第22回:電気温水器の訪問販売


日本では環境に対する意識が高まっており、2009年9月の国連気候変動サミットでも鳩山首相が日本でも温室効果ガスの25%削減目標を掲げたことは記憶に新しいところです。そんな背景のもと、環境に配慮して電気温水器を導入する家庭も増えています。

電気温水器とは電気を使った給湯システムであり、電気のオフピーク時間である深夜時間に電気でお湯を沸かして貯めておくため、料金が安い上に環境にもやさしいということで家庭への導入が広まっています。しかし、最近ではこの電気温水器に関する強引な販売も目立つようになっており、特にお年寄りを中心に被害が広がっています。そこで今回は、「電気温水器」の購入に関する失敗事例についてお話をしたいと思います。

強引な販売員に根負けてしまい・・・

渡辺さんは76歳の女性です。2年前に夫と死別してからは、自宅で一人暮らしをしています。ある日、訪問販売員が電気温水器の紹介をしに渡辺さんの自宅に来ました。販売員からの説明によると、電器温水器を導入することにより「ガス代がかからなくなるし、深夜電力料金が適用されるので電気代そのものも安くなる。」と、安さを強調しながら契約を迫ってきます。またそれ以外にも「お風呂の自動お湯張りや追い炊きが自由自在にできる」「地球の環境にもやさしい」など早口で次々とメリットを並べられ、気の弱い渡辺さんはその迫力に圧倒されて「それならば契約しようかな」と言ってしまいました。

ところが、値段を聞いてびっくり。なんとリフォーム代を含めて150万円もの値段がかかるとのことでした。そんなに高い値段とは思わなかった渡辺さんは、「150万円も払えません。」と断ったのですが、販売員は「安くなった光熱費を考えれば実質的な負担はありませんよ」あるいは「安くなるのだから、これぐらいの投資は当然。買っている人はみんなそうですよ。」と言葉巧みに説得にかかり、挙句の果てには「一度契約の意思を示したのだから、口頭でも契約は成立している。ここで買わなければ違約金をもらう」と脅されてしまう展開に。とうとう根負けをしてしまい渡辺さんは電気温水器を契約することになってしまいました。

電気温水器のメリットとデメリットは?

では、この電気温水器を購入するメリットとデメリットは何なのでしょうか。最近では、国の補助金対象となっているCO2冷媒ヒートポンプ給湯器(通称エコキュート)タイプのものもあり、それぞれによって若干の違いはありますが、おおむね以下の通りです。

メリット デメリット
・ 深夜電力でお湯を沸かすことができるので料金が安い(ガス代もかからない)
・ 燃焼する部分がないため、寿命が約15年と長い。(ガスだと約10年)
・ 同じく燃焼する部分がないため、音が静か
・ 火を使わないので、火災の心配が少ない
・ CO2を排出しない
・温水器を置く設置スペースが必要
・既設住宅の場合、リフォーム等でお金がかかる
・お湯が足りなくなった場合、すぐにお湯が使えない

電気温水器は確かにランニングコストのほかにも火災の心配がない、CO2を排出しないという環境面からも人気があり、電気温水器を導入する際にはガスを使わずにオール電化システムとあわせて導入するマンションや一軒家が増えてきました。しかし、新築で導入するのであれば工事費はかかりませんが、既存住宅に導入するとなるとリフォームが必要になってしまうため、概ね100万円以上かかることは覚悟しなければなりません。そのため本来であれば、「訪問販売でその場で契約」するようなものではないのですが、実際には訪問販売によるトラブルが多くなっているのが現状なのです。以下の図がここ数年で国民生活センターに寄せられた電気温水器によるトラブル件数の推移です。

この図を見てわかるとおり、電気温水器に関するトラブルは年々増加しており、うち約8割が訪問販売によるトラブルであることがわかります。訪問販売によるトラブルは2003年には200件だったのが、2007年には実に6倍以上の1343件にものぼります。

なお、訪問販売の際、販売員は「給湯設備やボイラーの点検」など別の名目で訪問することが多く、そして、「期間限定」「何名様限定」「モデル工事、見本として、特別にモニター価格で提供します」などと言葉巧みに契約を急がせ、検討の時間を与えないようにすることが多いようです。そのため、冷静な判断ができずに、ついつい押し切られて契約をしてしまうケースも多いのが実情です。

もし契約をしてしまったら・・・

では、万が一訪問販売でつい契約をしてしまった場合は解除できないのでしょうか。これは8日以内であればクーリングオフの対象になります。したがって、万が一その場で契約をしてしまったとしても契約を解除することは可能であり、その場合は違約金や使用料・損害賠償を支払う必要はありません。ただし、必ず「書面により」意思表示を行う必要があり、ハガキよりも「内容証明郵便」の方が確実です。電話ではクーリングオフは成立しないので注意が必要です。

ちなみに、さきほどの渡辺さんの話に戻りますが、その際に訪問販売員が説明した「一度契約の意思を示したのだから、口頭でも契約は成立している」というのは、正式な契約を交わしたわけではないのでもちろん正しくありません。契約をしてしまった後でも冷静に対処をすれば契約を解除できる可能性もありますので、早めに国民生活センターなどに相談するようにしましょう。

執筆:坂本光(さかもと ひかる)CFP
一級ファイナンシャルプランナー・CFPR、日本キャリア開発協会認定キャリアカウンセラー、日本応用カウンセリング審議会認定心理カウンセラー。2006年5月週末起業を決意し、通信事業者に勤務しながら合同会社FPアウトソーシング代表を務める。ファイナンシャルプランニングに関する個別相談・セミナー講師としても活動中。