いわゆる「おひとり様」で、老後が心配です。


いわゆる「おひとり様」で、老後が心配です。

宮塚 達夫先生(みやつか たつお) プロフィール
  • 不動産の有効活用を考えましょう。
  • 保険は死亡保障よりも寝たきりになったときに備えましょう。
  • 一人暮らしのリスクヘッジを考えましょう。

清水 圭子さん(仮名 43歳 会社員)のご相談

大学卒業後結婚し、ずっと共稼ぎをしてきましたが、5年前に離婚し子供もなく、世間でいう「おひとり様」です。
離婚時に前夫からもらった築10年のマンションに猫2匹と暮らしているので家賃はかからないのですが、今後再婚する気もなく、老後の生活が心配です。
生活設計上留意する点があったら教えてください。

清水 圭子さん(仮名 43歳 会社員)のプロフィール

家族構成 : 清水 圭子さん(仮名 43歳 会社員)
年金暮らしの別居両親(都内持家在住)
兄弟なし
年収 : 手取り400万円(内賞与100万円)
60歳定年時まで昇給はないと思う。
65歳まで雇用延長制度を利用するつもりだが、年収は250万円位になると思われる。
退職金 : 1,000万円位
毎月の総生活費 : 25万円
現在の貯蓄 : 800万円(すべて銀行の普通預金)
現在加入の保険 : 都道府県共済総合型のみ(毎月の保険料4千円)

<今後の生活計画目標>

  • 退職後は猫とのんびり暮らしたい。
  • 趣味は友人と食事をしたり旅行をしたりすることで、老後もできるだけ続けたいと思っている。
  • 生活費は現状と同じくらい必要と思っている。
  • 年金は年間230万円程度と思われる。

高齢になっても一人暮らしのまま?
家を離れる時のことも考えておかなければなりません

1,現状を把握することから始めましょう。

上記の【今後の生活計画目標】に基づいた資金プランニング表がこちらです。
女性の平均寿命は年々伸びており、資金プランニングにおいては長生きのリスクを考慮して100歳までのプランニングとしました。

<資金プランニング表を別ウィンドウで表示>

この表を見ると、100歳になった時でもある程度の貯蓄残高があり、資金面の心配はあまりなさそうに見えますが、本当に大丈夫でしょうか?

2,将来発生しそうな出費を考えてみましょう。

一番はっきりしているのは、現在お住まいのマンションには何らかの対処が必要であるということです。
現時点で築10年ということは、将来大規模リフォームあるいは住み替えが必要になってくるからです。
最近は100年マンションというような宣伝文句を聞くこともありますが、あくまでも躯体の話であって、内装まで100年大丈夫というわけではありません。
清水さんの年齢から考えて、将来大規模リフォームや住み替えが必要になったときに住宅ローンが組めるかといったら難しいといえるでしょう。

また、ご自身の病気などで、予定通りの貯蓄ができない場合だってあります。
そんな場合に備えて、ある程度の対策を立てておくことも必要です。

3,住宅について

ご兄弟がいない清水さんの場合、現在ご両親がお住まいの土地・家屋は、将来相続によって圭子さんの所有になります。
その場合ここで考えられるケースをひとつひとつ検討していくことにします。

ア、 実家に住み替える

この場合、現在のマンションを売却して資金を手元に残す。あるいは、周辺賃貸相場を調べた上でマンションのリノベーションをして賃貸収入を得るという方法が考えられますが、余程の立地でない限り将来の維持費や空室リスクを避けて、売却した方がベターなのかなと思います。

ご両親のどちらかが先立たれた場合に同居して面倒を見ることもあるでしょうし、この場合一定の条件を満たせば、土地の相続税額において有利な扱いを受けることもできます。

もちろん実家家屋のリフォームあるいは建て替え費用はマンション同様用意する必要がありますが、資金不足が見込まれた場合は、土地を担保にお金を借りて、清水さんがお亡くなりになった後に清算する「リバースモーゲージ」という融資を活用することも可能です。

イ、 実家の土地で賃貸住宅経営を始める

土地の広さや立地条件にもよりますが、賃料収入を得る方法です。
ご両親の相続財産のほとんどが土地であったような場合は土地を担保に建設資金を借り入れ、賃料収入で返済していく方法が一般的です。賃貸併用住宅にするという選択肢もあります。

この場合、アの場合と同様、マンションの売却資金あるいは賃料収入の他に、新たな賃料収入を得ることができ、資金プランニングにおいては最も有利な方法といえるでしょう。

この場合も、ご両親の存命中に賃貸住宅経営を開始した場合、相続税額が減額される場合があります。
もちろん空室リスクや、当然維持費も発生するので、慎重に検討する必要があります。

ウ、 実家を売却する

現在お住まいのマンションのリフォーム、あるいは買い替え資金に回すことが可能です。
但し、相続税評価においては注意が必要となります。

4,収入減に対する備え

清水さんの場合一番怖いのは、病気などで長期間就業できなくなり、収入減と医療費負担のダブルパンチに見舞われたときです。

現在清水さんが加入している都道府県共済の総合型は、地域により多少の違いはあれ、月々4千円型は病気の場合約800万円の死亡保障と日額約9千円の入院給付金その他がセットになっており、掛け金の払い戻しがあることも考えると、現時点でのコストパフォーマンスは非常に高い保険であるといえます。

死亡保障については後で検討しますが、まず入院給付金は適切な保障かどうか考えてみます。
そもそも健康保険の高額療養費の支給により、すべて保険診療ならば1か月の医療費は約8万円(多数回の場合は約4万5千円)が上限となります。また健康保険組合によっては独自給付でその上限を8万円よりかなり低く設定していることもあるので、まずは組合に保険給付の内容を確認してみてください。
仮に8万円が上限であるとすると1カ月入院した場合

8万円÷30日=2,666円

が1日当たりの実質負担額ということになります。
もっとも入院した場合、食費の自己負担分や、差額ベッド代に代表される保険診療外の医療費など思わぬ出費がかさむことも多いので、入院給付金には余裕を持たせることも必要です。

また健康保険では長期療養で就業できなくなり、会社から給与が支払われない、あるいは減額されてしまった場合でも、約1年半は月給のほぼ3分の2になるまでの額が支給される傷病手当金という給付もあります。
清水さんの場合は25万円の3分の2、17万円弱の収入は確保できることになります。

一方、最近医学の進歩によって入院・手術をせずに治療できるケースが多く見られるようになりました。特にガン治療においては抗がん剤治療や放射線治療の改良により、通院治療がどんどん増加しています。
そして、通院といってもほとんど1日を費やしてしまうため会社を休まなければならず、かかる費用も入院と変わらないのですが、清水さんの保険では何ら保険金が下りません
ガンに対して一抹の不安を感じているようなら見直しが必要かもしれません。
通院や放射線治療の保障が充実した医療保険や、所得補償保険などを検討してみてはいかがでしょうか。
またこの共済は60歳以降、特に65歳以降に保障が小さくなってしまい、平均寿命が延びている現状では注意が必要です。

5,死亡保障について

清水さんにとって死亡保障は必要でしょうか?
マンションを所有していて貯金も800万円あるので、葬儀費用など死後の整理資金は問題ありません。
ただし、高度障害(寝たきり)状態になったときのことも考えておく必要があるのです。
もし、清水さんが今寝たきり状態になった場合、当然面倒を見てくれるのはご両親となり、ご両親の資産にもよりますが、年金暮らしのご両親に経済的負担をかけず自己資金で賄いたいと思うのであれば、ある程度の金額は確保する必要があります。

もうひとつ心配事といえば、残された猫がどうやって幸せに暮らしていくのだろうかという点でしょうか。
猫の寿命は長寿でも20歳くらいなので、清水さんの年齢から考えると新しい猫が家族になる可能性が高いといえます。猫を家族として暮らしている清水さんなら心配でならないはずです。死後の財産をすべて猫にあげたいと思っても当然ですが、残念ながら猫は権利の主体とはなれません。
友人・知人に財産を譲って、大切に育ててねとお願いする方法もありますが、誰も監視できないのが難点です。
しかし、信託制度を利用する方法がありそうです。
清水さん(委託者)が財産を信託銀行(受託者)に預け、そこから「受益者」である猫を育ててくれる団体等に資金を交付するイメージです。この仕組みを使うと、財産が清水さんの意思と違った使われ方をする恐れがなくなります。
現状ではレアケースですが、今後こういった事例が増えてくるのではないでしょうか。

6,まとめ

清水さんの場合ご自身の資産に加え、実家の土地を上手に活用することで、猫と幸せな老後生活を過ごすことができることと思います。

但し、人間誰もがいつまでも元気でいられるとは限らず、体力や判断能力が衰えてくるものです。
ライフプランの中には、介護が必要になった場合に高齢者施設へ入居する場合の資金も考えておく必要があります。
また判断能力が衰えた場合に備えて、任意後見制度についても知識を持っておいたほうがよいでしょう。

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