父の死亡相続で現預金が3億円ほど有ります。 私からの相続時に、子ども達が苦労しないでしょうか?


父の死亡相続で現預金が3億円ほど有ります。 私からの相続時に、子ども達が苦労しないでしょうか?

宮塚 達夫先生 (みやつか たつお) プロフィール
  • マネープランを立てましょう。
  • 相続税の納税額を把握しましょう。
  • 贈与を有効に活用して、相続財産を減らしましょう。

高野 憲二さん(仮名 58歳 会社員)のご相談

もうまもなく定年退職を迎えるサラリーマンです。
一昨年東京郊外で1人暮らしをしていた父が亡くなり、かなり広い土地を所有していたので、相続税の納税で苦労しました。
今回の相続で思いもしない財産を手にすることになりましたが、今度は子供たちが苦労するのではないか心配です。
今からできる対策などあったら教えてください。

高野 憲二さん(仮名 58歳 会社員)のプロフィール

家族構成 : 本人 58歳 会社員
妻  55歳 専業主婦
長女  25歳 独身会社員
長男  21歳 大学生
住まい : 賃貸マンション
預貯金 : ご主人名義   3億2千万円
奥様名義    1千万円
  • 60歳で定年退職予定。
  • 退職して子供が独立した後は、都心の便利な場所の賃貸マンションに夫婦二人で暮らす予定。
  • 奥様が3年前まで公務員をしており、夫婦の年金は月38万円くらいあり、退職金も2,000万円位入るので、毎月の家賃を払っても月々の老後生活には全く問題がない。

何もしないと、お子様それぞれに約1,900万円の相続税が。
生前贈与などを活用して準備しましょう。

マネープランを立てましょう

高野さんは今後経済的にゆとりある老後生活が待っているとのこと。羨ましい限りですが、先ずはきちんとした今後のマネープランを立ててください。
なぜそんなことをするのかいうと、以下の理由からです。

  1. いくら預貯金が3億円以上あるとはいえ、年金の支払い開始年齢まではまだ数年あること。
  2. 賃貸マンションで暮らしていくとのことですが、もし今後介護が必要になった場合に、賃貸マンションだと改修は困難。老人ホームなどに住み替えをしなければならない場合も想定しておくべきで、この場合大きな資金が必要であること。

1) についてはご主人が退職してからご夫婦2人の年金が満額支給される、奥様が65歳になるまでの8年間に、どの位の生活費が必要か見積もってみてください。
もし年金額と同じ毎月38万円必要だとすると
38万円×12ヶ月×8年=3,648万円が必要ということになります。
結構大きな金額なのです。
勿論年金の一部はその前にも支給されますが、ここではザックリと多めに見積もった方がいいと思われます。

2) については、現在賃貸型の施設から高額な入居一時金を必要とする施設まで様々な老人用施設があり、どれがいいかはご夫婦のライフスタイルによって向き不向きがあると思われます。
時間がある時に数ヵ所の施設を見学してみて、自分がもし入居するとしたらこんな施設がいい、そのためにはいくら位お金が必要かを大まかに見積もってください。
今回仮に高野さんが入所一時金2,000万円の施設への入居を希望し、月々の経費は年金で賄えるものとしても、2人分で4,000万円のお金は確保しておく必要があるということになります。

1)、2)の合計だけでも7,648万円となり、その他急な出費に備えるお金も必要でしょうから、かなりのお金を手元に確保しておかなければいけないことがお解りいただけたでしょうか。

相続税がいくらかかるか計算してみましょう

高野さんの資産はすべて現預金なので、相続税の評価はお持ちの現金価格とまったく同じになり、現時点でご主人の相続が発生した場合、3億2千万円に対して相続税の計算をすることになります。
この場合の法定相続人は奥様とお2人のお子様の3人で、法定相続分は
奥様  2分の1
お子様 4分の1ずつ
となります。
法定相続分ずつ相続するものとして、相続税額をざっくり計算してみましょう。
相続税には基礎控除額があり、
5,000万円+法定相続人の数×1,000万円を相続財産から最初に控除することができるので、
3億2千万円-(5,000万円+法定相続人の数3人×1,000万円)
=2億4千万円が課税遺産総額になります。
2億4千万円を法定相続分に分けます。
奥様  2億4千万円×2分の1=1億2千万円
お子様 2億4千万円×4分の1=6千万円
それぞれの法定相続分の税額を速算表を使って計算してみます。
奥様  1億2千万円×40%-1,700万円=3,100万円
お子様 6千万円×30%-700万円=1,100万円(1人につき)
但し、配偶者は1億6千万円か法定相続分のいずれか多い方を超えなければ非課税となるので、ご主人の相続発生時には相続税は課税されません。
従って今回の相続では、お子様がそれぞれ1,100万円の相続税を納付することになります。

税額速算表

相続税 贈与税
課税価額 税率 控除額 課税価額 税率 控除額
~1,000万円以下 10% 0 ~200万円以下 10% 0
1,000万円超~3,000万円以下 15% 50万円 200万円超~300万円以下 15% 10万円
3,000万円超~5,000万円以下 20% 200万円 300万円超~400万円以下 20% 25万円
5,000万円超~1億円以下 30% 700万円 400万円超~600万円以下 30% 65万円
1億円超~3億円以下 40% 1,700万円 600万円超~1,000万円以下 40% 125万円
3億円超~ 50% 4,700万円 1,000万円超~ 50% 225万円

今度は同じ方法で、3億2千万の半分、1億6千万円を相続した奥様に相続が発生した場合の相続税を計算してみます。
ご主人が亡くなってから10年以内に奥様が亡くなった場合は、お子様2人に課される相続税額から一定の税金が控除(相次相続控除)されることになって計算が複雑になるので、ご主人が亡くなってから10年以上経過したのちに奥様の相続が発生し、財産の増減がなかったとします。
奥様の預貯金は1千万円ですから、合計1億7千万円の資産を持っていることになり、法定相続人はお子様2人です。
同様に法定相続分ずつ相続した場合
1億7千万円-(5,000万円+法定相続人の数2人×1,000万円)
=1億円(課税遺産総額)
1億円×2分の1=5千万円
5千万円×20%-200万円=800万円(相続税額)

お子様2人は一次相続、二次相続合わせて、1,900万円もの相続税を納付しなければならないのです。
また今後相続税法の改正が予定されており、相続税額はもっと増えるものと思われます。
もちろんお2人とも多額の相続財産を得るわけですが、親としては少しでも減らしてあげたいと思うのが当然です。
では、どうしたらいいのでしょうか?

贈与を活用しましょう

相続税額を減らすためには、何といっても相続財産の評価を減らすことが重要です。
預貯金を不動産などに買い換えて評価額を減らすことも可能ですが、土地が値上がりしないとも限りませんし、高野さんも苦労されたことと思いますが、土地を相続する場合、分割方法や処分方法が難しくなる場合があります。
そこで高野さんにまずお勧めしたいのが、贈与です。
民法549条には「贈与は、当事者の一方が自己の財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる。」と難しく書いてありますが、要するにお子様に財産を少しずつ分けていくのです。
もちろん相続財産を減らすと相続税の納付額が減るので、税務署がみすみす見逃してくれるはずもありません。
相続税の代わりに贈与税を払わなければならないのです。
しかし、贈与税には毎年110万円の基礎控除額があります。
つまり、1年の間に110万円以下の贈与をした場合は非課税になります。
この方法の問題点は後で述べますが、高野様はまだ58歳と年齢も若いので、仮に毎年奥様とお子様2人にそれぞれ110万円ずつ今後30年間贈与し続けた場合、
110万円×3人×30年=9,900万円
相続財産を約1億円減らすことが可能なのです。

因みに高野さんの財産が1億円減って、2億2千万円になると
一次相続の相続税額
奥様  1,400万円(非課税)
お子様 500万円(1人につき)
二次相続の相続税額
お子様 325万円(1人につき)
お子様の相続税の支払い総額は825万円となり、1,000万円以上も納付を減らすことができるのです。
もっとも、相続発生前3年以内に行われた贈与は相続財産に組み込まれてしまうので、直前まで続けていた場合は相続税を減らす効果が少し薄れてしまうことになってしまいますが、それ以前の効果は変わらないので、活用しない手はないと思われます。

ただ、せっかく長年こつこつと贈与を重ねても、相続時に有効な贈与であると税務署に認めてもらわないと、せっかくの苦労が水の泡となってしまうので、以下のことに注意してください。

1 贈与契約書を作成しましょう。

贈与する度に、契約書を作成してください。
前述したとおり贈与とは、贈与者による一方的な意思表示だけでは成立せず、贈与を受ける人が受諾することが必要なので、この受諾の意思を書面に残しておくことが必要なのです。

2 毎年違う時期に違う金額を入金しましょう。

毎年同じ時期に同じ金額の贈与が継続的になされると、本当は大きな金額を1回で贈与したいのに、わざと分割して少ない金額にして、贈与税の納付金額を少なくしようとしているとみなされてしまうことがあります。
連年贈与と呼ばれていますが、この場合贈与金額の全額について初年度に有期定期金の贈与があったものとみなされ、多額の贈与税が課せられてしまうのです。
連年贈与とみなされないためには、時期や金額を変えることも重要であるが、
わざと110万円を超える額の贈与をした年をつくって贈与税の申告をしておくことなども有効です。

3 贈与されたお金の管理は贈与を受けた人がしましょう。

お子様名義の口座に贈与した金額を振り込んで、自分が元気なうちは自由に使わせないと言って、通帳と印鑑を親が管理していることがよくあります。
しかし、贈与契約書をきちんと作成し、正しく申告もして、贈与の外観を整えていたとしても、実際に贈与を受けた人が財産を管理、つまりいつでも自由に預金を引き出せる状態にしておかなければ、本当に贈与したとは認められないのです。
贈与を受けた人が、実際に利益を享受していなければいけないのです。
相続が発生して税務調査が入り、お父さんのタンスから出てきたお子様名義通帳について調査官から尋ねられたときに、何気にその通帳の管理は父がしていましたと言ったとたんに、その贈与は否認され、長年の努力はパーになってしまうので注意しましょう。

住宅資金贈与の特例は是非活用しましょう

現在両親や祖父母から20歳以上の子供や孫に対する住宅資金の援助(贈与)については優遇特例が設けられています。
平成24年の場合、一般住宅で1,000万円、省エネ性または耐震性の基準を満たす住宅(優良住宅)では1,500万円までの贈与が非課税となるのです。
お子様が住宅を購入する場合には、この制度を利用しない手はありません。
もっとも、贈与を受けた者が贈与の翌年3月15日までに、住宅の引渡しを受け、同日までに自宅として居住しているか、同日以降に遅滞なく自宅として居住することが確実と見込まれることなどの要件を満たす必要があるので注意してください。

また上記非課税枠を超えた住宅資金の援助をしたい場合には、相続時精算課税制度という制度を活用する方法もあります。

相続時精算課税制度とは、贈与された財産を将来の相続時の財産に組み入れて精算することを前提に、贈与時に2,500万円の非課税枠を設け、超えた金額に対して一律20%の贈与税を課税する制度で、その贈与税は相続の際に贈与財産を相続財産に加算して計算された相続税額から控除され、贈与税額が相続税額を上回る場合には還付されるというものです。
但し、一旦相続時精算課税制度を選択してしまうと、2度と毎年110万円の基礎控除額がある課税方式には戻れないので注意が必要です。確かに相続時精算課税制度は、贈与時の一時的負担を減らすことができる制度なのですが、長い目で見ると場合によっては選択しない方がいい場合もあるのです。
特に大きな資産を持っていればいる程、相続時精算課税制度を選択しない方がいい場合があるのです。

必ず専門家に相談しましょう

贈与を有効に活用することによって相続税の負担を減らせることが、お解りいただけたでしょうか。
しかしながら、税金に関する法律、国税庁の通達や税務署の対応などは、常に変化があり、個々の事情によって最適な方策も変化していきます。
また今回解説していない細かい要件もたくさんあるので、必ず専門家に相談してください。
せっかく親から受け継いだ大切な財産なのですから、できる限りお子様にも残してあげていただきたいものです。

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