もうひとり子どもが増えることで必要になる住み替え、 そして倍になる教育費、老後に備えるにはどうしたら?


もうひとり子どもが増えることで必要になる住み替え、
そして倍になる教育費、老後に備えるにはどうしたら?

臼井 悦子先生 (うすい えつこ) プロフィール
  • 高校までの教育費は生活費の範囲内に抑え、大学の学費を計画的に貯める。
  • 購入する住宅のローン返済額は、現状程度に抑える。
  • 家計を見直して貯蓄額を増やし、老後資金を準備する。

富山 花子さん(仮名)のご相談

子どもがひとりいますが、今年か来年中にあともうひとりほしいのです。

家族が増えると、住まいが狭くなるので6年後くらいに、住み替えをしたいと考えています。現在は、ローン残高が約1,300万円のマンションに住んでおり、毎月約7万円を返済中です。完済まであと27年あります。6年後に住み替えるとしたら、金額的に安い中古マンションか、小さい一戸建てを希望しています。金額は1,500万円から2,000万円が限度かと思っています。今のマンションは、2、3年前に売却の見積もりを取ったところ、1,300万円といわれたので、今はもう少し低めになっているかと思います。

子どもの教育費ですが、高校まで公立、大学は私立で、自宅通学を考えています。トータルで約980万円程度と見込んでいます。学資保険にも入っており、12歳と15歳のときにそれぞれ21万円、17歳で満期金200万円を受け取る予定です。もうひとり子どもが生まれたら、同じように教育資金を考え、トータル約2,000万円あれば問題ないでしょうか?

主人のリタイア予定は、あと12年後の55歳で、退職金は2000万円程度が見込めます。それから子会社等に移って再就職をし、65歳くらいまで働く予定です。私は子供が小さいので、現在職はもっていません。2人目が授かったら、働くつもりですが、収入はあまり期待していません。

住み替え分の住宅資金やローンを、どのくらいの予算で考えれば、私どもの老後の資金もある程度残しつつ、やりくりできるでしょうか?現在、貯金は300万円程度です。現在は、子どもひとりなら余裕をもった生活ができますが、2人となると、ぎりぎりか赤字になるかなと想像しています。夫の年齢もあるし、でも、兄弟はいたほうがいいし、正直、迷っています。どうか的確なアドバイスをよろしくお願いします。

富山さんのプロフィール

38歳、専業主婦。会社員の夫(43歳)と娘(2 歳)と同居中。
住居 : 持ち家(ローン返済中)
世帯年収 : 940 万円

家計の状況

《現在の所得と収支状況》

●毎月の収支
・税引き後収入(円)
383,000
0
合計 383,000

・支出(円)
費目 金額
食費 30,000
住居費 93,248
教養娯楽費 10,000
交際費 10,000
水道光熱費 25,000
通信費・交通費 8,000
こづかい 65,000
その他 83,992
保険料 37,760
旅行積立 10,000
デパート友の会 10,000
合計 383,000
●ボーナス(年間)収支
・税引き後収入(円)
2,000,000
0
合計 2,000,000

・支出(円)
費目 金額
英会話 300,000
レジャー被服他 160,000
帰省費 200,000
車積立 340,000
貯蓄 1,000,000
合計 2,000,000
●貯蓄残高(円)
金融商品名 金額
定期預金 3,000,000
合計 3,000,000

●貯蓄・金融資産 残高(円)

保険種類 被保険者 保険金 保険期間 保険料
学資保険 お子様 12歳、15歳時に21万円
17歳時に200万円
お子様
高校3年まで
1万円/月
逓減定期保険 ご主人 死亡保障 : 現在4,876万円
以降毎年212万円ずつ減
ご主人
60歳まで
2万7,760円/月

1600万円程度の住宅を購入し、老後費用を準備することは可能
ただし、家計の見直しは必要

もうひとりお子様を、と考えていらっしゃる富山様。ご主人の年齢を考えると、なるべく早く、と考えるのも無理はありませんね。人生の3大支出と言われる、住居費、教育費、老後費用を、ご主人がリタイアするまでに準備するには、努力と工夫がちょっぴり必要かもしれません。幸い、家計に余裕があるとのこと、見直す余地はまだまだありそうです。以下のアドバイスを参考に、ぜひ検討してみてください。

1.大学の教育費はひとりあたり、500万円程度を見込む

教育費は高校までと大学での費用とで分けて考えます。高校までにかかる教育費は、ふだんの家計収支の範囲内でやりくりするのが基本です。ここで、家計がマイナスになってしまうと、大学以降の教育費や、老後資金などが不足してしまう恐れがあります。教育費がかかりすぎるようなら、塾や習い事などを見直す、奥様が働くことで収入をアップする、などの対応が必要です。

大学での費用はまとまった金額になるため、大学4年間にかかる全額を貯蓄で準備するのは現実的ではありません。かかる費用の半分程度をそれまでに貯蓄で準備し、残り半分はそのときの生活費から支出します。私立文系、自宅通学の4年間でかかる費用はおよそ510万円。下の(図表1)にその内訳を紹介しています。一般に、教育費として紹介されている金額には、趣味・娯楽費などが含まれていますが、子どものアルバイトなどで賄うこともできるので、ここでは除いています。学資保険で200万円準備されている富山さんは、あと60万円程度を貯蓄で上乗せできればいいでしょう。一年あたり4万円程度を教育費用に取り分ければ準備できる金額です。大学在学中は、保険と貯蓄で不足する分のみを生活費から支出します。

ふたり目のお子様も同じように考え、毎年16万円(学資保険12万円、貯蓄4万円)を貯蓄や学資保険で準備します。そのため、現在の学資保険に加えて、毎年20万円をお子様おふたりの教育資金用として準備すればよいでしょう。在学中の教育費の負担に無理がないかどうかは、シミュレーションで最後にご紹介します。

(図表1)
●大学4年間でかかる費用

自宅 下宿
国立 345万円 695万円
私立文系 510万円 860万円
私立理系 665万円 1015万円

▼学費

受験費用 入学金・
授業料など
修学費・
課外活動費
合計
国立 20万円 240万円 40万円 300万円
私立文系 405万円 465万円
私立理系 560万円 620万円

▼住まいに関する主な費用

住居費・
光熱費等
通学費 食費等 合計
自宅 45万円 45万円
下宿 260万円 15万円 120万円 395万円

※文部科学省「私立大学等の平成19年度入学者に係る学生納付金等調査結果」
独立行政法人学生支援機構「平成18年度 学生生活調査」
東京私大教練「私立大学新入生の家計負担調査2007年度」

2.購入する住宅のローン負担は現状程度までに留め、65歳までに完済する

富山家で6年後に住み替えるとすると、いまのご自宅を売却して得たお金でローンを完済することになるかと思います。そのため、住み替える住宅の頭金は、これから貯蓄で準備していく必要があります。また、住宅ローンを返しつつ、教育費、老後資金を捻出することを考えると、毎月の住宅ローン返済額は現在とほぼ同程度の毎月7万円に抑え、ご主人がリタイアされる65歳までには住宅ローンを完済したいものです。その条件から借りられる金額を計算してみます。(図表2)は、借入期間・金利ごとの借りられる金額をまとめたものです。

(図表2)
●ローン返済を毎月7万円にすると、いくら借りられる?

※毎月返済のみ、元利金等返済でシミュレーション

この表から、たとえば金利4%で借りて、ご主人がリタイアするまでに完済と考えると、借りられる金額は約1,000万円。最後にご説明していますが、この時までに住宅の頭金として800万円程度が用意できるはずです。あわせると住宅資金に充てられるのは1,800万円、諸費用を考えると、住宅の購入価格は1,600~1,700万円を目安に考えるといいのではないでしょうか。入居前にリフォームなどが必要なら、その費用分だけ購入価格を抑えましょう。

実際には、購入するときの金利や、いまのお住まいの売却額などで、借りられる金額は変わってきます。無理をしてローンを借りると、お子さまの大学進学や老後資金に影響してしまいます。その場合は、購入を見送り、リフォームや住まい方の工夫で乗り切ることをお勧めします。

3.毎月の家計費から貯蓄3万円を捻出する

富山家では、教育費、住宅費、老後資金を比較的短い期間で準備しなければなりません。ですから、毎月の生活費からコンスタントに貯蓄できるかどうかが、ポイントになります。家計を拝見すると、貯蓄はボーナスから年間100万円を、車積立として34万円を貯蓄されているようです。利用目的が決まっている車購入用の34万円は貯蓄として考えず、いまのペースで貯蓄を続けたとき、貯蓄額がどのように変わっていくかを示したのが(図表3)の「年100万円」のラインです。なお、この貯蓄額100万円には、お子様ふたりの教育費積立20万円も含んでいます。

(図表3)

※以下の条件での貯蓄額推移(車購入分は対象外としている)。

  • ふたり目のお子様を2009年に出産。
  • 6年後の2014年に住宅購入の頭金として800万円を支出。
  • ご主人55歳で退職金2,000万円を受け取る。
  • ご主人65歳までの年収は現在と同程度とする。
  • おひとり目のお子様は、18歳で学資保険満期金200万円を受け取る。
  • お子様ふたりとも、生活費から毎年127.5万円を大学教育費として支出する(計510万円)と仮定。

年100万円の貯蓄では、住宅頭金800万円を支出後の貯蓄残高は100万円になり(ご主人49歳時)、最低確保しておきたい生活費3か月分を下回ってしまいます。さらに、ご主人66歳での貯蓄額は2,880万円と、 一般的に老後資金として用意したいと言われている3,000万円に不足し、少々不安が残ります。

そこで、貯蓄額を毎月3万円、つまり年間で36万円上乗せすると貯蓄額がどう変わるかを試算したのが、同じく(図表3)の「年136万円」のラインです。こちらでの貯蓄額は、住宅の頭金を支出した後で316万円、ご主人66歳で3,672万円とだいぶ余裕がでています。 このように、毎月少しずつでも積立をしていくことで、貯蓄額は増えるものです。住宅購入やお子様の大学進学においても選択肢が増えるかもしれませんね。

富山家の毎月の家計を拝見すると、まだまだ貯蓄額を捻出する余地はありそうです。たとえば、旅行積立、デパート友の会に積み立てている合計2万円を貯蓄にまわすことを検討しましょう旅行積立、デパート友の会は、利回りで考えるとおトクなのですが、利用目的が決まっており消費することは確実です。これは貯蓄とはいえません。優先順位を考えて、教育費や住宅費を先に確保することをお勧めします。あと1万円は、その他費用から捻出することを検討してみてください。

なお、ご主人の生命保険も見直す余地があるかもしれません。現在は、毎月の保険料2万7,760円で、60歳までの逓減定期保険に加入されており、現在の保険金額は約4,900万円です。けれど、教育費を学資保険で準備していること、住宅ローンには死亡時に支払われる保険金で完済される団体信用生命保険が一般的には付いていることから、死亡保障は3,000万~4,000万円程度にすることを検討されてもよいのではないでしょうか。さらに、掛け捨て型の保険なら保険料を安くすることもできます。参考までに、掛け捨て型の定期保険に、死亡保障4,000万円、保険期間20年で加入し直すと、毎月の保険料は1万8,520円になります。さらに加入後は保障額を見直し、保険金額を下げる「減額」を申し出れば、適切な保障額にでき、それ以降の保険料は安くなります。逓減定期保険でなくても、自分で減額を申し出ることで、ぴったりの保障額に見直せるのです。

ご夫婦の医療保障を準備するなら、死亡保障の保険とは別に加入することをお勧めします。現在加入中の保険に、入院特約が付いていたとしても、満期(ご主人60歳)になると、入院特約も終了するのがふつうです。保険料が割安で終身保障の保険もあります。たとえば、入院1日あたりの給付金額が5,000円、終身保障の保険で、60歳以降の保険料支払いが必要ないタイプでは、ご主人4,605円、奥様3,450円の月払保険料です。ご主人の死亡保障、ご夫婦の終身医療保障を、現在加入中の逓減定期とほぼ同じ保険料で備えられることになります。新しい保険商品は次々に登場しています。保険に加入した後も、時々見直してみるといいかもしれません。その際は、新しい保険の契約が保険会社から承諾されてから、加入中の保険を解約します。

富山家の住居費、教育費、老後資金が準備できるかは、コンスタントに貯蓄できるかどうかにかかっています。家計に余裕がある分、貯蓄は十分に可能だと思いますが、現在の生活の仕方などを見直すことは必要になるでしょう。はじめはちょっぴり大変かもしれませんが、少しずつでも貯めていけば、資金は確実に貯まります。ぜひ、楽しみながら、積立貯蓄を続けてください。