都内に住む両親から、同居を打診されています。 二世帯住宅を新築する際にはどんな事に注意すれば良いでしょう?


都内に住む両親から、同居を打診されています。
二世帯住宅を新築する際にはどんな事に注意すれば良いでしょう?

宮塚 達夫先生 (みやつか たつお) プロフィール
  • 二世帯住宅のメリットとデメリットを家族で共有
  • 二世帯住宅は相続税対策にも有効
  • いざとなったら賃貸にもできる代わりに転売は難しい

三浦 憲二さん(仮名 40歳 会社員)のご相談

現在東京近郊の賃貸マンションに暮らしている会社員です。
都内の一等地に住む両親が高齢になり、二人だけの生活に不安を感じ始めたらしく、近くで暮らしてほしいと相談されています。 実家の土地は100坪以上で広さに余裕もあるので、二世帯住宅を新築してもいいと言われています。 兄弟はいないので、将来はその土地に新しい家でも建てようかと考えていましたが、思わぬ申し出に少し戸惑っています。
二世帯住宅に住む場合の注意点などあれば教えてください。

三浦 憲二さん(仮名 40歳 会社員)のプロフィール

家族構成 : 本人 (40歳 会社員)
妻  裕子(仮名 35歳 パート)
長女 みどり(仮名 5歳)
長男 大輔(仮名 2歳)
父  一郎(仮名 75歳)
母  智美(仮名 71歳)

将来の相続税対策のためにも二世帯住宅は有効
ただし、事前に十分協議して結論を

1.二世帯住宅のメリット・デメリット

ご両親が資金を提供して二世帯住宅を建ててくれることが、三浦さんの家計にとってどれ程大きなメリットがあるかは明らかです。現在毎月支払っている家賃の負担がなくなるのですから、今後増加するお子様の教育費を考えれば願ったり叶ったりと言えそうです。しかし、昔の嫁姑関係ほどではないにしても、三浦さんのご両親とは赤の他人である奥様の気持ちをしっかりと確認することがとても重要です。その上で、二世帯住宅のメリット・デメリットを整理してみましょう。

ご両親のメリット

病気や介護が必要になったときに安心
孫にいつでも会える
老人を狙った犯罪への不安が軽くなる
夫婦二人だけでは広すぎる家屋の管理を手伝ってもらえる

三浦さんのメリット

家賃の支払いがなくなって、家計負担が軽くなる
子供の面倒を見てもらえる
親に何かあってもすぐに駆けつけられる
子供がお小遣いを貰ったり、洋服を買ってもらえる

ご両親のデメリット・負担

建築資金が必要
お嫁さんに気を遣わなければいけない

三浦さんのデメリット・負担

生活スタイルが変わる可能性がある
いろいろなことに口出しされる可能性がある
勝手に専用部分に立ち入られる

重要なポイントは、いろいろなケースを想定して十分に話し合うことです。そして二世帯住宅にゴーサインが出たら、話し合いの結果を活かした設計にしましょう。上記のデメリットの中でも圧倒的に多いお嫁さんの不安が、専用部分に無断で立ち入られることなのです。頼んでもいないのに掃除や片付けがされていたりとか。プライバシーをいかに確保するかが重要となってきます。
その点では、建物自体はひとつなのですが、中で全く行き来ができない完全独立型の二世帯住宅もいいのではないでしょうか。通常の二世帯住宅は玄関が並んでいたり、一階と二階にあったりしますが、土地が複数の道路に面している場合、それぞれの道路に玄関を作れば、建物は一つでも二世帯住宅とは名ばかりで、ただ近所に住んでいる感覚かもしれません。
また二世帯住宅に住もうとした場合、奥様のご両親にも事前に相談し、理解を得ておくことが非常に重要です。奥様のご両親だって同じように娘夫婦と同居したいかも知れないからです。

2.相続のことも考えましょう

三浦さんのケースで注意しなければならないのが、相続税の問題です。都心の一等地に100坪以上の土地を所有している場合、土地だけで相当な財産評価になってしまうので、高額な相続税を払わなければならない可能性が非常に高いといえます。
まず土地の評価がいくら位なのか調べてみましょう。国税庁のホームページで土地の路線価を調べて土地の面積を掛けると、大体の評価額を簡単に計算することができます。計算した金額が相続税の基礎控除額を上回った場合、相続税を払わなければいけません。基礎控除額は現行5,000万円+(法定相続人の数×1,000万円)で、平成27年からは3,000万円+(法定相続人の数×600万円)となります。平成27年以降にお父様の相続が発生したとすると、法定相続人はお母様と三浦さんの二人なので基礎控除額は4,200万円です。 三浦さんの場合、まず間違いなく相続税が発生すると考えていいでしょう。

実はこの相続税の納付額を減らすのに絶大な効果を発揮するのが、二世帯住宅なのです。小規模宅地等の特例という制度を使えるからです。今年の法改正で、平成27年からは法定相続人全員が同居していれば100坪までの土地の評価を8割減らすことができるようになります。そして中で行き来のできない完全独立型の二世帯住宅でも、同居とみなしてもらえるのです。
仮に三浦さんのお父様の土地の路線価が坪200万円で、面積が100坪だとします。二世帯住宅に住んでいれば、土地の評価2億円全体が8割減で4,000万円となり、基礎控除額が4,200万円なので、他に財産がなければ相続税は課税されません。しかし仮に二世帯住宅ではなく、三浦さんが近くのマンションで暮らしていた場合、お父様と同居していたお母様の持ち分しか評価減の対象となりません。つまり、お母様の持ち分は
1億円×8割減=2,000万円
で、三浦さんの持ち分は1億円そのままなので、合計1億2,000万円の評価となってしまい、基礎控除を引いても7,800万円の課税財産となってしまいます。土地の権利を半分ずつ相続した場合、3,900万円に対する税額は
3,900万円×20%-200万円=580万円
となります。お母様の分の相続税は課税されませんが、三浦様は580万円もの大金を納税しなければいけなくなるのです。
何としてでも二世帯住宅に住むべき理由がここにあるのです。

また完全独立型の二世帯住宅の場合、将来三浦さんが転勤になった場合やご両親が老人ホームに入所することになった場合、半分だけ賃貸住宅にすることも可能なのです。

二世帯住宅とは関係ありませんが、相続税対策として頭に入れておいていただきたいことがあります。ご両親が土地以外にも多額の預貯金などを持っている場合、やはり財産を減らしておく必要があります。 今年の法改正により、平成25年4月1日から平成27年12月31日までの間に孫の教育資金に充てるためにその祖父母が金銭等を拠出し、金融機関に信託等をした場合には1,500 万円(学校等以外の者に支払われる金銭については、500 万円を限度とする)まで贈与税がかからなくなります。お父様お母様にこんな制度があることをさりげなく伝えてみてください。ひょっとしたら、お子様の教育資金をご両親に負担してもらい、将来の相続税負担も軽くなるという夢のような出来事が起こるかもしれません。

3.まとめ

三浦さんにとって二世帯住宅に住むメリットは非常に大きいようですが、大切なことは家族で話し合いを十分に重ねることです。完全独立型の二世帯住宅であっても、後になって半分に分けることは当然できません。転売しなければならなくなった時は一般住宅に比べて買い手が限定されてしまいます。竣工した後のご両親の貯蓄残高は大丈夫でしょうか。ありとあらゆることを想定して、専門家を交えて話し合ってください。税制の細かい要件にも十分な注意が必要です。