マイホーム購入を検討していますが、自然災害への備えはどのようにすればよいですか?


今回、回答いただく先生は…
鈴木 暁子先生(すずき あきこ) プロフィール
  • 損害保険は損害を被った理由が重要です。
  • 我が家の災害リスクを把握しておきましょう。
  • 万一被災した場合の支援制度があることも知っておきましょう。

 石垣 菜穂子さん(仮名 33歳 パート)のご相談

日本は自然災害が多いですが、どのような備えをすればよいでしょうか。数年後にはマイホーム購入を検討していますが、火災保険に加入すれば大丈夫ですか?

 石垣 菜穂子さん(仮名)のプロフィール

家族構成
本人(33歳 パート)
夫 (31歳 会社員)
長男(3歳)

ハザードマップなどで被災リスクを確認し、損害保険の補償で備えましょう

1.損害保険の補償の範囲を知っておきましょう。

石垣さん、こんにちは。日本は地政学上、昔から地震や台風が多いですよね。私たちは「三陸沖」「熊本」「能登」「日向灘」というように地名が大きく取り沙汰されたところは記憶にもありますが、気象庁の地震データベースで検索してみたところ、過去10年で最大震度6弱以上の地震は25回もありました。また台風も、地球温暖化により、昔よりも危険度の高いものが増えており、水害、土砂崩れなど被害も甚大なケースを何度も目にするようになりました。
私たちはこのような災害に備え、損害保険の加入を検討します。ただ、損害保険にも補償の範囲があり、加入している保険でカバーされると思っていたところ、実は範囲外だったというようなことも少なくありません。今回は特に自然災害に着目して、備えを考えていきましょう。

まずは火災保険が挙げられます。実は火災保険といっても、住宅火災保険住宅総合保険があり、補償の範囲が異なります。住宅火災保険は、火災、落雷、破裂、爆発、風災、ひょう災、雪災、消防活動による水濡れをカバーする保険で、建物と家財が対象です。一方、住宅総合保険は、住宅火災保険の補償範囲に加え、水害、給排水設備事故による水濡れ、外部からの落下、飛来、衝突、持出家財の損害、盗難などもカバーされ、手厚いものとなっています。

<住宅火災保険と住宅総合保険の補償範囲>

損害内容 住宅火災保険 住宅総合保険
火災、落雷、破裂、爆発、風災、ひょう災、雪災
消防活動による水濡れ
水害 ×
給排水設備事故による水濡れ ×
外部からの落下、飛来、衝突 ×
持出家財の損害 ×
盗難 ×
地震、噴火、津波に起因する損壊、埋没、流出 × ×

ただし、注意すべきは地震です。火災保険では、地震、噴火、またはこれらを原因とする津波による損害は補償されないため、それをカバーするには地震保険に加入する必要があります。なお、地震保険は単独では加入できず、火災保険に付帯して加入することになります。

よくあるケースで悩ましいのが車です。最近、台風や洪水で車が水没したり、竜巻で車がひっくり返ったり飛ばされたりする映像をよく目にしますが、このような場合に自分の車の修理代をカバーしてくれるのが自動車保険の中の車両保険です。保険会社によっては通常の補償範囲のものと、割安な保険料で補償範囲が限定的なものもありますので、違いなどはしっかり確認しておきましょう。

なお、津波による車の水没は車両保険の補償範囲外となります。保険会社によっては、地震や噴火、津波を起因として車が全損した場合でもカバーしてくれる特約があるところもありますので、検討してみてもよいでしょう。

また、飛来物が車に当たって傷つけられたような場合、飛来物の所有者が特定できれば損害賠償を請求できますが、台風による飛来物で車が傷ついても、所有者の特定は難しいのが現実です。したがって(自分に非はないのですが)車両保険で修理することになるでしょう。保険を使えば当然保険料の等級は下がります。車両保険に加入していないと全額自費ということになります。

2.我が家の災害リスクを確認しておきましょう。

火災保険料は、保険料率を算出し、それをもとに各保険会社が保険料を決めます。そのため、どの保険会社でも同じ保険料というわけではありません。ただ、最近は自然災害も多発し、その被害も甚大なケースが多いです。したがって損害保険会社の保険金支払額も大きく、保険料を値上げせざるを得ない状況になっています。直近でも2019年、21年、22年、23年と保険料が上がりました。

また、以前は、保険期間が最長10年という長期契約もありましたが、長期的なリスク予測が難しくなったことから、現在では5年に短縮されました。契約期間が短くなる分、保険料の改定などがあると影響を受けやすくなります。

地震保険も、建物の構造と所在地で保険料が決められています。保険料のために引っ越すなどということは現実的ではありませんが、「南海トラフ地震に関連するニュースが増えてますが、『地震保険』には加入したほうが良いのでしょうか」にもあるように、地震保険の意義や我が家における必要性などを検討してみてください。

さまざまな災害リスクがあるので、あれもこれもカバーしたくなりますが、その場合、やはり保険料が高額となってしまいます。最近では地域住民にハザードマップを配布している自治体も増えています。住宅密集地なので火災リスクが高いのか、河川の近くなので水害リスクが高いのかなど我が家の災害リスクを把握し、被害の大きさや再建のための費用の大きさなどを比較し、絶対に必要な補償と、外しても何とか乗り切れる補償のメリハリをつけて損害保険の見直しをするとよいでしょう。

なお、国土交通省が公開しているハザードマップポータルサイトがあり、そこから市町村が法令に基づき作成・公開したハザードマップへリンクします。参考までに一度ご参照ください。

参照(2024年10月25日時点):国土交通省 ハザードマップポータルサイト

3.万一の場合の公的支援なども知っておきましょう。

できる限りの備えをしていたとしても、地震や台風そのものをなくすことはできません。不幸にも被災してしまうこともあるかもしれません。そのような場合、使える支援はできる限り使い、少しでも早く生活再建への足がかりにしていきましょう。

自然災害によって生活基盤に著しい被害を受けた人に対し、「被災者生活再建制度」があり、住宅の被害程度に応じて支給される「基礎支援金」と、その後の再建方法に応じて支給される「追加支援金」があります。制度の対象となる自然災害や世帯には細かな要件(住宅の被害程度、世帯収入など)がありますが、市町村が申請窓口となりますので、まずは対象となるかどうかを確認しましょう。

<被災者生活再建制度>

基礎支援金
被害程度 支援金
全壊 100万円
解体 100万円
大規模半壊 50万円
長期避難 100万円
追加支援金
再建方法 支援金
建設・購入 200万円
補修 100万円
賃借 50万円
申請時の添付書類 申請期間
基礎支援金 罹災証明書、住民票等 災害発生日から13カ月以内
追加支援金 契約書等
(住宅購入、賃借等)
災害発生日から37カ月以内

そのほか、税金の減免、住宅購入資金融資における復旧・復興措置などもあります。いずれも申請が必要となりますので、被災したらまずは市町村での罹災証明取得をしましょう。
なお、罹災証明の申請は多くの場合、本人確認書類、被害程度がわかるような家屋の写真などが求められます。万一震災で流失、紛失となってもあきらめず、窓口で相談をしてください。こちらも内閣府のサイトで主な公的支援が明記されているので、ご参照ください。

参照(2024年10月25日時点):内閣府 防災情報のページ 公的支援制度について

また、筆者も準備していることですが、本人確認書類、年金手帳、預金通帳、保険証などのコピーがあると、原本紛失の場合にも公的支援の申請や、保険金請求も比較的迅速にできます。余裕のある今、このような準備もしておくことをお勧めします。


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