近く5000万円の一戸建ての購入を考えています 将来の相続税に備えて妻と共有名義にしたいのですが…


山下 和之先生 プロフィール
長らくマイホーム関連の不動産会社、金融機関、そして実際にマイホームを買われた一般の方々など、多方面の取材に携わってきた経験を生かして本音でお答えします。効率的なマイホームの頭金づくりから、ローン破綻に陥らないローンの組み方、少しでもトクする返済方法まで何でもご質問ください。

青木 剛さん(仮名)のご相談

土地・建物で5000万円ほどの一戸建ての購入を考えていますが、私に万一のことがあったときに相続税負担が出てこないかと気になっています。いったいどれくらいの相続税になるのでしょうか。妻は専業主婦なので税負担があると、とても払えそうにないので、できるだけ妻の名義分を多くして共有名義で買おうと思います。妻名義の預金500万円に加えて、やはり妻名義の5年後に満期になる保険証券があるので、それを担保に私が妻に500万円貸すことにして、合計1000万円分を妻の名義にしたいと思っています。実際には固定資産税などは私が払うことになりますが、贈与税の対象になったりしないでしょうか。

青木 剛さん(仮名)のプロフィール

39歳会社員。専業主婦の奥様(37歳)と2歳の子どもの3人家族

青木さんの相談のポイント

  • 5000万円の一戸建ての相続税はどれくらいか
  • 専業主婦でも共有名義にすることはできるか
  • 夫が妻に500万円貸したとき、贈与税の扱いは?

居住用の住宅なら相続税は大幅に軽減されます 5000万円の一戸建てなら基礎控除内にとどまるでしょう

相続人2人なら基礎控除は7000万円

奥様やお子様の行く末まで心配される青木さんは思いやりのある方なんですね。けれども、そんなに懸念される必要はないと思います。まず相続税には基礎控除があり、5000万円+法定相続人1人につき1000万円が控除されます。奥様と一人のお子様が相続される場合には、基礎控除は7000万円になります。相続する遺産総額から7000万円を差し引くことができます。7000万円までなら相続税はかからないということです。5000万円の家なら、基礎控除の範囲ですから、そのほかに大きな財産がない場合には、相続税の心配はないわけです。

相続時精算課税制度なら贈与税は非課税に

しかも、不動産に関しては購入価格が相続税評価額になるわけではありません。居住用の住宅の場合には、土地は路線価×面積の評価になりますが、その上で一定の条件を満たす場合には、240?までの敷地に関しては80%の減額になります。つまり、路線価で計算した金額の2割が相続税評価額になるわけです。また、建物に関しては固定資産税評価額が相続税評価額ですが、経過年数が長くなれば固定資産税評価額は下がってきます。購入後20年、30年先の相続であれば、まず購入価格の半分以下に下がっているとみていいでしょう。ですから、あくまでも一つの例ですが、5000万円で買った一戸建てであっても、下にあるように1500万円程度の相続税評価額にとどまることが多いのです。

相続税は累進税制で各相続人に按分して計算

青木さんの場合にはほとんど心配はないと思いますが、念のため遺産総額が基礎控除枠を超える場合の相続税額の計算方法を紹介しておきましょう。速算式は下にある通りですが、実際の税額計算は相続人の相続額に按分して計算します。たとえば、課税価額が8000万円で、2人の相続人が4000万円ずつ相続する場合には、それぞれ4000万円×0.2-200万円の計算式で600万円ずつ、合計1200万円の相続税になります。これが3人での相続だと、下の例にあるように合計1100万円に減少します。

贈与するなら配偶者特別控除が得策

以上の点を踏まえれば、いまあわてて保険証券まで利用して奥様の持ち分を多くしようとするのはどうでしょうか。借用書を交わして奥様がご主人から借りる形をとっても、実際にはご主人の収入から返済され、奥様の持ち分に対する固定資産税などの支払いもご主人の収入からなされるのは明白です。それは年間110万円の贈与税の基礎控除の範囲内といっても通用しないと思います。500万円は購入時の贈与とみなされ贈与税の課税対象にされかねません。ですから、まずは奥様名義の預金の500万円分だけの持ち分にして、将来「配偶者特別控除」を利用して奥様の持ち分を多くする方法をとられてはどうでしょうか。これは、婚姻期間が20年以上の夫婦が利用できるもので、2000万円までの非課税枠が設けられています。贈与税の基礎控除110万円と合わせて2110万円まで非課税で贈与できる制度です。自宅か自宅の購入資金の贈与が対象ですが、これなら、無理なく奥様の持ち分を増やすことができます。それまでは健康に気をつけてガンバってください。

相続税の基礎控除

5000万円+1000万円×法定相続人の数

例:妻と子ども2人で相続する場合には5000万円+1000万円×3=8000万円までは控除される

居住用不動産の相続税評価

  • 土地は路線価×面積
    ただし240?未満の居住用の土地の場合には80%減額
  • 建物は固定資産税評価額

例:土地2000万円、建物3000万円の相続税評価
土地 路線価10万円×150?×0.2=300万円
建物 固定資産税評価額1200万円
合計 1500万円

相続税の税額計算早見表

課税標準 税率 控除額
 1000万円以下 10% ――
 3000万円以下 15% 50万円
 5000万円以下 20% 200万円
 1億円以下 30% 700万円
 3億円以下 40% 1700万円
 3億円超 50% 4700万円

例:課税価額8000万円(妻4000万円、子ども各2000万円ずつ相続)
  妻の相続税 4000万円×0.2-200万円=600万円
  子どもの相続税 2000万円×0.15-50万円=250万円
  合計600万円+250万円+250万円=1100万円

上記のように、相続税評価額は相場に比べると格段に低くなります。現金類などのその他の資産はその金額のままの評価になりますが、それも1000万円程度ということですから、まず問題はないでしょう。ただ、多額の生命保険に入られているようだと課税対象になる可能性があります。生命保険の場合にも控除がありますが、こちらは500万円×法定相続人数が非課税になります。相続人が二人の場合には1000万円までは非課税ということで、それ以上の金額は相続税評価額に加えられます。それの合計が7000万円を超える場合には注意が必要です。