第20回:たばこの値段【子供に話すお金の話】


最近、「たばこの値段が1箱1000円まで値上がりするかもしれない」という話が国民の間で話題になっています。きっかけは、一部の自民・民主両党の国会議員が協力して「たばこと健康を考える議員連盟」をつくり、「一箱1000円」を合い言葉に、たばこに対する税金を上げようと検討し始めたからです。今現在、たばこ1箱の値段は300円前後ですので、1箱1000円が実現するとなんと3倍以上の値段になってしまいます。では、なぜたばこの値上げが議論されているのでしょうか。そこで、今回はたばこの値段について考えてみたいと思います。

たばこにはたくさんの税金がかかっている

たばこには、たくさんの税金がかかっているのをご存知でしょうか。
以下の図をご覧下さい。

なんと、たばこの値段のうち60%以上が税金であり、つまりたばこを吸う人はたくさんの税金を支払っていることがわかります。ちなみに、車が走るときに必要なガソリンにも税金がかかっていますが、こちらは53.8円/l。今現在、レギュラーガソリンの価格を160円/lとすると、ガソリン税は約33%。このことからもタバコの価格は税金の割合がいかに高いかがわかります。

それでも値上げ!?タバコの値段

ただでさえ税金の高いたばこ。しかし、それにも関わらずなぜもっと税金をかけて値上げしようとしているのでしょうか。以下の3つを中心に理由を考えてみましょう。

  • たばこの値段は、外国と比較するとまだ安い
  • 国民全体の健康促進
  • 国の財政が厳しい

1.たばこの値段はまだまだ安い

たばこの値段は、実は諸外国はとても高いのです。以下の表は国別のマルボロ1箱あたりの小売価格です。

マルボロ1箱あたりの小売価格

シンガポール 925円
東京 320円
ソウル 320円
北京 235円
ニューヨーク 880円
ロンドン 1300円
パリ 880円
シドニー 1100円

以上の表を見ると、イギリスが一番高く約1,300円。フランスやアメリカなどの欧米諸国やオーストラリア、シンガポールなどでも軒並み1,000円前後となっています。日本は320円ですから、諸外国と比較すると1/3ぐらいの値段であることがわかります。

たばこの値段をあまり安くすると青少年が気軽に買えてしまうため、値上げをするべきだという声も一部にあり、実際に国際条約である『たばこ規制枠組条約』では「青少年や様々な人がタバコを吸わないようにするため、たばこに税金をかけることを推奨する」と書いてあります。この条約に日本は2004年に賛成することを決めているため、そのことも「1箱1000円に値上げをすべき」という一つの理由となっています。

2.国民全体の健康促進のため

たばこを吸うことは当然体には良くないことですが、これは吸う人だけでなく吸わない人にとっても体に良くないことが分かっています。たばこの煙には、本人が吸う主流煙と、たばこの先から出る副流煙の2つがあります。主流煙は、フィルターを通して煙を吸いますが、副流煙はフィルターを通さないまま大気に出るため、主流煙に比べて高い濃度の有害物質が含まれています。実際にこの副流煙を学生が吸った場合、記憶力や判断力が低下し、また妊娠している女性が吸った場合にはお腹の中の赤ちゃんにも影響が出ることがわかっています。つまり、自分自身がたばこを吸わなくても、周りにたばこを吸う人がいれば、健康上の被害を受けてしまうのです。

したがって、国民全体の健康促進という観点から言えば、国民全体としてのたばこの量を減らすということは重要であり、そのために税金を上げるべきだという理由となっています。

3.国の財政が厳しい

日本の財政は、年々厳しくなってきています。以下の図をご覧下さい。

日本の借金残高

■平成19年度財政状況
内容 収入 支出
税収等 57兆円  
国債費   21兆円
一般歳出   47兆円
地方交付税等   15兆円
合計 57兆円 83兆円
公債金収入 26兆円
国の借金残高 834兆円

日本の借金は年々増え続けており、10年前には355兆円だった借金も2007年現在では834兆円となり、2倍以上になっています。ではなぜ借金は増えるのでしょうか。

2007年度の国の決算を見ると、毎年税金などにより入ってくる国の収入は57兆円なのに対し、使うお金は83兆円。差し引き26兆円が足りない計算になります。そこで、なんとかして税金を上げて国の収入を増やし、一方で使うお金は減らしたいと政府は考えています。

そこで、まずはたばこの税金を上げることにより、国の収入を増やすのが一つの目的です。ただし、1箱1,000円にした場合でも、国の収入が増えるかどうかはわかりません。なぜなら、1箱1,000円はあまりに高いので、禁煙をしようという人が大幅に増えることも予想されるからです。1箱1,000円にした場合のシミュレーションでも、計算する人によって税収が増えると予想する人もいれば減ると予想する人もいるため、税収が増えるかどうかはよくわかりません。

しかしながら、国の支出を削減するという観点から言えば、医療費削減にある一定の効果はあると思われます。実際に、アメリカのカリフォルニア州では、たばこ規制を行ったことにより15年間で約9兆円の医療費削減に成功したというデータもあります。ちなみに、日本では少し古い1998年データになりますが、医療経済研究機構の調査によると、たばこが原因で増えている1年間の医療費は全体で約1兆3千億円。喫煙する人が減ると、その分医療費は削減されると考えられます。つまり、1箱1,000円というお話は、国の税収が増えなくても、支出を減らせる要因になりますので、一定の効果が期待できるということが言えます。

喫煙する人は減り続ける傾向に

たばこを吸い続ける人口はどんどんと減っていく傾向にあり、厚生労働省が発表した過去40年のトレンドは以下の図です。

■たばこを吸い続ける人口

たばこを吸い続ける人口

これを見ると、40年前は成人男性の80%以上、つまり10人のうち8人はタバコを吸っていた計算になります。ところが、健康や環境への影響、たばこを吸わない人への迷惑への声が大きくなってきたことなどから、喫煙人口は減り続けています。税金による値上げ以外にも、たばこを自動販売機で買うためには「タスポ」が必要となるなど、まさにたばこを吸う人にとっては今後ますます受難の時代を迎えることになりそうです。

執筆:坂本光(さかもと ひかる)CFP
一級ファイナンシャルプランナー・CFP®、日本キャリア開発協会認定キャリアカウンセラー、日本応用カウンセリング審議会認定心理カウンセラー。2006年5月週末起業を決意し、通信会社に勤務しながら合同会社FPアウトソーシング代表を務める。ファイナンシャルプランニングに関する個別相談・セミナー講師としても活動中。

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