 
 
こんな時代ですから、いつリストラに遭わないとも限りませんし、病気やケガのリスクもあります。一般的には収入が途絶えても、半年分程度は生活できるお金を残しておくべきだと思いますが、上坂さんのように会社への不安がある場合には、念のため1年分程度の生活費に増やしておくほうが安心かもしれません。900万円の年収で年間200万円から300万円の貯蓄ができるそうですから、実際の年間支出が600万円として、その半分の300万円は残しておくのが無難ということになります。そこで、
- 貯蓄700万円のうち、300万円を残して、400万円繰り上げ返済する
- 貯蓄が1000万円になるまで1年待って、1年ぶんの生活費600万円を残して、400万円繰り上げ返済する
の二つの方法を考えてみましょう。
 
繰り上げ返済では、
1.金利が高いローンほど、2.残存期間の長いローンほど、3.残高の多いローンほどトクする金額が多くなります。上坂さんの2つのローンを比較すると、このうち金利、残存期間では公庫から、残高では銀行からになりますが、金利差が大きいため、残高が少なくても、公庫から繰り上げ返済するほうが得策のようです。返済開始から24回経過後に、約400万円を繰り上げ返済すると、
公庫なら約14年も返済期間を短縮でき、支払い利息を約383万円もカットできます。これに対して、
年利1.00%、25年返済の銀行ローンでは、期間短縮は約2年にとどまり、カットできる利息も約97万円です。いますぐ繰り上げ返済するのなら、やはり公庫融資が得策ということです。
 
一方、手元に残すお金を考慮して繰り上げ時期を1年遅くすると、公庫の場合には約400万円の繰り上げ返済でも、トクする金額は約366万円に減ってしまいます。同じ400万円でも、利息カット効果は17万円ほど減少してしまうわけです。手元にいくらのお金を残すべきかという問題を度外視して考えた場合には、やはりいますぐ、公庫融資にまとめて400万円を繰り上げ返済するのが得策ということになります。
 
上坂さんは
ローン控除が減るのではないかと心配されていますが、いまのところ影響はなさそうです。年収900万円で、扶養家族が3人いるので、年間の所得税は約23万円。ローン控除で還付される所得税はこれが上限になります。約400万円の繰り上げ返済によってローン残高が減っても、まだ3000万円以上が残っています。
還付額は年末ローン残高の1%、年間所得税額のどちらか低いほうの金額になりますから、所得税額が変わらないとすれば、還付金も約23万円で変わりません。これは、繰り上げ実行時期が今年であれ、来年であれ、違いはありません。
 
とはいえ、上坂さんがご指摘のように、銀行ローンには金利上昇リスクがあります。現在は金利1.00%ですが、この
固定金利期間は3年。来年には金利が見直されます。現在の固定金利選択型3年ものの金利は2.25%、仮にこのまま金利が変わらない場合には、0.1%の金利優遇で2.15%になります。当初の返済額は毎月10万1001円ですが、2.15%に上がれば返済額は11万3826円になります。
このところ長期金利は上昇傾向にありますから、来年には1〜2%上がってしまう可能性も視野に入れておくべきでしょう。もしも2%上がって4.15%になると、返済額は13万8358円で、37.0%の増額ですから、家計に影響が出てくるかもしれません。
 トクする金額は小さくなっても、銀行ローンを繰り上げ返済して、リスクを小さくするのも一つの考え方
トクする金額は小さくなっても、銀行ローンを繰り上げ返済して、リスクを小さくするのも一つの考え方です。特に、雇用面への不安がある場合には、むしろそのほうが安心かもしれません。たとえば、来年、貯蓄が1000万円になるのを待って、銀行ローンを1000万円繰り上げ返済すると、下にあるように、金利が2%上がっても、増額幅は20.0%に抑えることができます。しかも、130回の短縮で、約308万円の支払い利息をカットできます。しかし、会社の事情を考慮すると、それはちょっと不安。やはり、400万円程度の繰り上げ返済に抑えて、手元に600万円ほどは残しておいたほうが安心ではないでしょうか。その場合には、利息をカットできる金額は約90万円に減少しますが、それでも、金利上昇による増額幅はかなり小さくできます。とにかく
トクする金額が多くなるよう、いますぐ公庫融資を繰り上げ返済するか、会社の事情を考慮して、
1年待ってから銀行ローンを減らすか、ご家族でよく相談してから決めるようにしてください。
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| 金融機関 | 借入額 | 金利 | 返済期間 | 毎月返済額 | 現在の残高 |  
| 住宅金融公庫 | 1280万円 | 2.60% | 35年 | 4万6448円 | 1233万9668円 |  
| 銀行ローン | 2680万円 | 1.00% | 25年 | 10万1001円 | 2489万3751円 |  
| 合計 | 3960万円 | --- | --- | 14万7449円 | 3723万3419円 |  |  | 
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| いつ | 金融機関 | 繰り上げ額 | 短縮期間 | カットできる利息金額 |  
| 今(2年間返済) | 住宅金融公庫 | 401万8195円 | 169回 (約14年)
 | 383万1517円 |  
| 今(2年間返済) | 銀行 | 401万2283円 | 49回 (約2年)
 | 96万6766円 |  
| 来年(3年間返済) | 銀行 | 1004万7176円 | 130回 (約11年)
 | 308万2954円 |  |  | 
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|  | 1. 繰り上げ返済しない場合
 
 
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| 金利 | 返済額の変化 |  
| 2.15% | 11万3826円 (12.7%のアップ) |  
| 3.15% | 12万5745円 (24.5%のアップ) |  
| 4.15% | 13万8358円 (37.0%のアップ) |  |  | 
|  | 2. 約1000万円繰り上げ返済した場合
 
 
| 
| 金利 | 返済額の変化 |  
| 2.15% | 10万8118円 ( 7.0%のアップ) |  
| 3.15% | 11万4559円 (13.4%のアップ) |  
| 4.15% | 12万1230円 (20.0%のアップ) |  |  | 
|  | 3. 約400万円繰り上げ返済した場合
 
 
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| 金利 | 返済額の変化 |  
| 2.15% | 11万1459円 (10.4%のアップ) |  
| 3.15% | 12万1076円 (19.9%のアップ) |  
| 4.15% | 13万1171円 (29.9%のアップ) |  |  
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