物価が上がって年金額が増えると聞きました。しかし、実質目減りとの話もあります。どうなっているのでしょう?


今回、回答いただく先生は…
村井 英一先生(むらい えいいち) プロフィール
  • 令和6年の年金は前年に比べて増えましたが、実質的には減少しています
  • 高齢世代が受け取る年金は、現役世代が払った保険料で賄われています
  • これからは、自分自身での備えも大切になります

  大橋 剛さん(仮名 51歳 自営業)のご相談

先日のニュースで、今年度は昨年に比べて年金額が増えたと言っていました。ただし、実質的には減っているとのこと。いったいどういうことなのでしょうか?将来、私たちが年金をもらう時、年金額は増えているのでしょうか、それとも減っているのでしょうか?

大橋 剛さん(仮名)のプロフィール

家族構成
家族 年収
ご相談者 大橋 剛 さん  51歳(自営業) 420万円
妻  50歳(会社員) 390万円
子ども2人はすでに独立。
貯蓄額 380万円

年金額の上昇率が物価上昇率より低いと、実質的には目減りしていることになります

1.年金額は上がっているけれど、物価上昇率よりも低い

老後に受け取ることができる年金には、すべての国民を対象とした老齢基礎年金と、お勤めの人を対象にした老齢厚生年金があります。老齢基礎年金は、20歳から60歳までのすべての期間に保険料を払った場合満額が支給されます。未払いの期間があると、満額の金額に国民年金保険料を払った月数に応じて調整された金額となります(お勤めで厚生年金に加入していた人は国民年金を払ったことになります)。この老齢基礎年金の(満額の)金額は年度ごとに変わります。そのため年金の金額も毎年変わることになります。

令和6年度(2024年度)は、前年度に比べて2.7%の上昇となりました。実際の金額は増えているのですが、昨年は物価が3.2%も上昇しました。物価が上昇するということは、裏を返せば、お金の価値が下がっているということです。物価よりも年金の上昇幅が小さいため、実質的には目減りしていることになります。実際の金額が増えていても、物価の上昇ほどに増えていなければ、その価値は低下していることになり、実質的には減っているわけです。物価の上昇以上に増えないと、実質的には増えたことにはならないのです。
令和6年度(2024年度)の老齢基礎年金額は満額の場合で、67歳未満の人は昨年よりも21,000円増えた81万6,000円、68歳以降の人は21,100円増えた81万3,700円となります(満額の金額を算出するための改定率が前年度比で2.7%上昇しているので、実際の金額の増加幅は少し異なります)。

2.年金の上昇はマクロ経済スライドで常に物価の上昇よりも低く

老齢基礎年金は原則、65歳から受給しますが、67歳までの人と68歳以上の人で金額の決め方が少し異なります。67歳までの人は「名目手取り賃金上昇率」を基に計算します。これは現役世代の賃金がどのくらい上昇しているかを表しています。68歳以降の人は物価上昇率を基に計算します。このため令和5年から67歳までと68歳以降で年金の金額が少し違います。ただし、名目手取り賃金上昇率よりも物価上昇率が高い場合は、どちらも名目手取り賃金上昇率に合わせて変動するようになっています。これによって、今年度はどちらも同じ上昇率となりました。
年金の金額の変動はこれだけでは終わりません。上記の計算で算出された値から、「マクロ経済スライド」による調整がなされます。
老齢基礎年金などの公的年金では基本的に、現役世代(被保険者)が支払う保険料を基にして、高齢世代に年金が支払われています。今の日本では、人口の減少で現役世代(被保険者)の人数が減少傾向にあります。それに伴い高齢世代に支払われる保険料の原資も減少しています。さらに、平均寿命の伸びとともに、高齢世代の人数は増加しています。ということは、年金を受け取る人が増えているということです。

現役世代⇒保険料⇒国⇒年金⇒高齢世代

現役世代が支払う保険料を引き上げるか、高齢世代が受け取る年金額を減らすかしないと、つじつまが合いません。そこで国は、平成16年(2004年)の年金改正で、高齢世代が受け取る年金額で調整することにしました。これが「マクロ経済スライド」による調整です。令和6年度(2024年度)は、この調整によって、名目手取り賃金上昇率から0.4%分、上昇が抑えられています。
この調整は今後も続けられていきます。調整幅は、年によって多少変わりますが、急に大きく変わるものではありませんので、名目手取り賃金上昇率や物価上昇率に対して、0.4%程度上昇幅が低くなります。今後も賃金や物価の上昇によって年金の金額は変動していきますが、これらに比べて年金の上昇率は常に「マクロ経済スライド」による調整分だけ低いというわけです。68歳以降の人にとって見ると、老齢基礎年金の金額は毎年、実質的に目減りしていくことになります。お勤めだった人が受け取る老齢厚生年金も似たような仕組みになっています。

3.NISAなどを活用して、長期・分散・積立投資をしていくとよいでしょう。

「金額は増えても、年金の価値は目減りしていく」と聞くと老後の生活が心配になるかもしれません。これからは、公的年金を頼りにしつつも、自分自身での備えも大切になっていきます。充実した老後が送れるように、十分な貯蓄や投資で備えていきたいものです。
その際に意識したいのが、物価上昇率を上回る運用を目指していくことです。昨今、物価は上昇していますが、預貯金の金利は低いままです。物価上昇率よりも低いということは、せっかく貯めた貯蓄が目減りしているということです。貯蓄の価値を維持するためには、物価上昇率を上回る利回りが欲しいところです。そのためには、株式や海外で運用する投資信託や保険商品での資産運用も検討していく必要がありそうです。もちろん、これらの商品には値下がりするリスクもありますので、貯蓄の多くを投資する必要はありません。価格が変動しても不安にならない範囲で、貯蓄の一部を充当すればよいでしょう。資産を大幅に増やす必要はなく、資産の目減りを回避すればよいからです。

大橋さまの場合、教育費の支出がすでに終わっていますので、これからは老後のために貯蓄をしていくことが大切です。介護などで支出が増える時期は、まだまだかなり先のことですから長期間の資産運用ができます。投資先を分散させると、リスクを抑えることができます。一度に資産をつぎ込むのではなく、少しずつ積み立てで投資していくとさらにリスクを抑える効果があります。NISA(少額投資非課税投資)などを活用すると、自然と長期・分散・積立投資ができます。充実した老後を迎えるためにご検討されてみてはいかがでしょうか。


年金がもらえるのが75歳からになるのですか?
定年後の延長雇用で働きながら年金をもらっても不利になりませんか?
老後の生活が心配です。必要な金額の確認方法や、自己資金の準備方法などアドバイスがほしいです。

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