第87回:日常生活に、旅行やレジャーに、身近な傷害保険は安心という視点で!


傷害保険は、損害保険の中でも特に「人」を対象にした商品です。同じく「人」を対象にした保険に生命保険があり、病気やケガによる死亡や入院などを「保障」しますが、傷害保険は偶然の事故での損害を「補償」する商品です。つまり、傷害保険は偶然の事故による死亡や入院・通院等が補償され、病気による入院・死亡は対象外となります。

そう聞くと、傷害保険は単に補償が限られた商品のように思う人もいるかもしれませんが、実際の生活の中では「役立つシーンの多い”使える”保険」でもあります。今回のコラムでは、傷害保険がどのように生活に役立つのか、また上手な活用のツボなどについて、生活者の目線で解説していきます。

傷害保険の基本的な仕組みと特徴について

傷害保険とは、偶然の事故による「傷害」を補償する保険です。対象となる「傷害」に対して保険から支払われるのは、死亡保険金や後遺障害保険金、入院保険金、手術保険金、通院保険金などです。

一般に「傷害」と聞くと、ケガを思い浮かべがちですが、判断の基準となるのは、「急激」「偶然」「外来(ケガの原因が体の外から来ている)」の3条件を満たすことです。そのため、有毒ガスによる中毒や窒息死、溺死、破傷風なども含まれるのに対して、しもやけや日焼け、各種職業病などは条件を満たさないため、対象外となります。また、傷害保険には免責事項があり、故意や自殺、酒酔い運転、無免許運転、心神喪失状態、薬物中毒、犯罪または闘争行為、戦争、暴動、地震、噴火、津波、放射能汚染などによる事故では支払われませんので、覚えておきましょう。

ちなみに、生命保険や医療保険、がん保険では、保険料は年齢が高いほどアップし、健康状態が悪いと加入を断られることもあります。これに対して、傷害保険では、年齢や健康状態で保険料は変わらず、健康状態に関わらず加入できますが、仕事の危険度によって保険料が変わるのが特徴となっています。

<保険料を決める職業の危険度:1~3級に分かれ、3級が最も高くなる>

職業の例
1級 事務職、販売員、美容師、看護師、教師、主婦、学生、公認会計士
2級 CA、タクシー運転手、守衛、自動車整備士、板金工、ガソリンスタンド販売員
3級 ダンプカー運転手、旋盤工、柔道・剣道師範、プロ野球・プロサッカー選手、金属プレス工

傷害保険の主な種類について

傷害保険にはいくつかの種類があり、用途に合わせて日常生活の中の傷害に備える「普通傷害保険」、乗り物を中心とした傷害に備える「交通傷害保険」、旅行中の事故に備える「旅行保険」、レジャーやスポーツでの事故に備える「レジャー保険」や「スポーツ保険」など様々なものがあります。この他にも、保険会社によっては、顔のケガに手厚く備える「女性保険」や、ストーカー被害に備える「ストーカー保険」といったものを取り扱っているところもあります。

普通傷害
保険
国内外を問わず、家庭や職場、旅行中、通勤・通学の途中など、日常生活の様々な事故による傷害に対して保険金が支払われる。また、補償対象を家族まで広げたものが「家族傷害保険」。
交通事故
傷害保険
国内外を問わず、主に交通事故による傷害を幅広く補償。道を歩いていたり、乗り物に乗っていたりした時の交通事故、駅構内(改札の内側)での傷害事故、道路通行中に建物から物が落ちてきた時の傷害事故、建物や乗り物の火災によって受けた傷害事故等に対して、保険金が支払われる。この「乗り物」が意外に幅広く、電車や自動車、自転車、モノレール、飛行機、船、エレベーター、エスカレーター、ベビーカーなどが対象。一般に保険料は普通傷害保険に比べて安い。また、補償対象を家族まで広げたものが「ファミリー交通傷害保険」。
旅行保険 旅行中に家を出てから帰宅するまでの傷害事故、賠償責任事故、携行品損害などを補償。「国内旅行傷害保険」の補償内容は、普通傷害保険とほぼ同じであるが、捜索費用や留守宅の盗難に備える特約も付けられる。一方で、「海外旅行傷害保険」は、細菌性の食中毒や地震によるケガ、海外で病気になった時の費用も補償されるほか、旅行のキャンセル費用なども補償されるのが特徴。
レジャー・スポーツ保険 「ゴルファー保険」「テニス保険」「つり保険」「スキー・スノーボード保険」などがある。特定のレジャー・スポーツ中の事故で誤って他人を死傷させたり、他人の持ち物に損害を与えたりした場合の経済的リスクに備えられる。また、自分自身の傷害や用品の損害にも備えられる。

普通傷害保険・交通傷害保険のツボ

国内外を問わず、家庭や職場、旅行中、通勤・通学の途中など、日常生活の様々な事故による傷害に対して保険金が支払われるのが「普通傷害保険」です。また、普通傷害保険の補償内容を限定し、国内外を問わず、主に交通事故による傷害を幅広く補償するのが「交通事故傷害保険」です。これより、普通傷害保険に入っているのに「交通事故傷害保険」などに加入している場合は、補償のダブリ(重複)が発生しますので、より補償範囲の広い普通傷害保険のみでいいでしょう。

なお、あなたに傷害保険が必要かどうかは、日常生活や乗り物に乗っている時などの「傷害」のリスクに備えたいかどうか次第で、以下のQについて考えてみましょう。

Q.身近な「傷害」のリスクに備えたいですか?
□      日常生活の傷害に備えたい ⇒ 補償の対象は自分だけ ⇒ 傷害保険
⇒ 補償の対象は家族も  ⇒ 家族傷害保険
□      乗り物に乗っている時の傷害に備えたい ⇒ 補償の対象は自分だけ ⇒ 交通事故傷害保険
⇒ 補償の対象は家族も  ⇒ ファミリー交通傷害保険
普通傷害保険の知っ得情報
普通傷害保険では、腕や足をギプスで固定していたり、松葉杖を使っていたりした期間など、「平常の生活に著しい支障があった期間」は、実際に通院していなくても通院日数として認められるケースがあります。また、入院保険金や通院保険金の請求額が5万円(10万円)以下なら、医師の診断書は通常求められず、診察券や領収書、薬袋等のコピーを添えて提出することで請求ができます。その他にも、「法定伝染病および指定伝染病危険担保特約」を付けることにより、細菌性食中毒なども補償対象となります。法定伝染病には、コレラ・赤痢・しょう紅熱・ジフテリア・ペスト・日本脳炎などがあり、指定伝染病には、O157・ポリオ・ラッサ熱などがあります。
普通傷害保険の賢い加入方法
普通傷害保険の補償は、前述のように死亡・後遺障害保険金、入院保険金、通院保険金ですが、このうち最も受取る可能性が高いのは「通院保険金」でしょう。生命保険で死亡保障がカバーされていれば、事故死亡を厚くしすぎると補償過多となるので、保険会社が用意した契約パターンではなく、できるだけニーズに合うように補償を設計するのがベターです。これについては、保険会社によって割合が決まっているので、通院を厚めにして、死亡を薄めにするなどの調整をお願いしてみましょう。
また、家族傷害保険やファミリー交通傷害保険では、本人、配偶者、同居して生計を一にしている親族(6親等以内の親族と3親等以内の姻族)、生計を共にする別居の未婚の子、さらに契約後に生まれた子供も補償対象となりますので、特に大家族にはお得です。

旅行保険のツボ

旅行保険には、「国内旅行傷害保険」と「海外旅行傷害保険」があります。いずれも、家を出てから帰宅するまでの傷害事故、携行品損害、賠償責任事故などが補償の対象となっており、加入している保険金額を上限として、実際に支払った費用が支払われます。
※携行品損害は、加入者自身の持ち物のみで、友人などから借りたものは補償されないので注意
※携行品損害や損害賠償などでは、一部自己負担がある場合もあるので注意

「国内旅行傷害保険」の基本的な補償内容は、普通傷害保険とほぼ同じですが、捜索費用や留守宅の盗難に備える特約も付けられます。これに対して、「海外旅行傷害保険」の補償内容は、ケガをした日から180日以内にかかった治療費用や入院治療に伴う諸雑費の実績(実額)が保険金額を上限として支払われ、「1日5,000円」など日額で契約する普通傷害保険とは大きく異なります。

一般に海外旅行傷害保険では、細菌性の食中毒や地震によるケガも補償され、海外で病気になった時にも備えられるほか、旅行のキャンセル費用なども補償されます。ただし、疾病治療費用の補償については、妊娠・出産、むち打ち症や腰痛で他覚症状のないもの、歯の治療は対象外となります。なお、多くの保険会社は、海外でのトラブルに備えて、日本語で現地対応ができる体制を取っており、また保険の対象となる場合には、保険会社指定の病院であれば、証券を提示することで立て替えなしで治療等を受けることができます。

Q.国内外の旅行に行く予定がありますか?
□ 国内旅行に行く予定あり ⇒ 国内旅行傷害保険
□ 海外旅行に行く予定あり ⇒ 海外旅行傷害保険
海外旅行保険の知っ得情報
海外旅行保険の疾病治療費用の補償は、病気については、帰宅後48時間以内に発病し、医師の治療を開始した時、治療開始から180日以内にかかった治療のための費用が保険金額の範囲内で支払われます。その中でも、特定伝染病については、帰宅後14日が経過するまでに治療を始めれば、その費用が補償されます。
また、海外旅行中にケガをした場合は、ケガをした日から180日以内にかかった治療費用に対して保険金が支払われます。これについては、現地で病院にかからなくても、帰国してから治療を受けた場合でも該当します。
海外旅行保険の賢い加入方法
旅行会社で勧められる海外旅行保険は、補償が既定のセットになったものが多いですが、商品によっては必要な補償だけに加入することも可能です。また、海外旅行保険付きのクレジットカードを持っていて、その補償が十分であるなら、疾病傷害治療費用の上限を最低200万~500万円程度になるように加入すればいいでしょう。ただし、クレジットカード付帯の海外旅行保険の中には、無条件付帯のものだけでなく、旅行費用をそのカードで支払わないと付かないものや補償額が不十分なものもあるのでよく確認しましょう。
なお、海外旅行保険には、行き先別リスク細分型で「1日刻みの保険料のネット加入商品」もあり、一般のパッケージ商品よりも安く加入できます。

レジャー・スポーツ保険のツボ

レジャー・スポーツ保険には、「ゴルファー保険」「テニス保険」「つり保険」「スキー・スノーボード保険」などがあります。これらの保険は、特定のレジャー・スポーツ中に発生した事故により、誤って他人を死傷させたり、他人の持ち物に損害を与えたりした場合の経済的リスクに備えられると同時に、自分自身の傷害や用品の損害にも備えられます。

ゴルファー保険の一例(年間保険料:3000円)
賠償責任保険 5000万円
傷害(自分自身が対象) 538.8万円
用品(盗難・破損) 10万円
ホールインワン・アルバトロス 10万円

例えば、ゴルファー保険では、アルバトロスやホールインワンを達成した時の出費にも備えられ、ゴルフ場内であれば、コース上だけでなく、食事中や入浴中の傷害も対象になります。また、スキー・スノーボード保険やつり保険などの場合は、家を出発してから帰宅するまでの事故もカバーされます。

Q.特定のレジャー・スポーツをよくしますか?
□ する ⇒ 他の傷害保険に入っている  ⇒ ダブりがなければ加入を検討
⇒ 何も傷害保険に入っていない ⇒ 加入を検討
レジャー・スポーツ保険の知っ得情報
レジャー・スポーツ保険は、賠償責任補償が付いているので、練習をしていて通行人にケガをさせた場合なども保険金を請求できます。また、傷害の補償や用品損害の補償を外しての契約はできますが、賠償責任の補償を外しての契約はできません。
レジャー・スポーツ保険の賢い加入方法
レジャー・スポーツ保険は、ベースとなる普通傷害保険をそれぞれの対象に限定して絞り込み、さらに賠償責任や携行品損害など必要な特約をセットした商品です。これには、「年間プラン」や「単発プラン」などがあり、ゴルフやスキー・スノボーなどによく行かれる方は、年間プランの方がお得といえます。これに対して、たまにしか行かれない方には、目的に合わせて、ビーチプラン、ゴルフプラン、アウトドアプラン、トレッキングプラン、スポーツプラン、ウィンタースポーツプランなど、手頃な保険料で気軽に加入できる単発プランが便利といえます。

以上、見てきたように、「傷害保険」にはいろいろな種類があり、しかも使える保険であることが分かったのではないでしょうか。ただし、ベースはいずれも傷害保険ですので、複数の傷害保険を利用する際には「補償のダブり(重複)」がないかをよく確認して入ることが大事です。また、既に入っている場合には、生損保やクレジットカード(付帯保険)も含めて、補償内容にダブリがないかを確認してみましょう。

2010年7月
ファイナンシャルプランナー、シニアリスクコンサルタント
豊田眞弓

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