第15回:自費出版


最近、シニアを中心に自費出版が人気を集めています。自分の思いや考えなどを書籍という形で、不特定多数の人に伝えたいという思いを持つ人は多いでしょう。そして、何より自分の作品が書店に並ぶことは何よりの喜びでしょう。しかし、「お金を出してでも作品を書店にならべたい」という純粋な気持ちを逆手にとったビジネスにより、トラブルも急増しています。そこで今回は「自費出版」の失敗事例をご紹介したいと思います。

「自費出版」という甘い響きにだまされて・・・・

島野さんは61歳の男性です。昨年で退職し現在は無職です。サラリーマン時代からずっと自分の本を出したいと思っていながら、会社の仕事が忙しくて時間が取れませんでした。

さて、そんなある日、自費出版社が主催したコンテストに応募しました。残念ながら結果は落選でしたが、その出版社から「結果は大変残念だったのですが、表現がすばらしく、発想がとてもユニークで非常に良い作品でした。このままにしておくのはもったいないので、是非本にしたらどうでしょうか」と誘いを受けました。

その出版社の営業マンからは「才能のある人を世の中に発信するお手伝いをするのが私たちの仕事であり、これまでにベストセラー作家を輩出したこともある。その中でもあなたの作品はとても優れており、もし必要であれば是非力になってあげたい。うちの会社は全国に協力書店があるので、日本全国で有名になることも夢ではない」と言われて島野さんは褒められてすっかりその気になってしまい、出版社に500部の契約で200万円を支払うこととしました。

予定表には約6ヶ月で完成することになっていたのですが、半年経っても出版社から連絡がありません。不安になって問い合わせてみると、何も手配がなされていないことが判明し、結局出来上がったのは10ヶ月後。しかも、全国の書店で販売されていると出版社は主張するものの、どこに何部置いているかはいくら尋ねても教えてくれませんでした。会社人生が終了した後、第2の人生を歩むために退職金の一部をつぎ込んだのに、詐欺にあった気分で後悔している、と島野さんは悔しい思いでいっぱいです。

自費出版のトラブル件数

自費出版に関するトラブルは急増しています。以下の図をご覧ください。

国民生活センターに届く相談件数は右肩上がりで増えています。
また、実際に国民生活センターに相談された方の内訳は以下のとおりとなっています。(平成19年11月9日「自費出版に関する相談」記者説明資料より抜粋)

年齢層に大きな偏りはありませんが70歳以上が21%で一番多く、60歳以上と合わせると全体の1/3を超えることになります。また男女別の割合を見ると、女性からの相談が63%と、2/3近くを占めることが多くなっています。

また、主な問い合わせ内容は以下のとおりとなっています。

1.契約時の金額の内訳が不明瞭の場合がある

2.本の出来上がりが約束どおりのスケジュールでない
3.契約の履行状況が確認できない

1.契約時の金額の内訳が不明瞭の場合がある
契約金額に含まれている内容が見積もりに記載されていなく、例えば「本の印刷費用」「販売のための営業費用」あるいは「添削サポートの費用」の内訳がわからないケースがあります。また、事業者からは「共同出版」といわれている場合でも、実際に事業者がいくら負担しているのかが見えない場合があります。さらには内訳が不明瞭のため、解約になった場合にいくらが返金対象になるのかがわからない場合もあります。

2.本の出来上がりが約束どおりのスケジュールでない
例えば6ヵ月後に本が仕上がる予定であったとしても、本が仕上がらないというクレームが多く、ひどい場合は消費者が連絡するまで何も連絡が来ない、あるいは連絡してみたら作業がまったく進んでいないというケースもあるようです。

3.契約時の履行状況が確認できない

契約部数がきちっと印刷されているのか、あるいは書店が本屋に並んでいるのかがわからない場合があります。この場合、消費者が事業者に問い合わせをしても納得できる説明が得られなかったというケースが多いようです。

このように消費者の作品に対して褒められ、感情的に高ぶってしまうと冷静になれず、結果として以上のようなクレームにつながってしまうようです。なかには新聞で広告を見て問い合わせをして事業者に出向くと、「今決めてください」と強引に契約を迫る事業者もいるなど、モラルの低いと思われる事業者が多いといえそうです。

失敗を防ぐためには

自費出版業界では「契約書を作成しない」あるいは「費用などの重要事項説明をしない」など、不透明な契約をする業者が多いこともあるのは事実ですので、自己防衛が重要になってきます。複数の事業者から見積もりを取り、金額や契約内容をよく確認し、信頼できる事業者を選ぶようにしましょう。それから、作品を褒められて気持ちが高ぶったとしても、冷静な気持ちを忘れないようにすることも重要です。

そして最後に、本当に自費出版の必要性があるかどうかをもう一度自分で確認しましょう。知人に配るだけならば自費出版で100万円もかける必要はありません。全国で自分の本を流通させたい気持ちはわかりますが、本当にそれが必要なのかどうかを契約前にもう一度自問自答しましょう。

執筆:坂本光(さかもと ひかる)CFP
一級ファイナンシャルプランナー・CFPR、日本キャリア開発協会認定キャリアカウンセラー、日本応用カウンセリング審議会認定心理カウンセラー。2006年5月週末起業を決意し、通信事業者に勤務しながら合同会社FPアウトソーシング代表を務める。ファイナンシャルプランニングに関する個別相談・セミナー講師としても活動中。

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