第16回:マネーストックとマネタリーベース

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まず、教科書的なお話しをします。

マネーストックとは

世の中に出回っているお金の総量のことで、通貨残高ともいいます。マネーストックは、日本銀行を含む金融機関全体から、経済全体にお金がどの程度供給されているかを見るのに利用される指標で、民間部門(金融機関と中央政府を除く、一般法人・個人・地方公共団体)の保有する通貨量残高を集計したものです。

呼び方の変更

マネーストックは、これまでマネーサプライ(通貨供給量、貨幣供給量)として統計が公表されてきました。しかし、ゆうちょ銀行(2007年10月に業務開始)が国内銀行として扱われるようになったことや金融商品の多様化したことなどから、2008年6月に見直しが行われ、現在はマネーストックと呼ばれています。

マネタリーベース(ベースマネー)とは

日本銀行が供給する通貨のことをいいます。マネーストック(世の中に出回っているお金の総額)の基となる通貨という意味で、ベースマネーとも呼んでいます。また、この通貨が大きな預金通貨を生み出す強い力を持っているという意味で、ハイパワードマネー(強権貨幣)と呼ぶ場合もあります。マネタリーベースは、現金通貨(日銀券、補助貨幣)と、民間金融機関の法定準備預金(日銀当座預金)で求めます。

マネタリーベース=
現金通貨(日本銀行券、補助貨幣)+法定準備預金(日銀当座預金)

マネーストックとマネタリーベースの関係

マネタリーベースの供給量が増えると、(通常)マネーストックも増加します。

マネタリーベースは、信用創造の基礎となるお金です。このお金の基礎が民間銀行に供給されて、貸出しの原資となります。このお金は、「貸出しと預金の繰り返し」によって銀行と企業を循環することで、銀行の預金通貨をどんどん増やしていきます。これを銀行の信用創造機能と呼んでいます。
一方、マネーストックは、信用創造によって生み出されたお金が、経済全体にどの程度流しているかを見るのに利用される指標です。

ゼロ金利の中で日銀が行った異次元緩和は、一般には、マネー(マネー・ストック)が増発するように思われていますが、実際は、企業と世帯のマネーの増加にはつながっていません。
国債を売った銀行が、日銀の中にもつ預金である日銀当座預金は、国債を売った分増えて、208兆円にもなっています。
これは、銀行がもっていた国債(金融商品)が、日銀当座預金のマネーに振り替えられただけのことです。金融経済の中の日銀の当座預金(ベースマネー)が増えただけで、実体経済のマネー・ストックの増加ではありません。
企業と世帯が銀行にもつ預金であるマネー・ストックは、銀行が貸し付けることよって増加します。この貸付が、民間銀行による預金マネーの創造になります。

教科書的な説明では、マネタリーベースの供給量が増えると、(通常)マネーストックも増加します。と書かれています。ではなぜ現在はマネタリーベースが増えていても実体経済のマネー・ストックは増加しないのでしょうか?

それは、現在の金利がゼロだからです。
例えば、金利が3%の時期なら、日銀当座預金の金利は通常はゼロですから、銀行が日銀に国債を売って増えた当座預金(現在残高208兆円)を、日銀当座預金に置いておくことはありません。銀行は、その日銀当座預金を、3%の利回りを生む貸付か3%付近の金利を生む債券の購入に充てます。

貸付が起これば、銀行預金である世帯と企業のマネー・ストックは増えます。
その貸付は、世帯なら住宅購入資金になり、企業なら設備投資資金になります。
これは、実体経済の有効需要を増やし、GDPが増えたことになります。

以上の事をまとめると、普通の時ならば日銀が、異次元の緩和を行うと銀行を通じて企業や世帯への貸付の増加になります。その貸付金がまた使われてGDPが増加します。

ところがゼロ金利の中では、貸付をしても金利は1%台と低く、銀行が回収するリスクはカバー出来ません。
ならば、日銀の当座預金に置いたままの方が良いことになります。
ゼロ金利のなかでは日銀がいくらお金を刷っても流動性の罠にはまることになります。

なぜか現在、日銀は日銀当座預金には特例として0.1%の金利をつけています。
ますます実体経済にはお金が流れにくい状態を日銀が自ら作っています。
なぜ日銀は、意図的に当座預金にお金が貯まったままの状態にしているのでしょうか?真相は松井にはわかりませんが判明したらまたお知らせします。


執筆:チームM 代表 松井信夫(ファイナンシャルプランナー)CFP®
株式会社ウィム 代表取締役。NHK文化センターをはじめ、全国各地で年100回以上のセミナーを行う人気ファイナンシャルプランナー。“プロのノウハウを分かりやすく”をモットーに、ジェスチャーを混じえて説明するセミナーは、笑いあり、涙あり、飽きさせない語りが評判です。顧問契約のお客様へのコンサルティングでは、リーマンショック、ギリシャショックなど数々の金融危機の中でも、お客様の資産を増やし続けてきた実績が有名。著書に、『金融時事用語辞典』(共著、金融ジャーナル刊)、『銀行では絶対に 聞けない資産運用の話』(書肆侃侃房刊)がある。
チームMの本部は銀座6丁目の株式会社ウイム内にあり、毎月全国からFPや金融関係者が知識向上、スキルアップ等の為に集まり、相互研鑽を行っています。