夫が大学院で研究のため、収入が激減。 私も働く場合、オトクな働き方は?


夫が大学院で研究のため、収入が激減。
私も働く場合、オトクな働き方は?

 
鈴木 暁子先生 (すずき あきこ)プロフィール
 
  • 直近の心配は乗り切れそうですが、今後のライフプランをできるだけ具体化しましょう
  • 妻の働き方と各種制度をしっかり理解しておきましょう
  • 働き方は目先の収支だけでなく、トータルでメリット・デメリットを検討しましょう。

奥寺 麻子さん(仮名 34歳 専業主婦)のご相談

主人は医師で昨年度までは非常勤扱いですが、年収一千万前後ありました。今年度より大学院での研究のためアルバイトしかできず、手取りでの月収が20万ほどになってしまいました。
私は看護師の資格があるため働きたいと考えていますが、控除や社会保険の関係でどの程度の収入で働くのが良いのか分からないのでご教授いただきたいです。

奥寺 麻子さん(仮名 34歳 専業主婦)のプロフィール

世帯年収(税引き後) 350万円
家族構成 : 夫 32歳 医師(平成22年度から2年間学生)
妻 34歳 専業主婦
第1子 1歳
住居 : 賃貸
車 : 2台所有
 

※以下「ボーナス時、臨時」は年間合計額

(単位:円)

【支出〈固定費)】
毎月 ボーナス時、臨時
住居維持費 75,500
車維持費 30,000 204,560
住宅ローン 0
自動車ローン 0
保険料 56,000 50,000
第1子関連費 0
第2子関連費
小遣い 23,000
固定費合計 184,500 254,560
 
【支出(やりくり)】
食費※1 52,000
水道・光熱費 20,000
通信費 17,000
交際費※2 40,000 300,000
教養娯楽費 4,000
その他 80,000 500,000
使途不明金
やりくり費合計 213,000 800,000

※1 : 外食含む
※2 : 帰省費含む

支出合計 397,500 1,054,560
【貯蓄】
商品名 毎月貯蓄額 ボーナス時、臨時貯蓄額
子供名義貯金 13,000
貯蓄額合計 13,000 0
 
【貯蓄残高】
商品名 合計
家計貯金 2,700,000
夫貯金 1,000,000
妻貯金 1,000,000
貯蓄残高合計 4,700,000

目先の損得だけでなく、ライフプランを長い目で見て
働き方と収入目標を立てましょう。

1.厳しい現状でも諦めずに家計管理に取り組みましょう

麻子さん、こんにちは。私の友人にもご主人が勤務医の方がいます。その方も以前留学された際、「完全に貯金の食いつぶし」とボヤいていました。医師ですと通常収入を得ている時と、仕事から離れざるを得ない時の収入のギャップがこんなにも大きいのかと驚いたことを思い出しました。まだお子様も小さく忙しい毎日だと思いますが、これを機に家計管理に目を向ける姿勢はとても良いことです。
では現在の家計を見ていきましょう。

<キャッシュフローを別ウィンドウで表示>

【進学コース別学習費】

すべて公立 小学校から私立 中学から私立 高校から私立
幼稚園(2年)※ 108 108 108 108
小学校(6年) 200 824 200 200
中学校(3年) 142 381 381 142
高校(3年) 156 314 314 314
合計 606 1,627 1,003 764

(単位:円)

※文部科学省平成18年度「子どもの学習費調査」を基に算出。千円単位は四捨五入。
※幼稚園は私立の金額

年収が半分以下になるという大変厳しい状況ではあるものの、お子様がまだ小さく教育費にほとんどお金がかからない時期です。直近のご心配であるこの2年間は何とか乗り切れそうです。ただ、決して余裕があるわけではないので、日々の節約でできる限りの努力は必要です。

ご希望としては麻子さんもお仕事に復帰したいようですが、現状ではお子様の面倒を見ていただけるサポート体制は見込めないとのこと。とりあえず麻子さんの収入はないものとします。また、教育費は上記統計を使用します。大学に関しては私立大学医学部を想定し、いくつか学費を調べてみました。6年間の平均が2,000万円から4,000万円と幅があるため、中間の3,000万円を選択しました。

医師の場合、他の職業に比べ比較的高い割合で、就職後に留学や大学院への就学機会が多いですよね。今回家計を拝見し、支出の中でも「その他支出」や「交際費」の占める割合が非常に多いと思ったのですが、内訳が学会出席、書籍購入など、確かに必要経費であり節約は難しそうですね。車の維持費についても、お住まいの場所柄2台必要ということで、検討したうえでの所有ですので必要な支出でしょう。その他の費目についても特段浪費の傾向は見当たらないと思います。しいて申し上げれば通信費(携帯電話代がほとんどだと思いますが)や食費(現在はお子様が小さいですので、大人2人分と考えて)がもう少し抑えられると良いかなという印象です。

これまでの生活レベルを下げるのは大変ですが、2年間乗り切れば通常の収入を期待できると思います。一度厳しい現状に慣れると、今後ご主人の収入が戻った時には、これまで以上に家計管理が楽に感じられるはずです。奥寺家の家計は必要経費が多いため、劇的な家計改善が難しいかもしれませんが、諦めず現状の家計を少しでも改善する工夫を実践していきましょう。

2.今後のライフプランをできるだけ具体化していきましょう

直近は大丈夫そうだとはいうものの、キャッシュフローを見ておわかりのように、今回は最低限(お子様の教育費)の想定しか含まれていません。住宅ローンや車の買い替えなど今後想定できる支出を入れ込んでいくと、ご主人の収入が戻ったとしても、かなり厳しいと言えます。貯蓄合計が赤字になっていなくても、老後資金の準備が十分でないおそれがあるのです。できるだけ支出や収入の変化を組み込んで、より現実に近いキャッシュフローを作っていくことで、「いつ」、「いくら」の支出があるのかを把握し、その準備を早めにスタートさせることが重要です。まだお若いご夫婦ですので、時間を味方につけて準備することが十分可能です。

3.妻の働き方と税金、社会保険料などについて、しっかり理解しておきましょう

奥様が収入を得ることは家計改善のために最も効果的な手段です。麻子さん自身もご希望されていますが、特に資格が必要なお仕事ですから、雇用の厳しい時代でも強みでしょう。

ところで最近「いくらくらいまで働くのが良いか」というご相談を受ける事が増えています。やはりこのご時世でご主人の昇給が見込めない中、奥様が収入を得ることについては比較的当り前のように捉える方が多くなったと感じますが、配偶者控除や税金のことを考えると、103万円などのいわゆる”壁”を気にする方が大半です。 では整理してみましょう。

【妻への課税と夫への控除】

年収 妻の収入への課税 夫の収入への控除
所得税 住民税 配偶者控除 配偶者特別控除
100万円以下 かからない かからない 受けられる 受けられない
100万円超 103万円以下 かからない かかる 受けられる 受けられない
141万円未満 かかる かかる 受けられない 受けられる
141万円以上 かかる かかる 受けられない 受けられない

※夫が配偶者特別控除を受けられるのは、夫の収入がおおむね1,230万円以下

<条件>

ご主人の収入(a.学業を修了した後) … 1,000万円(給与所得控除額:220万円)
(b.現在) … 350万円(給与所得控除額:123万円)
社会保険料控除 … 収入の10%

1)麻子さんの収入が103万円の場合 ①麻子さんの所得税
103万円-65万円(給与所得控除)-38万円(基礎控除)
⇒ 所得0円(所得税額0円)
②ご主人の所得税
a)1000万円-220万円(給与所得控除)-38万円(基礎控除)-38万円(配偶者控除)
-38万円(扶養控除)-100万円(社会保険料控除)
⇒ 所得566万円(所得税額704,500円
b)350万円-123万円-38万円―38万円-38万円-35万円
⇒ 所得78万円(所得税額78,000円

2)麻子さんの収入が140万円の場合 ①麻子さん所得税
140万円-65万円(給与所得控除)-38万円(基礎控除)
⇒ 所得37万円(所得税額18,500円
②ご主人の所得税
a)1000万円-220万円(給与所得控除)-38万円(基礎控除)-3万円(配偶者特別控除)
-38万円(扶養控除)-100万円(社会保険料控除)
⇒ 所得601万円(所得税額774,500円
b)350万円-123万円-38万円―3万円-38万円-35万円
⇒ 所得113万円(所得税額113,000円

3)麻子さんの収入が141万円超
①麻子さんの所得税
141万円-65万円(給与所得控除)-38万円(基礎控除)
⇒ 所得38万円(所得税額19,000円
②ご主人の所得税
a)1000万円-220万円(給与所得控除)-38万円(基礎控除)-38万円(扶養控除)
-100万円(社会保険料控除)
⇒ 所得604万円(所得税額780,500円
b)350万円-123万円-38万円-38万円-35万円
⇒ 所得116万円(所得税額116,000円

<世帯収入比較を別ウィンドウで表示>

このように、麻子さんが所得税を支払い、ご主人に控除がつかなくなっても世帯収入としてはアップします。
※上記概算は所得税の面からの比較です。実際はこれに住民税も加算(自治体によって異なる)されます。

ただし、注意事項として2つお話ししておきます。
勤務先によっては「家族手当」の支給があるところもあります。支給対象としては配偶者の収入が100万円や103万円を基準としているケースが多いので、もし、ご主人が勤務医に戻られた場合、勤務先にそのような手当てがあれば、麻子さんの収入が基準を超えてしまうと手当ての対象からはずれる可能性もあります。その分も考慮が必要です。

また、現在勤務医ではないご主人の年金保は1号被保険者になっていると思いますので、麻子さんも1号被保険者ですが、ご主人が勤務医として2号被保険者であった間は麻子さんは3号被保険者となっていたと思います(今後病院に戻られた場合も)。しかし、麻子さんの収入が130万円を超えると、今度はご自身で厚生年金保険料と健康保険料、または国民年金保険料と国民健康保険料を支払うことになります。
※正社員の1日の勤務時間、1ヶ月の勤務日数のおおむね4分の3以上か否かで判断

したがってその分を加味すると、129万円と130万円の場合では、129万円のほうが世帯収入としてオトクということになってしまいます(言葉は悪いですが、収入が130万円以上の場合は、130万円程度ですと非効率な働き方ということです)。ちなみに平成22年度の国民年金保険料は月額15,100円ですので(国民健康保険料は自治体によって異なる)、130万円以上の収入を得るのであれば、実際には160万円以上を目指すべきでしょう。

4.税金、社会保険などはトータルでメリット・デメリットを検討しましょう

これまでは、税金や控除、社会保険料のボーダーラインや、目安をお話してきました。
ただ、麻子さん自身が厚生年金保険や健康保険、雇用保険に加入することになれば、もし2人目のお子さんを考えた場合に、出産・育児に関する手当ての給付を受けることができますし、退職した際の失業給付などももらえる可能性があります。
また、厚生年金保険であれば、納付した保険料に応じて年金額も増えます。

このように、目先の収支だけではなく制度としてのオトク感を考慮し、もし環境が許されるのであれば、できるだけ正社員に近い働き方まで検討するのも選択肢のひとつです。
ただし育児を楽しみたいという気持ちもおありでしょうし、もし麻子さんもしっかり働くとなると、今度は保育園の費用などもかさむはずです。最終的にはそのような気持ちのバランスや、働くことで発生する支出まで含めてトータルで検討しましょう。

勤務医といっても、医師の世界は一般のサラリーマンとは違いも多いと思います。元看護士の麻子さんは、ご主人のお仕事や職場環境にも理解を示せる心強いサポーターだと思いますので、今後発生する様々なライフイベントを実現するために、家計管理をがんばってください!

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