目次
消費税アップが決まり、今は住宅の買い時?
家族が増えることへの準備はどうすればいい?
鈴木 暁子先生 (すずき あきこ) プロフィール |
|
富塚 真由美さん(仮名 30歳 会社員)のご相談
来年春に第1子が生まれる予定の夫婦です。何年かのうちに住宅購入を考えていましたが、消費税のアップも決まり、現在の低金利と併せて考慮しても今が買い時と思っています。タイミングとして問題ないでしょうか?
その際、本音としては変動金利を選びたいのですが、「金利上昇リスクが怖いなら固定のほうがいい」と友人から言われました。
また、子どもが生まれることで保険の見直しも必要になると思いますし、教育費のことなど考えなければならないことが多く心配です。
富塚 真由美さん(仮名 30歳 会社員)のプロフィール
|
慌てて購入すると、消費税アップ分よりも
金利負担の方が重くなる可能性も
金利負担の方が重くなる可能性も
1. 怖がってばかりでは、確かにソンをすることも
富塚さん、こんにちは。第1子ご誕生が待ち遠しいですね。新居のご購入を検討されていらっしゃるということで、まずは永遠のテーマともいえる金利タイプ選択のご質問です。
変動金利と固定金利では、ご存じのように変動の方が低く設定されています。それゆえ元金が大きい住宅ローンの場合はやはり変動金利を選択したいと思う方がほとんどです。しかし変動金利の場合、今後30年程度の期間、現在の金利水準が続く保証はないため、金利上昇リスクを考えると長期固定金利を選択する方も少なくありません。
2006年、5年4カ月ぶりにゼロ金利が解除された時、長期固定金利を選択する人が一気に増えたのは記憶に新しいところです。しかしその後金利は上昇するどころか再び下がり、今日までの金利負担を考えれば、変動金利を選択していた方のほうがずっとトクをしています。
「金利上昇リスクが怖ければ、固定金利を選ぶ」いうのは間違いではありません。しかし今後もしばらく金利がグングン上昇するとは考えにくく、固定金利との金利差を考えると「金利上昇のリスクがあるから変動金利を避けるべき」と一概には言えないと考えます。
ちなみに、金利が上昇したら固定金利に借り換えれば良いと考える方も多いですが、その頃には固定金利も上がっていますので、それほど意味がある対応とは思いません。
変動金利のリスクとは、金利上昇により金利負担が大きくなり、返済が難しくなることです。つまり金利上昇があったとしても、それに対応できるのであればリスクと向き合うことも可能です。では一緒に考えてみましょう。
変動金利でも大丈夫なのはどういう方でしょう?
- 借入額が少なめ
- 借入期間が短め(15年程度)
- 収入が安定している
- 教育費の目途が立っている
- 金利上昇があっても元本が減らせる ← 繰上げ返済できる(貯蓄が多い)
親の援助が期待できる - 固定金利との差額を貯蓄できる(固定金利で借りていたのと同様の効果)
このようなタイプの方であれば、変動金利を検討する余地があります。これから物件を検討する富塚さんご夫妻も、この点を意識してください。
共働きですし、現状で1,000万円貯蓄できているのですから、まだお子さんが小さいうちにしっかり貯蓄をしていくことは可能だと思います。
商品を見ていくと、金利をあらかじめ公表してくれるタイプや、預金連動型(預金している金額と同じ額のローン借入金には金利がかからない)など、変動金利でも対応しやすい住宅ローン商品もあります。また金融機関によって金利もさまざまです。しっかり比較検討することが重要です。
ただし注意したいのは、「消費税アップを控えているので、今が買い時」というご判断です。もちろん消費税アップが影響あることは間違いありませんが、変動金利を選択したいのであれば、上記の条件からみても頭金など十分な準備ができないまま購入してしまうほうがよほど危険です。消費税の影響は購入時1回ですが、借入金にかかる金利はずっと続きます。
貯蓄の1,000万円をすべて頭金に回すわけにはいきません。万一の際の緊急予備資金を取り分けた上で、頭金に充当できる十分な貯蓄ができないと、結局借入額が大きくなり、
消費税アップ分<金利負担分
となります。少なくとも現状の富塚さんの家計では、消費税アップを理由に「今が買い時」とお勧めはしません。
現在は住宅ローン減税はじめ、新築住宅の固定資産税や登録免許税の減額、不動産取得税の特例など、さまざまな優遇措置があります。消費税だけにとらわれず、世帯のライフプランや資金プランから買い時を見つけましょう。
2.家族が増えれば必要保障額は増えます。 奥様も家計の一端を担っているので、一定の保障は確保を。
富塚さんご夫婦の現在の死亡保障を見てみましょう。
【現在加入中の生命保険】
夫死亡保障:300万円(終身)
夫死亡保障:1,000万円(10年定期)
妻死亡保障:300万円(終身)
DINKSであれば、これでもかまいませんが、お子様が生まれると必要保障額は大きくなるため、保険の見直しが必要です。考え方としてはお子様が成人するまでの教育費、生活費分をご主人様の死亡保障に上乗せする形で良いですが、現在は一般的な定期保険なので、収入保障保険に見直してみましょう。もちろん、住宅を購入した場合は、ご主人様に万が一のことがあっても住宅ローンの残債を肩代わりしてくれる、団体信用生命保険への加入は言うまでもありません。
支払われる保険金額のイメージ
収入保障保険は、必要な保障(特に万一の際以後の教育費)はお子様の成長に伴って減っていくため、支給される保険金もそれに伴い少なくなっていく保険です。ご覧いただくとおわかりのように、保険金額の面積が一般的な定期保険より小さいですよね。つまりその分割安な保険料で済みます。保険金はお給料と同じように毎月支給されるので、生活設計がしやすいと人気があります。
保険の活用としては、お子様の教育費の一部を学資保険などで準備しても良いでしょう。現在は予定利率も低めではありますが、それでも銀行の預貯金利よりははるかに高く貯蓄性の面で有利です。
最近は一時払い終身保険に加入し、規定の短期解約期間を経過後、解約返戻金を教育資金準備に充てるケースもありますが、富塚さんの場合は、貯蓄は住宅購入の頭金にまず充てたいので、無理な一時支出は避けたほうが良いでしょう。
また同時に真由美さんの死亡保障も増やした方が良いと考えます。なぜなら、真由美さんに万が一のことがあった場合、お子様が小さいうちは日中お子さんの面倒を見てくれる人が必要だからです。誰か、あるいはどこかにお願いしなければならなくなります。最近問題にもなっていますが、すぐに保育所に入所できない場合もあります。仕事の関係で延長保育、夜間保育、休日保育といった特別の保育が必要で、認可保育所でそのようなサービスが得られない場合には、認可外保育施設を利用することになります。やや古いデータではありますが、「子育てコストに関する調査」(平成17年度の国民生活白書)によると、認可外保育施設の平均月極契約利用料は3~4万円程度、ベビーホテルで4~5万円程度と大きな負担となるのです。奥様のご実家でサポートが受けられるとしても、300万円程度の上乗せを検討してみてください。
3.まずはご夫婦で世帯のライフプランをイメージしていきましょう。
共働きで世帯収入が多めですので、これまで浪費をしなければ貯蓄もできましたし、生活を楽しむゆとりもあったかと思います。
しかし家族が増え、住宅取得も考えると、いわゆる三大資金の2つが重なることになります。真由美さんはお仕事を続けていかれる予定ですので、それは富塚家の家計にとって非常に大きな支えとなりますが、事情によって退職せざるを得ないおそれもゼロではありません。
共稼ぎ世帯では、今の家計が続くものと思いがちですが、真由美さんの収入がなくなったとしても生活が立ち行かなくなることが無いよう、まずはご夫婦でライフプランを話し合い、将来の収支をイメージした上で、三大資金をバランス良く準備するようにしてください。
これから寒くなっていきます。体調にくれぐれも気をつけてお過ごしください。