第9回:円安が国債暴落を招く??


第5回の連載で、「長期金利の上昇は経済成長のみで起こるわけではなく、リスクプレミアムが上がることでも起こる。実は、日本はここが非常に気がかりです。次回は長期金利の上昇について書きたいと思います。」と書きながら遅くなりました。
今回は長期金利と国債の価格について話します。

最近の日本は、円安・円高に無関係に貿易は「構造的に年12兆円(月1兆円)くらいの赤字」が定着してしまいました。
まだ所得収支の黒字が17兆円くらいあるので経常収支はプラスです。しかしこれも2015年には危うくなり、2016年には経常収支もマイナスになりそうです。

 最近の日本は、円安・円高に無関係に貿易は「構造的に年12兆円(月1兆円)くらいの赤字」が定着してしまいました。まだ所得収支の黒字が17兆円くらいあるので経常収支はプラスです。しかしこれも2015年には危うくなり、
2016年には経常収支もマイナスになりそうです。

円安と金利、国債の関係とは

貿易で10兆円くらいの黒字を出し続け所得収支も8~10兆円の黒字で20兆円の経常収支の黒字を出していた時代に戻ることは絶対にありません。これは長期での円安を示します。方向が転換したのです。

  • 経常収支が赤字になると外為市場で円が売られることになり円安に向かいます。
  • 円が売られることは円の金利が上昇することを意味します。

円の金利が上がれば円国債の価格が下がります。この国は1,000兆円規模の国債を発行している国です。
もし金利が2%上がると国債の価格はどうなるのか?
一般に債券の利回りは、「表面利率」「残存期間」「債券価格」の3つが決定要因になります。

● 債券価格=(1+表面利率×残存期間)/(1+利回り×残存期間)

・表面利率:発行時に決定される

・残存期間:時間の経過と共に短縮する

・債券価格:市場動向により価格が決定される(市場価格)

平均残存期間が7年で表面金利が0.6%の国債の価格はどうなるのか?

(1+0.6×7年)÷(1+2.6%×7年)=1.042÷1.182≒88%

金利が米国並みの2.6%に上がると1,000兆円の国債の時価価値は一瞬で880兆円の価値に下がります。そうすると損を嫌う金融機関から国債の投げ売りが起こりやすくなる。日銀は必死に買い支え、金利を下げ、国債価格を上げようとするでしょう。
しかし、経常収支の赤字化から起こった金利の上昇に対して日銀が国債を買い支え、金利を下げようとしても無効になる可能性が高いのです。
国債を大量に買う中央銀行のマネー増発が今度は円売りを誘発することになるからです。円が外為市場で大きな売り超になると円金利が上がるとともに円は下落し、金利の上昇で国債価格は下がって行きます。

国債を大量に買う中央銀行のマネー増発が今度は円売りを誘発することになるからです円が外為市場で大きな売り超になると円金利が上がるとともに円は下落し、金利の上昇で国債価格は下がって行きます

IMF、邦銀を調査  日本国債 保有リスク試算要請

少し前の記事になりますがIMFは、邦銀の国債運用への偏りを心配して調査に乗り出しました。
以下は2012年3月2日の日経の記事です。

国際通貨基金(IMF)が日本の金融機関に対し、金利が上昇した場合、保有する日本国債で損失がいくら生じるか試算を提示するよう要請していることが明らかになった。2011年9月末時点の資産内容を基準に長期金利(10年物国債)が約2.5%に上昇した場合、財務の健全性にどう影響するかを調査を通じて点検する。今夏にも結果を公表する見通しだ。
IMFの要請を受け、3メガ銀行は既に2013年度までの試算結果を窓口の金融庁に報告したもようだ。銀行ばかりでなく、生命保険会社など他の金融機関にも広げるか検討中だ。
IMFは10年物国債利回りを現在の水準(1日時点で0.955%)より1.5%上昇した場合を想定。日銀の白川方明総裁が2月23日の衆院予算委員会で、長期金利が1%上昇した場合、国内銀行で6兆3000億円の評価損が生じると明らかにしたが、IMF調査は日銀の試算より想定を厳しく置いている。
IMFは、米リーマン・ショック後の2010年に主要国の金融状況を5年に1度調査することを決めた。債務危機が深刻な欧州は、英独などで同じような調査を実施済みだ。
IMFは今回、日本の金融機関の日本国債の保有リスクのほか、景気が二番底に陥った場合などマクロ経済状況が急速に悪化した場合の損失リスクも調べる。

上記のように、IMFも日本の金利上昇を非常に気にしていることがわかります。
もし経常収支の赤字化からの円安(=円売り)が起こったとき、金利の上昇と1,000兆円の国債の時価が下落することは明らかです。

もし経常収支の赤字化からの円安(=円売り)が起こったとき、金利の上昇と1000兆円の国債の時価が下落することは明らか

経常収支が赤字化するということ

名目GDP(487兆円:2014年6月)の2.1倍以上の1,000兆円規模の国債を発行している国の経常収支の赤字化は大きな問題です。
ところが、「異次元緩和で日銀が長期国債の大量買いで長期金利を押し下げるから金利の上昇は無い。だから大丈夫だ」と言う国会議員もいます。
国債を大量に買う中央銀行のマネー増発が今度は円売りを誘発することになり、円が外為市場で大きな売り超になると円金利が上がるとともに円は下落し、金利の上昇で国債価格は下がります。
「経常収支の赤字化は何ら問題ない」と黒田総裁や政府は言っていますが、やはり1,000兆円規模の国債を発行している国の経常収支の赤字化は大きな問題と言えます。

経常収支が赤字化するということ


執筆:チームM 代表 松井信夫(ファイナンシャルプランナー)CFP®
株式会社ウィム 代表取締役。NHK文化センターをはじめ、全国各地で年100回以上のセミナーを行う人気ファイナンシャルプランナー。
“プロのノウハウを分かりやすく”をモットーに、ジェスチャーを混じえて説明するセミナーは、笑いあり、涙あり、飽きさせない語りが評判です。
顧問契約のお客様へのコンサルティングでは、リーマンショック、ギリシャショックなど数々の金融危機の中でも、お客様の資産を増やし続けてきた実績が有名。
著書に、『金融時事用語辞典』(共著、金融ジャーナル刊)、『銀行では絶対に 聞けない資産運用の話』(書肆侃侃房刊)がある。
チームMの本部は銀座6丁目の株式会社ウイム内にあり、毎月全国からFPや金融関係者が知識向上、スキルアップ等の為に集まり、相互研鑽を行っています。

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