのでしょうか?家計のスリム化の手順を確認しながら、具体的に検討していきましょう。

家計のスリム化というと、多くの人がまずは「家計簿をつけて、毎日節約に励む」ことを考えるでしょう。しかし、その考え方ではそれほど貯蓄が増えていきません。逆にストレスが溜まり、衝動買いをしかねません。これでは元の木阿弥です。無理なダイエットをして、リバウンドを繰り返しているようなものです。

家計のスリム化で、最初に手を付けるのは、「固定費」「必要経費」です。これは効果が大きく、しかもその効果は一時的なものではなく、ずっと続きます。精神的なストレスが少なく、リバウンドの心配がないという特徴もあります。

その1つが通信費の見直しです。携帯電話や固定電話・インターネット回線、ケーブルテレビなどの利用料は銀行引き落としとなっています。銀行引き落としだと、お金を支払っている感覚がないので、あまり関心を払わなくなります。節約しようという意識もありません。しかし、毎月引き落としとなっている利用料が1,000円少なくなっただけでも、年間で12,000円の節約になります。5年間では6万円、10年なら12万円となります。一度、携帯電話や固定電話・インターネットの料金プランを見直してみましょう。節約するには、見直したり、契約を変更したりと、手間がかかります。しかし、一度手続きをしてしまえば、後は何もしなくても、その効果が続きます。食費や交際費など、変動費で節約をしようとすると、1回は何とかできますが、それを続けるのは大変です。我慢することによるストレスもあり、衝動買いでそれまでの努力を帳消しにしてしまうこともあります。固定費の削減なら、その心配もありません。削減する余地はあるでしょう。
また、ケーブルテレビは思い切って解約してしまうのも方法です。いろいろなアプリを購入したり、ケーブルテレビを見たいというのなら、これはご自身の楽しみの範疇ですので、小遣いの範囲内でやりくりすることをお勧めします。

次に、保険料も見直しましょう。知り合いの保険会社の人に頼まれて、職場に来る外交員に進められて、加入したという人が少なくありません。これも一度加入してしまうと、銀行引き落としということもあり、ついついそのままになっています。しかし、家族の状況が変われば、必要な保障も変わってきます。さらに、保険会社の競争で保険料の安い新商品が次々に出ています。見直しをすることで、適切な保障を得ながら保険料を節約することができます。これも、一度見直しをしてしまえば、その効果はずっと続きストレスもたまりません

自動車―これは一家に1台は必要不可欠なもので、やむを得ない支出のようにも思えます。しかし、自動車ローン(もしくは数年に一度の購入費用)、駐車場代、自動車保険、ガソリン代、車検代など、自動車を持っていることで〝必要経費〟となっている金額はかなり上ります。さらに、自動車を持っていることで、どうしても外出が多くなり、行楽費や外食費が多くなります。自動車がなければ外出もままならない郊外ならいざしらず、都市部にお住まいでしたら、いっそ手放してしまうことも検討してみたいものです。首都圏では、カーシェアリングが利用できる地域が増えています。カーシェアリングは、自動車の時間利用のような制度で、予約が必要となりますが、安い料金で利用ができます。お住まいの近くにカーステーションがないか確認してみましょう。また、行楽に行くぐらいしか使っていないなら、レンタカーの利用の方が安上がりとい場合もあります。車にかかる維持費をすべて考慮すると、月に1~2度の利用であれば、レンタカーの方が安上がりとなります。

そして、教養・自己投資です。この項目の出費が多く、ご自身の価値を向上させようという太田ご夫妻の前向きな姿勢が感じられます。お手紙でも、「キャリアアップとビジネススキルの向上のために、ある程度の出費はいたし方ないものだと考えています」とあり、なかば義務的な経費となっています。ここで、「投資」というものを今一度考えてみましょう。
企業経営の世界で「投資」とは、生産設備を増やしたり、新たな店舗を設けるための出費です。出費することによって、「利益」が向上すると判断されると、投資することを決断します。「投資」しなかった場合に比べて、どのくらい利益が増えるかが、投資するかどうかの判断基準となります。
個人の場合はどうでしょうか。シビアに考えてみましょう。自己投資は、しなかった場合よりもした場合の方が、自己の価値は向上することでしょう。しかし、しなかった場合に比べて、どれくらい収入が増えることになるでしょうか。現在お金をつぎ込んでいる自己投資に出費しなかったら、どれほどの収入減となるでしょうか。もし、自己投資としてつぎ込んだ費用に比べて大きな収入増が見込めるのでなければ、それは「投資」とは言えませんし、「義務的な経費」ではありません。たとえ、仕事に関わる内容であったとしても、利益の拡大よりも興味の部分が先に立ち、取り組んでいるのであれば、「投資」というよりは「余暇」の一部と考えた方がよいでしょう。私は、決して自己研さんや勉強を否定しているわけではありません。確実な利益の回収が見込めないならば、余暇の1つとしてやりくりしましょう、ということです。

キャリアアップ、ビジネススキル向上の講座などは、けっこう高いものです。これは、キャリアアップやビジネススキルの向上が見込め、十分な資金回収が見込めると期待できるからです。しかし、大方のサラリーマンにとっては(自営業者にとっても)、資格やスキルで劇的に収入が変わることはそれほどなく、出費の方が多いのが現状です。「自己投資」のための費用というのは、将来の収入増を夢見て、ついつい出費が膨らんでしまいがちです。ほどほどに抑えるためにも、お小遣いの範囲内でやりくりすることをお勧めします。
もし、「自己投資」への費用を増やしたければ、ほかの余暇への支出を減らせばよいのです。多くの「自己投資」をしていれば、ほかの余暇にお金を使う余裕もなくなるでしょう。

子供への「教育投資」も同じことです。多くのご家庭で、「教育費の支出はやむを得ないもの」「子供には不自由をさせたくない」と考えています。しかし、子供に教育費をつぎ込んだからと言って、その子に将来の高収入が約束されているわけではありませんし、自分の老後に子供からの資金援助を期待しているわけでもないでしょう。当然のことながら「投資」ではありません。子供が公立校で高校卒業するまでの必要最低限の教育費は義務ですが、それ以上の部分は「義務的な支出」ではなく、「選択肢としての支出」です。ここでは、「子供にお金をかけるな」と言っているのではありません。子供に対して、平均以上に教育費をかけることを〝選択〟したのなら、「ほかへの出費はある程度我慢しなければなりません」ということです。

マイホームの取得も同様です。子供が小学生ぐらいになると、マイホームを取得する人が多くなります。周りでそのような人が増えると、ついつい自分も「マイホームを購入しなければ」と考えてしまいます。しかし、マイホームの取得は「義務」ではありません。あくまで選択肢の1つです。マイホームを取得する以上は、ほかへの出費は我慢をしなければなりません。逆に、マイホームの取得をあきらめ、ほかへの出費を充実させるという選択肢も検討するべきです。特に、太田様の場合は、ご自宅が会社の社宅扱いとなっており、賃貸費用が安くなっています。マイホームを取得することで、このメリットを手放すのはもったいないかもしれません。

さらに、太田様のご家庭ではご夫婦とも正社員の共働きで、世帯収入が平均以上となっていることから、家計に緩みも見られるようです。平均以上の収入の人が陥りやすい「ワンランク上の生活スタイル」を求めている部分はありませんでしょうか。食費、光熱費、被服費などが平均以上となっています。そして、毎月の支出とは別に、大きな出費が目につきます。年に1~2回の海外旅行、高額な家電製品の購入、臨時の被服費への出費。ボーナスが出た時に、「自分へのご褒美」をしたくなる気持ちはわかりますが、あれもこれもでは貯蓄は貯まりません

では、以上の点を踏まえて、家計を改善するとどうなるでしょうか。

改善した家計

(単位:円)

金額 臨時支出 年間支出
住居費 130,000 500,000 2,060,000
食費 75,000 900,000
光熱費 25,000 300,000
医療費 3,000 36,000
被服費・雑貨 12,000 0 144,000
通信費 0 0
自動車関連費 0 0 0
教育費 40,000 100,000 580,000
教養・自己投資 0 0 0
小遣い 90,000 200,000 1,280,000
旅行 90,000 90,000
家具・家電購入 50,000 50,000
その他・使途不明 18,000 216,000
保険料 25,000 300,000
貯蓄 36,000 890,000 1,322,000
合計 454,000 1,830,000 7,278,000

ここでは、次の点を改善しました。

  1. 通信費、教養・自己投資、被服費の臨時支出を小遣いの中でやりくりすることにしました。その代わり、お二人の小遣いをアップしています。
  2. マイホームの取得は予定通り実行します。その代わり、自動車は手放すことにしました。
  3. お子さんには高校までは公立校に進学してもらい、大学は私立の学費を負担します。
  4. 加入している生命保険を見直しました。定期付き終身保険を解約し、保険料の安いネット生命保険に加入します。
  5. 旅行、家電購入への出費を少なくしました。
  6. 食費、光熱費、その他・使途不明を10%削減しました。

いかがでしょう。けっして無理な節約策ではありません。毎日の生活費の削減は10%程度です。ちょっと気をつければよい程度で、毎日家計簿とにらめっこする必要はありません。それでも、将来の状況を比べると、一目瞭然の差となります。

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3.多くの選択肢の中から2つを選ぶ

ここまでご覧になって、あきれた方もいることでしょう。
「マイホームも、マイカーもあきらめなければならないのか」
「子供に教育費をかけること、自分を高めることは悪いことなのか」
いえいえ、そうではありません。
先ほど私が提案した改善策をすべて実行する必要はありません。「改善したキャッシュ・フローグラフ」を見ると、貯蓄残高の上昇が続きますが、そこまでしなければならないわけではありません。いくつも挙げた改善策のうち、いくつかを選んで実行すればよいのです。
どれを選ぶかはご家庭によります。ご家族の希望を話し合って、多くの選択肢に優先度をつけてください。そして、優先度の高いものにはお金を重点的につぎ込み、優先度が低いものはあきらめるのです。年収が比較的多いご家庭でも、夢や希望をすべてかなえようとすると、家計は破たんします。優先度を決めて、いくつかに絞って実現していくことが大切です。

  • ワンランク上の生活スタイル
  • 子供への十分な教育費
  • 自分の価値を高めるための出費
  • マイホーム
  • 自動車の保有

このうち、2つを選んで、資金を重点投入してみてはいかがでしょうか。その代わり、ほかはあきらめて、我慢します。たとえば、子供は私学に行ってもらいたいし、マイホームの購入も譲れないなら、自分や車への出費はあきらめ、普段から地道な生活を送ります。車は手放せないし、「余裕のない生活はしたくない」ということであれば、マイホームはあきらめ、お子さんには公立校に進んでもらいましょう。

1980年代、いわゆるバブルのころは、サラリーマン家庭でも、上の5つの項目をすべて実現することができました。〝普通〟の家庭であれば、マイホームとマイカーを持ち、子供を私学に進学させながら、余裕のある生活を送ることができました。しかし、今の時代は、そうはいきません。各家庭での選択と集中が必要です。しかし、考えようによっては、すべてを満たさなければならない時代よりも、夢や希望を絞って実現させる今の時代の方が満足度は高くなるかもしれません。

太田様のご家庭でも、ご家族のご意見を聞きながら、優先度をつけてみてください。そして、実現する夢を選択してみましょう。それは家族の夢や希望を話し合う機会になりますし、選択と集中を実行することで、貯蓄も増えてくるようになるはずです。

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