第77回:毎月の保険料の支払いが厳しい、そんな時はどう対処する?


不景気で収入が減ったり、子供の教育費などの支出が増えたりして家計の見直しが必要になった時、負担の重い「保険料」は真っ先に手をつけたい項目ですね。でも、いざ保険を見直そうとすると、何から手をつければよいか分からないという方も多いようです。そこで今回は、保険料負担を減らすための「生命保険の見直し」のポイントをチェックしてみましょう。

基本的な考え方は、保険料を減らすための保険の見直しも、身近な節約と似たようなもので、要は「現状を把握して、無駄を省いていけばよい」のです。

生命保険の見直しステップ1:加入している保険はどんな内容?

保険の見直しは、自分や家族の現在加入している保険内容を確認することから始めましょう。自宅に保管してある「保険証券」や保険会社から届く「加入内容のお知らせ」などを用意して、被保険者(保険の対象者)ごとに、どんな時にいくら、どれくらいの期間、保険金や給付金が受け取れるのかを整理します。

生命保険には、大きく分けて、死亡に備える「死亡保険」、病気やケガに備える「医療保険」、老齢による収入減などに備える「個人年金保険」、教育資金を準備する「こども保険」などがあります。また、多くの保険は「主契約(メインとなる保険)」と「特約(オプション的につける保険)」の組み合わせとなっていて、主契約の保険は単独で契約できますが、特約のみでは契約できません。

生命保険の見直しステップ2:実際に必要な保障はどれくらい?

保険の加入内容が把握できたら、次は、自分や家族にとって必要な保障を考えて、「必要」「不必要」に分類してみましょう。必要な保障であっても、保障額が大きすぎる部分は「無駄」になるので、必要保障額(保険金額)がどれくらいなのかをよく考える必要があります。

(1)死亡保障はどうする

万が一、病気や事故で死亡した時に、家族にお金を残したい場合に「死亡保障」が必要になります。その際の必要保障額は、遺族の生活資金や教育資金、葬儀費用などから、遺族年金や死亡退職金などの死亡後に給付されるお金や預貯金などを差し引いて求めます。通常、家族の生活を経済的に支えている世帯主の方などは大きな死亡保障が必要になりますが、万が一のことがあっても経済的に困る家族のいない独身の方や共働きの方などは、葬儀費用程度が準備できていればよいでしょう。ただし、収入のない専業主婦の方であっても、子供が小さい場合などは、子供の保育料などは考慮する必要があるでしょう。

<必要死亡保障額の求め方>

必要死亡保障額の目安 = 遺族の必要資金 - 死亡後の収入
遺族の必要資金 ・末子独立までの遺族の生活費
   ⇒ 現在の年間生活費×70%×(末子の独立年齢-末子の現在の年齢)
・末子独立後の配偶者の生活費
   ⇒ 現在の年間生活費×50%×(末子独立時の配偶者の平均余命)
・その他の費用
   ⇒ 教育費、結婚資金援助額、住居費用、葬儀費用、相続費用、予備費等
死亡後の収入 ・遺族年金
・死亡退職金、弔慰金
・預貯金、有価証券等
・既加入の生命保険保障額
・遺族の勤労収入
・配偶者の老齢年金 他

死亡保障が得られる保険には、「終身保険」や「定期保険」、「収入保障保険」などがあり、一般に保険期間が長く解約返戻金が多いほど、また保険金を分割で受け取るよりも一括で受け取る方が保険料は高くなります。したがって、終身保険よりも定期保険、定期保険よりも収入保障保険の方が保険料は安くなるので、保険の見直しの際には、保険金額だけでなく、どんな死亡保障が必要なのかをよく考えて、保険料の安い異なる種類の保険に換えることも検討してみるとよいでしょう。

<死亡保障が得られる保険>

終身保険 一生涯の死亡保障が得られる保険。保険料のかなりの部分が積立金に回るため、解約時には、まとまった額の解約返戻金が受け取れる。・・・保険料は高い
定期保険 一定の保険期間内の死亡保障が得られる保険。積立部分が少ないため、解約返戻金はないか、ごくわずかな場合が多い。・・・保険料は割安
収入保障保険 一定の保険期間内の死亡保障が得られる定期保険の一種。保険金は年金形式で支払われる。年金受取期間が定まった「確定タイプ」と、保険料払込み満了までの所定期間が年金受取期間となる「歳満了タイプ」がある。・・・保険料は割安

(2)医療保障はどうする

万が一の病気やケガのリスクは、誰にでも、いつでもあり得るので、貯蓄が十分にある場合を除けば、医療保障は確保しておきたいところです。ただし、公的な健康保険制度で病院窓口での自己負担額は原則3割に抑えられており、また医療費の自己負担額がかさんだ場合は「高額療養費制度※」も使えるので、医療保険や医療特約で多額の保障を確保する必要はありません。医療保険等で準備すべきものは、自己負担分と、差額ベッド代や入院時の食事療養費、先進医療の技術料など公的医療保険ではカバーできない部分です(入院日額については、5,000円~10,000円くらいが目安)。

高額療養費制度
1か月の医療費の自己負担額が高額となった場合に、一定の金額(自己負担限度額)を超えた部分が払い戻される制度。ただし、差額ベッド代や、食事療養費・入院時生活療養費などの自己負担額は対象にならない。

医療保障が得られる保険には、「医療保険」や「がん保険」「三大疾病保障保険※」などがありますが、まず確保すべきは、ほとんどの病気やケガが対象となる医療保険(医療特約)です。一般にガン保険や三大疾病保障保険などは、さらに保障を上乗せしたい場合に利用するものだと考えましょう。特に三大疾病保障保険については、特定の病気にかかって条件を満たした場合に一時金が受け取れる保険であり、入院給付金などが受け取れる保険ではないのでご注意ください。

三大疾病(特定疾病)保障保険(特約)
がん・急性心筋梗塞・脳卒中で所定の状態になった場合に、死亡保険金と同額の三大疾病(特定疾病)保険金が受け取れる保険。保険金を受け取った時点で契約は消滅する。また、三大疾病(特定疾病)保険金を受け取らずに死亡した場合は、死亡保険金が受け取れる。生前給付がある分、通常の定期保険や終身保険よりも保険料は割高。

(3)養老保険、学資保険、個人年金保険などの保障はどうする

「養老保険」や「学資保険」、「個人年金保険」などの貯蓄性の高い保険は、見直し時にどのように対処したらよいか迷うところではないでしょうか。いつ必要になるか分からない死亡保障や医療保障とは違い、教育資金や老後資金などは使用時期がある程度決まっているので、預金や投信など他の金融商品でも準備することができます。したがって、保険で備えるべき資金としての優先順位は低く、遠い将来に受け取る満期金や年金のために、厳しい家計から保険料を払っていく必要があるのか、今一度考え直してみるとよいでしょう。

ただし、教育資金や老後資金は、いずれは準備が必要になるので、養老保険や学資保険、個人年金保険などを解約した場合は、必要な資金をいつ頃、どうやって準備するのかも併せて考えておく必要があります。

生命保険の見直しステップ3:保険を具体的に見直す方法は?

これまでのステップで保険の必要・不必要が判断できたら、不必要な保険を削り、必要な保険を安く確保する方法を考えてみましょう。生命保険の見直しは「やめる(解約)」「入る(新規加入)」だけでなく、リフォームしたり、下取りに出したりするなど様々な方法があります。

(1)リフォーム(減額)する

既契約の保険の保障を減らすことを「減額」、保障を増やすことを「増額」といい、いわば保険のリフォームです。減額の場合は、主契約や特約を一部解約することになるので、減額した分、保険料は安くなります。また、主契約を減額した場合には、特約の保険金や給付金も減る場合があるのでご注意ください。

(2)下取り(転換)する

転換とは、既契約の責任準備金や積立配当金を転換価格(下取り価格)として新しい保険契約の一部に充てるもので、もとの保険契約は消滅します。これは、同じ保険会社でなければできず、保障額によっては告知や診査が必要になります。たとえば、同じ保険会社で異なる種類の保険に入リ直す場合などに有効な方法ですが、予定利率の高かった時期や若い頃に加入した終身保険などを安易に転換すると、保険料が割高になるケースもあるので、他の見直し方法も含めて慎重に検討することが必要です。

(3)払済保険や延長定期保険で対処する

保険料の支払いが本当に厳しい時は、保険料の支払いを止めて保険の見直しをする制度があり、これには「払済保険」と「延長定期保険」の2つがあります。払済保険とは、保険料の払込みを中止し、その時点の解約返戻金をもとに元の保険の保険期間を変えないで、養老保険または変更前と同じ種類の保険に変更する方法で、変更後は元の保険より保険金額が小さくなります。一方で、延長定期保険とは、保険料の払込みを中止し、その時点の解約返戻金をもとに元の保険の保険金額と同額の定期保険に変更する方法で、変更後は元の保険より保険期間が短くなります。

たとえば、保険金額の大きすぎる終身保険に長く加入していた場合、払済保険に変更すれば、今後保険料を支払うことなく、保険金額の小さい養老保険の保障が得られるでしょうし、また延長定期保険に変更すれば、今後保険料を支払うことなく、一定期間の大きな保障が得られるでしょう。なお、どちらの方法でも付加している特約は消滅し、また解約返戻金が少ない場合や保険の種類によっては、その変更ができないこともあるのでご注意ください。

<払済保険と延長定期保険の違い>

払済保険 延長定期保険

(4)解約する

保険契約をやめることを「解約」といい、一度解約した保険は元に戻すことができないので、慎重に行う必要があります。たとえば、重複した保障の保険を整理する場合や、保険商品(保険会社)を変更する場合などに活用します。一般に保険は既往症があると、新規加入ができなかったり、契約に条件が付いたりする場合があるので、解約して新規加入を行う場合は、新しい契約が成立してから、既契約の保険を解約するようにしましょう。

(5)新規加入する

保険の見直しの際に、既契約の保険を解約して、より有利な新規の保険に加入する場合があります。この新規加入を検討する場合は、保障内容や保険料などでどれだけメリットがあるのか、既契約とよく比べてみることが大切です。それには、保険会社や代理店から見積もりを取ったり、保険会社のホームページで試算したりするとよいでしょう。また、同じような名称の保険でも、解約返戻金がない、死亡保障が少ないなど、商品内容を変えることで保険料を安くしているものもあるので、どうして安くなるのかをよく理解し、自分に合った保険を選択するようにしましょう。

2009年10月
大林香世(CFP®)

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