第1回:ワンルームマンション投資

Pocket
Facebook にシェア
LINEで送る
このエントリーをはてなブックマークに追加

ここ数年、ワンルームマンション投資が盛んになってきています。特に最近では、年金に対する国民への不安が広がり、自分の老後を考えたときに年金の収入だけでは頼れない、そんな思いからマンション投資を始める人も少なくないようです。果たしてこのワンルームマンションは本当に年金を支えてくれる救世主となり得るのでしょうか。

ここでは実際にあったワンルームマンションの失敗例から、気をつけるべき点は何なのかを学びたいと思います。

将来の年金に不安な日々の木村さん

木村さんは現在30歳。日ごろからニュースに興味を持っており、最近では年金の不安を解消するかが自分のテーマでした。木村さんは将来自分が年金をもらえるときには十分なお金をもらえるのであろうか、そんなことを考えているとある日、ワンルームマンションの営業マンから電話が入りました。将来にわたって安定した収入が得られるので、年金に不安を持っている人にはピッタリの商品とのこと。概要は以下の通りです。

【ローン計画】
-2250万円のうち、頭金は250万円。2000万円をローンで支払い。

【木村さんの収支】
-収入・・・毎月10万円の家賃収入
-支出・・・ローンが毎月8.5万円。管理費その他諸経費が1.2万円。計9.7万円。

-収支・・・毎月3,000円(つまり年間36,000円)の黒字。
-その他・・住宅ローン等の必要経費による節税効果が年間約15万円。

【営業マンからの説明】
-借金をしていても家賃収入が入るため、キャッシュフローは黒字。
-ローンを完済した後は、家賃収入を年金がわりに受取ることができる。
-ローン等は必要経費が認められるため、所得税・住民税の節税効果が得られる。
-不動産はインフレに強いため、将来売るときは値上がりも期待できる。
-低金利時代だからこそ、レバレッジ(てこ)を利かせるには今がチャンス。

「不動産に関してはサラリーマンの私は素人だし、そんなうまくいくのかな」と躊躇しましたが、「サラリーマンは現在収入があって安定しているからこそ、銀行がお金を貸してくれるのであり、また副業としても最適ですよ。」という力強い営業マンの言葉に後押しを受け、ワンルームマンションのオーナーになることを決意しました。

上々の滑り出し、でも途中から雲行きが。

いよいよワンルームマンション経営がスタート。入居者が見つかるか心配でしたが、すぐに借り手は見つかり一安心。順調に家賃収入が毎月10万円ずつ入ってきます。毎月の収支は3,000円(年間で36,000円)と、採算ギリギリのラインですが、それでも頭金の250万円に対する年間36,000円の収入。利回りにして約1.5%ですので、銀行に預けるよりよっぽどマシです。更には銀行からの借入れや、マンションの減価償却費などが必要経費として認められるため、確定申告により税金が還付される節税効果の15万円を合わせると実質的な利回りは約7.4%。このまま順調に行けば、将来はマンションオーナーとして、毎月10万円の収入が年金とは別に受取れるということで、友達にも自慢をしていました。

ところが、2年を経過するとある問題が発生しました。入居者が出ていくこととなり、なんと次の入居者がなかなか見つかりません。当初は新築ということもり、10万円でも入居してくれる人は見つかったのですが、周辺の賃貸相場を調べてみると、実は93,000円が相場であることがわかりました。入居者が出て行くことさえなければ、10万円の家賃がコンスタントに入ってくるはずだったのですが、空き家になってしまっては家賃を誰も払ってくれません。一方で、そんな事情など関係なく、ローンは毎月支払わなければならないのです。慌てて7,000円値下げの93,000円で、ようやく借り手が見つかりましたが、毎月の収支は毎月3,000円の黒字から、一気に毎月4,000円の赤字に転落。しかも、次の入居者が入るまで2ヶ月かかってしまったので、2ヶ月分の家賃20万円は丸々損をしてしまい、節税効果分を考慮してもその年は赤字となってしまいました。しかし、木村さんには他にも気になることがありました。

金利が0.5%上がると、毎月5000円ローンの金額が上がってしまうことに気付いたのです。その場合は、毎月約1万円のマイナスとなり、節税効果の分を含めても、ほとんど利益は出ないことになります。しかも、今後は金利が0.5%よりも上がる可能性もあります。30年先の将来の年金が不安ではじめたマンション投資ですが、そのことが原因で逆に新たな不安を抱えるようになってしまったというのは皮肉としか言いようがありません。これでは本末転倒だと思い、木村さんは売却を検討しました。

ところが、そこで驚くべき事実が判明したのです。

マンションを売るに売れない悲劇

不動産屋さんに、いくらぐらいで売れるのかを聞いてみたところ、なんと1,500万円。当初の価格が2,250万円なので、750万円の値下がりです。しかも、1,500万円でも買い手が見つかるかどうかわからない、といわれてしまいました。住宅ローンは、まだ1900万円ほど残っています。

さすがに木村さんはショックを受けてしまいました。つまり、1500万円で売れたとしても、ローンの残額が1900万円あるので、処分しようとしても400万円が追加で必要となってしまいます。

昔あった250万円の貯金は頭金で使ってしまったため、今は400万円のお金を支払うことはできません。今は毎月4千円の損を出しながら、いつ金利がまた上がるのか、入居者が出て行ってしまわないか、など心配のタネは尽きません。

ワンルームマンションの購入するときのポイント

(1) マンションの物件の下調べを入念に

一口にワンルームマンションといっても、利益を上げられるかどうかは物件ごとに大きく違います。そのため、まずは物件の下調べを入念に行う必要があります。以下の4点は必ずチェックしましょう。

  • 周辺の家賃相場
  • 物件の間取り
  • 駅からの距離
  • 需要が見込める地域かどうか

数千万円の投資を行うわけですから、投資する価値があるかどうかを調べるのはとても重要なことなのです。

ところが、意外と自分がどんな物件に投資をしているのかをよく把握していない人が多いのが実態です。自分の投資するワンルームマンションの周辺相場や物件の間取りを知らない、あるいは見に行ったことがない、などという人は論外です。

(2) 新築マンションの特徴をおさえましょう

新築の場合はプレミア感があるので、入居する人を見つけるのもそれほど難しくありませんが、次の入居者を探す場合には新築のときよりは見つけるのが難しいでしょう。そのためにも、周辺の賃貸相場をしっかりと調べておくことは重要なことなのです。

また、新築時のマンションの価格よりも中古となったマンションが売却時に高くなっているかもしれない、という期待を抱くのは禁物です。というのも、一般的な話として、新築マンションの価格は人が住んだ瞬間に少なくとも2割程度は下がるといわれているからです。したがって、マンションを売却する際に値上がりをするケースは、その物件が非常に魅力的か、あるいはインフレなどの要因によりマンション価格が上昇しない限りは難しいのが現状です。売却益が出るところか、今回の木村さんのように、不動産の売却価格よりもローン価格が上回っているため、売るに売れないというトラブルは非常に多いのが実情なのです。

(3) 借りる際の金利に気をつけよう

特に現在は低金利時代なので気付きにくいのですが、日本では過去20年の住宅ローン金利の平均は4%であり、いつまた4%に戻ってもおかしくありません。また、過去に3年間で3%も上昇したこともあることを考えると、「住宅ローン金利は上昇する」可能性は十分にあることを考える方が無難です。

したがって、例えば最初の3年間の優遇金利に魅力を感じて変動金利型を選択した場合には、将来金利上昇のリスクがあることを充分に認識する必要があるのです。

マンション投資は「投資の初心者」向け商品ではありません

マンション投資は、毎月の収入が安定して得られることが期待できるため、年金を補うための有力な手段ではあります。しかしながら、物件によって個別性がとても強いので、「良い物件」を見極める力があるかどうかがとても重要になります。

また不動産市場は流動性が低いという特徴があります。つまり、株式投資は上場株であれば損をしても証券市場で売ることができますが、不動産は買い手を見つけるのが大変ですので、安くしても買い手が現れない限り売ることができないというリスクがあります。

普通のサラリーマンで、借金をして株式投資をしている人はあまりいないでしょう。理由は明白で、「借金をしてまで株式投資を行うには、サラリーマンにはリスクが大きすぎるから」です。ところが、ローンでワンルームマンション投資を行っている人は、「借金をして株式投資をしている」のと同じなのです。しかも、金額は数千万円規模と膨大であり、かつ株式投資の基本である『分散投資』とは対極にある『1点集中投資』なのです。

つまり、ワンルームマンション投資は投資の初心者が気軽に始めるようなものではなく、十分にリスクを把握し、事前調査を入念に行った上で購入することが大切なのです。

執筆:坂本光(さかもと ひかる)CFP
一級ファイナンシャルプランナー・CFP®、心理カウンセラー。2006年5月週末起業を決意し、通信事業者に勤務しながら合同会社FPアウトソーシング代表を務める。ファイナンシャルプランニングに関する個別相談・セミナー講師としても活動中。