離婚を考えています。 財産分与やその後のことが不安です。


離婚を考えています。
財産分与やその後のことが不安です。

鈴木 暁子先生 (すずき あきこ) プロフィール
  • 慰謝料や財産分与は思っているよりずっと少ないことが一般的です。
  • 離婚による年金分割も期待しないほうが良いでしょう。
  • ファイナンシャル・プランニング的視点でいえば、世帯収入をみると離婚は損です。
  • 経済的に自立できる力を身につけておきましょう。

山科 薫さん(仮名 47歳 専業主婦)のご相談

47歳の専業主婦(パート)です。夫婦2人暮らしで子どもはいません。もろもろの事情や気持ちが積み重なり、実は今離婚を考えています(ただ、これは私自身の気持ちで、夫にまだ伝えていません)。
OL時代の貯金と現在のパート収入である程度の貯金はあるのですが、今の状況では経済的に不安です。
慰謝料や財産分与などはどの程度のものか、また離婚しても夫の年金の半分を受け取れると聞きましたが…。

山科 薫さん(仮名 47歳 専業主婦)のプロフィール

家族構成 : 夫 52歳 会社員
薫さん 47歳 専業主婦
住居 : 持家(夫名義) 15年前に購入。ローン返済中。
結婚 : 平成5年4月29日
本人の貯蓄 : 約1,000万円

離婚に経済的なメリットはほとんど期待できません。
一人で生活する覚悟と準備ができるまで、すべきではありません。

1.慰謝料や財産分与はケースバイケースです。

山科さん、こんにちは。ご結婚19年目にして離婚を考えられているとのこと。残念ではありますが、ここは現実に目を向けて考えていきましょう。なお、離婚に至るまでの経緯が詳細でないため、離婚の是非については言及せず、あくまでファイナンシャル・プランニング的な視点から回答させていただきます。

まず、慰謝料や財産分与についてですが、婚姻期間、財産形成のための寄与度などで、まったくケースバイケースです。
慰謝料というのは”精神的苦痛”を金額に換算するものなので、性格の不一致ではたいした金額にはならないケースが多いようです。そもそも婚姻は法律関係が発生している関係ですので、一方の気持ちだけで簡単に解消することはできません。ご主人様に特段の落ち度がなく、もし薫さんからの一方的な婚姻解消であれば、逆にご主人様から慰謝料請求されることも無いとはいえません

財産分与は、婚姻後に築いた財産を分けるものです。細かいことをいえば茶碗ひとつまで、ともなりますが、現実的には預貯金、有価証券、不動産、貴金属が主な対象です。ちなみに預貯金、有価証券などは半分に分けやすいですが、不動産は簡単ではありません。

現在のご自宅を売却するにしても、15年住んでいる中古物件ですから購入価格からは大幅に安くなってしまいます。ましてやローンが15年残っているというのでは、売却した金額よりもローン残債の方が多い可能性もあり、不足分は預貯金からの持ち出しになってしまいます。このような場合は、どのような形で処分(財産分与)するのが一番得かを考える必要があります。

慰謝料や財産分与については、協議離婚なのか、裁判まで持ち込んでしまう深刻なケースなのかにもよりますが、いずれにしても「別れるから半分ずつ」と皮算用できるものではありません。性急な判断は避け、必要であれば弁護士、税理士、銀行などプロの知識や情報に頼ることを考えてください。

2.離婚による年金分割は期待するほどではありません。

年金分割は2段階に分かれています。このしくみをよく理解していない女性が多く、期待だけが独り歩きしているようです。ここで整理してみましょう。

【第1段階:離婚分割(平成19年4月から実施)】

離婚分割できる要件は以下です。

  1. 平成19年4月1日以降の離婚であること。
  2. 婚姻期間中の厚生年金(共済年金)について。
  3. 双方の合意に基づく割合で。

離婚分割はあくまで割合は当事者が決めるものとなっています。

【第2段階:3号分割(平成20年4月から実施)】
第1段階の離婚分割に加え、平成20年4月から実施されたのが3号分割です。

平成20年4月1日以降に離婚した場合は、自動的に分割されます。

  1. 自動的に分割されるのは平成20年4月1日以降、厚生年金(共済年金)に加入していた期間に対する年金についてのみ(それ以前の分は話し合いによる)。
  2. 最大2分の1まで。

つまり自動的に2分の1に分割されるのは、平成20年4月以降の分であり、それ以前の分は2分の1とは限りません。
また分割対象となるのは、婚姻期間中の厚生年金(共済年金)分についてのみなので、老齢基礎年金分については対象外です(この点を勘違いされる方が一番多いのです)。

薫さんはご結婚が平成5年4月29日ですので、離婚分割期間が約14年、それ以降が3号分割期間となります。今後婚姻を継続するのであれば3号分割期間が長くなりメリットが大きくなりますが、直近で離婚されるのであれば、この制度はそれほどメリットがあるとはいえません。また分割しても、受け取れるのはあくまで薫さんが年金を受給できる年齢から。今すぐの収入にはなりません。

3.自分に力をつけることが先決です。

ずっと正社員として働いているのであれば、離婚しても「シングルの頃に戻った」と思えば経済的な打撃はそれほどではないかもしれません。しかしそうでない女性にとって、離婚による経済的打撃は相当大きいものです。薫さんも貯金はあるといえ、これからまだ長い人生です。今後再婚することもあるかもしれませんが、まずは自分の力で生きていける経済力をつけることが先決です。

現在、5日間パートのお仕事で年収約180万円を稼いでいらっしゃいます。生活の心配なくこれだけの収入が自分のために使えるのであればかなり裕福といえますが、これで生活をしていかなくてはならないとなると現実的には厳しいといえます。
現在の職場で収入アップが図れれば良いですが、難しいようであれば、ステップアップできる仕事を探すことも考えましょう。ただし薫さんは年齢的にハンディがあることは否めません。それをカバーするには即戦力となるスキルをつける必要があります。

薫さんはパートではありますが、雇用保険に加入していらっしゃいます。労働者や離職者が自ら費用を負担して講座を受講した場合、費用の一部を支給してもらえるという雇用保険の「教育訓練給付制度」があります。

【教育訓練給付制度】

対象となる講座は厚生労働大臣が指定した講座に限りますが、受講後申請により、自己負担した額の20%(上限10万円)が支給されます。
受講資格の有無、受講希望講座が指定講座かどうかの確認は、ハローワークに照会することができます。また講座検索は講座検索システムで探すことができます。
(検索システム: http://www.kyufu.mhlw.go.jp/kensaku/T_K_kouza )

講座はパソコンをはじめ資格取得など多岐にわたっており、通信講座もありますので自宅での学習も可能です。仕事でステップアップするためのスキルをぜひ身につけてください。

また自分の一生の仕事になるかもしれません。まず薫さんが今後の仕事に対してビジョンを持つことが重要です。せっかく自己負担してまで学習するのですから、それを生かして元をとらなければ意味がありません。1人でも生きていくためには原則”長く続けられる仕事”であることが重要です。また、職業訓練給付は、一度利用すると次の利用までに3年以上の雇用保険加入期間が必要となるため、講座はいろいろありますが、仕事に直結するものを選びましょう。

4.家計面からみれば離婚は損です。

最後に離婚がファイナンシャル・プランニング的にどのような影響があるかを確認してみます。

離婚により、薫さんの生活はおそらく一変するでしょう。家賃、食費、水道・光熱費などの一般生活費のほか、女性の場合美容代などもかかります。貯蓄は1,000万円程度ありますが、これは老後まで手をつけないで済むようにしてください。貯蓄できるよう収入をアップする、あるいは支出を抑えるなどして、離婚後も毎月貯蓄できることが重要です。

また、世帯収入として見ても離婚は実は損なのです。
ご主人様は65歳から老齢基礎年金と老齢厚生年金を受給できるようになりますが、この時からご主人様には加給年金というプラスアルファも受け取れます。これは薫さんが65歳になり老齢基礎年金を受給できるようになった時には、薫さんへ終身の振替加算となるものです(ただし、薫さんの厚生年金加入期間が20年以上ある場合は振替加算は行われません)。
夫婦であれば遺族年金もありますし、遺産相続の場合も配偶者は優遇されます。

もちろんお金のために離婚をするなということではありません。
よく「離婚は勢いがないとできない」と言われますが、私たちファイナンシャル・プランナーの立場からは、離婚は勢いだけでできるものではないとお伝えしています。

1人で生きていく覚悟と経済的裏付けがあって初めて、離婚が現実的になります。薫さんのご様子ですと、暴力など差し迫った身の危険があるわけではなく、まだ薫さんだけの気持ちのようです。離婚後は働くだけで精いっぱいとなり、金銭的にも精神的にも余裕はありません。とりあえず生活の心配をしなくて良い現状でパートを続けて貯蓄を増やしつつ、スキルアップすることをお勧めします。

同時に、金銭的なことも含めてご自身のライフプランを立てておきましょう。これらのことを冷静に粛々と進めていると、再度離婚について考える時間もあります。それでも改めて離婚という選択肢となるのであれば、あとはできるだけ円満な離婚に向けて努力していくことになります。

ブラックジョークのように聞こえるかもしれませんが、経済力のない女性の場合は特に、”離婚は計画的”でなくてはなりません。