第12回:紙幣と国債の関係

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日銀券ルールとは?

日銀は、「保有する長期国債の残高は、世間に流通するお札の総額である銀行券(=発行銀行券)発行残高を上限とする」というルールを掲げていました。それが銀行券ルールです。
日銀は2013年4月の金融政策決定会合で、「銀行券ルール」の一時停止を決めています。その理由は積極的な国債買い入れを進めるのが目的だったと思われます。

もともと日銀は、経済成長に伴うお金の需要の増加に対応するため、長期国債を買い入れ、市場に資金を供給していました。ただ、中央銀行が無尽蔵に国債を買い増すと、財政赤字の穴埋め、いわゆる「財政ファイナンス」だと市場から見なされる可能性があります。

市場参加者が急激なインフレや財政破綻に対する警戒感を強めれば、長期金利は急上昇します。そのため日銀は、「保有する長期国債の残高は、世間に流通するお札の総額である銀行券(=発行銀行券)発行残高を上限とする」というルールを掲げていました。

しかし、デフレや景気低迷が続く中で日銀は、2010年に金融緩和の一環として新たに「資産買い入れ基金」を導入しました。この基金を通じて買う国債は銀行券ルールの範囲外、という位置付けにしてしまいました。

日銀は、基金買い入れ分も含めれば2012年末で89兆円の長期国債を抱えています。発行している銀行券は87兆円で、長期国債の総額の方が大きくなってすでに銀行券ルールは有名無実となっており、エコノミストの間からも「日銀ルールは不要だ」との声が高まっていました。

黒田総裁による新たな金融緩和策では、「資産買い入れ基金」を廃止し、国債の買い入れの枠組みを一本化します。国債の大胆な買い増しも考慮し、銀行券ルールの「一時適用停止」方針を決めました。大胆な国債購入には不可欠な決定でしたが、今後日銀の金融緩和が財政赤字の穴埋めだと見なされれば、金利上昇のリスクが顕在化すると思われます。政府は日銀と決めた共同声明で、「持続可能な財政構造を確立するための取り組みを着実に推進する」と約束はしています。銀行券ルールの一時停止が悪影響を及ぼさないように、政府は財政規律の確保が不可欠になっています。

足枷が外れた日銀は2001年と比べ国債の残高は86.7兆円から250兆に増えています。なんと、163.3兆円の増加です。

 日銀は、「保有する長期国債の残高は、世間に流通するお札の総額である銀行券(=発行銀行券)発行残高を上限とする」というルールを掲げていました。それが銀行券ルールです。

量的緩和で日銀券は増えたのか?

2008年のリーマン危機のあと、日銀は、大量に国債を買って資金を供給しましたが、日銀券は増えたのでしょうか? 図を見て頂くとわかりますが日銀券(発行銀行券)は、93兆で25.1兆の増加ですが、国債の増加額163.3兆との開きは大きすぎます。では、国債を買ったお金は何処に行ったのでしょうか?

図を見るとその答えがわかります。増えているのは当座預金残高です。何と178兆に増えていて増加額は150.4兆です。日銀は、市中の銀行から大量に国債を買ってその代金を市中の銀行の当座預金に振込みます。当座預金は金利がゼロの為、銀行は引き出して貸付(運用)に回します。これが信用創造と言われるシステムです。

しかし、日銀は現在当座預金に特例として0.1%の金利をつけています。国債を買ってマー供給しながら、他方では、日銀当座預金に金利をつけて市場にはお金が流れない仕組みを導入したのです。

日本銀行の資産内容

 2014年度末バランスシート

 2001年度末バランスシート

<日本銀行公式サイト 2001年度末バランスシート 参照>
http://www.boj.or.jp/research/brp/ron_2002/data/ron0207b.pdf

<日本銀行公式サイト 2014年度末バランスシート 参照>
http://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/acmai/release/2014/ac141231.htm/

(注1)短期国債にはFB(政府短期証券)を含む。
(注2)自己資本は、資本金、法定準備金(当該事業年度に係る余剰金の処分において積み立てられる金額を含む。)、特別準備金、貸倒引当金(特定の債権に係る損失に備えるためのものを除く)、債券取引損失引当金および外国為替等取引損失引当金の合計額。

日銀が異次元量的緩和を行うのはなぜか?

欧州中央銀行(ECB)は2014年06月05日域内の銀行から預かるお金(中銀当座預金)に付ける金利を現行の「ゼロ」から「マイナス0.1%」にすることを決めました。経済活動の停滞で消費者物価上昇率(インフレ率)が低迷する中、異例の緩和策で景気テコ入れを図るのが目的とされています。
逆に日銀はゼロの当座預金の金利を2008年10月に補完預金制度として超過準備金に0.1%の金利をつけています。国債を日銀に売った後、引き出さず日銀当座預金に預けておけば0.1%の金利がつくならば、銀行はわざわざ引き出し貸付に回さないのではないでしょうか?欧州中央銀行(ECB) はそれを防ぐ為にマイナス金利にしました。

では、日銀が異次元量的緩和をなぜ行うのでしょうか? 
目的は国債を買うためマネタイゼーション(現金化)と推測できます。
国債のマネタイゼーション(現金化)とは、政府が発行した国債を日銀が買って現金を政府に与えることです。日銀がマネタイゼーションを行うことは法が禁じています。
もちろん日銀は、政府から直接国債を買っているわけではありませんが日銀が証券会社に国債の買い注文を出し、債券市場を経て全国700以上の金融機関から買っています。
でもこれは、まさしく隠れたマネタイゼーションであり、国の財政が如何に危機的状態であることを示しています。

国の財政が如何に危機的状態


執筆:チームM 代表 松井信夫(ファイナンシャルプランナー)CFP®
株式会社ウィム 代表取締役。NHK文化センターをはじめ、全国各地で年100回以上のセミナーを行う人気ファイナンシャルプランナー。
“プロのノウハウを分かりやすく”をモットーに、ジェスチャーを混じえて説明するセミナーは、笑いあり、涙あり、飽きさせない語りが評判です。
顧問契約のお客様へのコンサルティングでは、リーマンショック、ギリシャショックなど数々の金融危機の中でも、お客様の資産を増やし続けてきた実績が有名。
著書に、『金融時事用語辞典』(共著、金融ジャーナル刊)、『銀行では絶対に 聞けない資産運用の話』(書肆侃侃房刊)がある。
チームMの本部は銀座6丁目の株式会社ウイム内にあり、毎月全国からFPや金融関係者が知識向上、スキルアップ等の為に集まり、相互研鑽を行っています。