高齢期を賢く豊かに過ごすために必要な知識 ~蓄えたお金を簡単に失っていいのですか?~


蓄えたお金を簡単に失っていいのですか?

私は仕事柄、年金相談を受け成年後見人を複数受任したりしている関係から、企業や行政などで年金や退職前後のライフプランセミナーを多く実施しています。その中で最近中高年者対象に、「高齢期に直面する様々なリスク~主にお金に関する備えと考え方」などのお話資する機会が増えました。マスコミなどによる被害の実態が報道されているにも関わらず、未だに悪徳商法や詐欺など、高齢者の消費者被害は増え続けていることが関係しています。今回は、高齢者が悪徳商法や詐欺などの消費者トラブルに巻き込まれないように必要な知識についてお話しします。


多発している、劇場型振り込め詐欺とは?

振り込め詐欺にもいろいろあります。以前は子どもや孫などと称して「オレだけど急にお金が必要になったので振り込んでという「個人型」でしたが、最近では警察官や弁護士、会社の人など複数の人が登場し、それぞれの役割を演じる「劇場型」が多発しています。
電話でいろいろやり取りした後、本人が銀行や郵便局からお金を引出し、弁護士と称する人などに聞いた振込先に現金を送付するのが一般的です。

振り込め詐欺の特徴は、

  1. 被害時間が銀行振り込みの受付時間内のうち、午前11時から午後2時ころが多い。
    (振リ込み可能な時間までに、本人に考えるゆとりを与えないため)
  2. 一度被害に会うと再度被害にあうことが多い。
    (騙されやすい人と判断して再度別口で騙すことが発生するため)

第3者からみれば何とも幼稚な騙し方ですが、日頃高齢者に多く接している私からすれば不思議でも何でもありません。高齢期は些細なことの善悪を自分で判断し、必要な行動に移すことができなくなるのが一般的です。しかし、その程度は人により様々。
察するに若いときから自分でいろいろ考え、判断し、動いてきた人と、子や配偶者、親などに日々の生活面で何でもお任せで生きてきた人では違ってくることは確かです。
そして、イザというときの対応の差は、人との関わりが少なくなり周りがカバーできなくなる高齢期に顕著に現れてくるような気がします。

警察官や弁護士、会社の人など複数の人が登場し、それぞれの役割を演じる「劇場型」


被害を統計から見ると

【振り込め詐欺の件数と被害額】

特殊詐欺  認知件数 被害額
  振り込め詐欺  567件 約15億1,524万円
事後ATM引出額~約4,179万円
  オレオレ詐欺  317件 約10億7,157万円
架空請求詐欺 99件 約2億7,839万円
融資保証金詐欺 12件 約3,544万円
還付金等詐欺  139件 約1億2,985万円
振り込め詐欺以外  185件 約12億7,912万円
  金融商品等取引 153件 約11億3,047万円
※本年11月の振り込め詐欺の被害額について、上記被害額に、警察官等をかたってキャッシュカードを直接受け取る手口で、事後ATMから引き出された金額を加えると、実質的な被害総額は約15億5,703万円となります。 警察庁・平成24年11月分

都消費者生活総合センター(平成23年度)の統計によれば、60歳以上の高齢者の相談件数は35,011件、前年度に比べ0.3%増と過去最多を更新。平均契約金額は249万円、相談全体の金額169万円と比較して高額、高齢者の被害は深刻です。

高齢者の相談件数の推移グラフ 消費者生活総合センター 平成23年度


高齢期は引き算の世界

高齢期は引き算の世界だと知っておけば、早くからセカンドライフの備えの必要性に気づきます。高齢期は一般的に現役時に比べ失われるものが多くなり、漠然かも知れませんが不安になりがちです。

失われるものの例として、体力(健康)、若さ、家族、友人、就労収入、経済力、仕事、知識、判断能力、理解力、気力、新しいことを始めること、コミュニケーション能力、ことがおきたときの対応能力、自分が嫌ならノーといえる意思力などです。結果として胡散臭い人が近寄ってきたら拒否反応できる感覚と、そうした人に自分から近寄らない自己防衛能力が減少しがちです。

高齢者の知識不足と不安などの隙間に、何とかして騙してやろうと近寄る業者などが侵入してきます。無防備な高齢者を騙すのは簡単です。実際にあった無防備な例として、全ての通帳をバッグに入れて持ち歩く高齢者、平気で通帳を知人に預ける高齢者、自宅を開放し複数の他人が毎日来所して困っている高齢者なども存在します。たまの外出だからと複数の用事を一挙にしたついでにATMで引き出したお金を銀行に忘れてくるなど注意力の低下も目立ちます。田舎に1人暮らす親のお金を、家族の知らない間に親戚の人が搾取していた例もあります。高齢者のお金を狙っているのは悪徳業者だけではありません。
核家族化の現代社会、長寿化で低下する高齢者の対応能力の一方、詐欺のやり方は進化し続けています。だからこそ高齢者(これからの高齢者)も、家族も新しい情報と基礎知識が必要と言う訳です。

お金に関するおいしい話はないと心得たい!

先日、遺品整理を仕事にしている人から、興味のあるお話しをお聞きしました。
自分の死を自覚して準備して亡くなった人の部屋は、何も自覚せずただ生きてきた人の部屋より整理されていることが多いということを。深く考えると、いろんなことに対応できるかどうかは、高齢期を迎えたときまでのその人の生き方や環境も関係しているのかも知れません。

高齢期にトラブルに巻き込まれないために、取り敢えずは、気づいた今から常識的な金銭感覚をしっかり磨き身につけておくことです。身内であろうが事業者であろうが、お金に関しておいしい、または解せない話を持ちかけてきた場合は要注意ということを!
高齢になったとき被害に合わないためには、詐欺の手法を知るだけでは避けられないこともあるのです。併せて、判断能力が不十分になったら成年後見制度の利用も視野にいれておくといいでしょう(第7回:あなたの老後は大丈夫ですか? ~ 成年後見人などの待ったなしの「養成」と、問われる「質」参照)。


高齢者を守るために

高齢者の被害を最小限に抑えるには、声がけと見守りが大切と初めに触れました。本人が気づいていないままに被害にあっていることもあり、何かいつもと違う的なことに気づくのが見守りの効果と言えます。ただ、遠く離れて住む両親などへの対応には限界もあります。いろんな被害のパターンの内容を会うごとに話しあう、イザというときの相談先や対応の仕方を台所などに目立つように貼っておくといいでしょう。

今、少し面白い試みとして落語・コントなどで悪質商法の手口や対処方法などをわかりやすく伝える出前寄席の活動をしている大学などもあります。そうした企画に参加する、または自分でセミナーなどを企画することで、自身や家族の意識も高まり、人の役にたつ喜びを味わえ、結果的に判断能力の維持を長引かせることも可能です。

冷蔵庫にメモ

平成25年には2.5人に1人が65歳以上の高齢者(平生23年版高齢社会白書)になると予想されています。自分のセカンドライフのリスクは、子、親などにも影響します。対策は家族や地域を巻き込んですると効果があります。

高齢者からの一番多い相談は、「どこに相談したらいいか分からない」です。解決には高齢者のよろず相談先として地域の「地域包括支援センター」の連絡先を記載しておくといいでしょう。その他は参考までに都の例を紹介しておきます。

悪質商法に対する(都)の連絡先の例

都高齢者消費者被害の相談
電話  03-3235-3366
家族・ホームヘルパー・ケアマネジャーからの通報・問合わせ
℡   03-3235-1334
振り込め詐欺
警視庁総合相談センター
℡  03-3501-0110
架空請求
架空請求専門相談
℡  03-3235-2400
出前寄席  落語・漫才・コント
℡  03-3235-4167
演目       15分~20分
費用       出演者1人×6,000円(交通費込)
演者       社会人落語会  大学落語研究会  など
題名例    甘い誘いにゃ罠がある。 クーリング・オフを知っていますか。
             そんな、あなたが、騙される。 おばあちゃんの一日。など

※上記は見本なので、 各自、住まいの地域の連絡先を掲示するとよいでしょう。

[PR]生命保険の相談なら「ほけんの窓口」

保険のこと、やっぱりプロに相談してよかった!あなたに合った保険を無料でアドバイス! ほけんの窓口 生命保険の無料相談はこちら 保険のこと、やっぱりプロに相談してよかった!あなたに合った保険を無料でアドバイス! ほけんの窓口 生命保険の無料相談はこちら