中辻家では、ステップファミリーということで、お金の面では少し無理をした感がありますね。おそらく再婚されたあとの生活が、お子様たちにとって以前よりも快適なものになるようにと、ご夫婦ともにがんばりすぎてしまったんですね。といっても、その頃のお金の使い方を振り返っても仕方がないので、ここからは先々の問題点を整理してみましょう。中辻家の生活設計には、おそらく奥様が感じられている以上にたくさんの課題があり、家計管理や生活設計については、相当の努力が求められます。これからは、予定外の出費が発生しないように、数年先を見通した家計管理をおこないましょう。
まずは、住宅ローンから。
中辻さんのご主人の年収は880万円とのことですが、年収やお子様の年齢から考えると、5,350万円のローンは借りすぎです。それ以前に払われていた月々の家賃額とあまり変わらなかったとはいえ、現在のまま、何も手を打たないでいると、70代に入っても16万円以上(金利上昇で増える可能性大!)の住宅ローンを支払うことになります。ご主人は65歳になるまでは満額の年金をもらえないことを考えても、今のままでは老後の生活も、住宅ローンにかなり振り回されてしまうでしょう。
しかも、(2年固定とフラット35の借り入れ割合はわかりませんが)2年が経過した時点で住宅ローンの残債はまだ5,100万円以上残っているものと思われます。2年固定のほうは、金利が1%アップしただけでも、ひと月1万円くらいは返済額が増えてしまうのではないでしょうか。
ご長女が私立高校に進学されたということで、月々の家計からは貯蓄がまったくできていない上に、ボーナスはご長女の学費と保険料、税金の支払いにほとんど消えてしまっているはず。住宅ローンを少しでも早めに返すために、月々お金の流れだけではなく、年間のお金の流れもチェックして、住宅ローンに回す工夫が必要です。
長女の学費は高校から奨学金を申請して、
将来は本人に返してもらうのが現実的 |
そのための工夫として、まずは家計費の中身を見直したいところですが、支出の内容を見ていくと、家計費の中に使いすぎの費目はありません。出費の中では、通信費が少し多めになっているのが気になるくらいです。
家計費の見直しが難しい現実を踏まえると、ご長女の学費については、すべてを家計から出すのはあきらめて、奨学金の申請を考えられてはいかがでしょうか。今のままでは、ご長男が大学を卒業するまで貯蓄ができない状態が続く上に、年金からも住宅ローンを払わなくてはならない家計であることを意識して、ご長女にも家計改善に協力してもらう必要があると思います
奨学金の申請をして、実際に申請が認められたとします。その場合でも、年収や申請の時期から考えると、無利子の奨学金は借りられる可能性が低いはず。奨学金といえども、利子がついてしまう借金だということは、肝に銘じておくようにしましょう。住宅ローンの負担を考えると、ご両親が奨学金の返済をおこなうのは難しいので、大学を卒業したらお子様本人に返してもらうように、申請する前には親子で話し合って、同意を得ておくべきだと思います。
実際に奨学金がもらえることになって、学費の負担が楽になったら、住宅ローン返済にまわしたいもの。住宅金融公庫のフラット35は100万円以上貯まらないと繰り上げ返済できないので、銀行の2年固定住宅ローンのほうを、こまめに繰り上げ返済していくのが現実的でしょう。金利が変動してしまうタイプの住宅ローンを繰り上げ返済することは、今後の金利上昇対策にもつながるメリットがあります。
奨学金がもらえて家計が少し楽になった分、あるいは奥様が仕事を始められて収入がアップしたら、住宅ローンの月々の返済額を増やすという考え方もあります。2年固定の住宅ローンの返済期間を短縮すれば、月々の返済額は今よりもアップしますが、総返済額を減らすことができるからです。変動タイプの住宅ローンは、1年でも返済期間が短いほうが、金利変動にさらされる期間も短くすむので、返済期間の短縮はおすすめです。片方のローンが数年でも早く終わることは、年金時代にローンが残ることを考えてもおすすめの方法。住宅ローンの返済期間を短縮するのは「住宅ローンの条件変更」といい、借りている金融機関で申し込めば利用できます。
死亡保障額800万円は、
貯蓄が少ない中で問題が大きい |
最後は保険について。
お子様が3人いて、奥様が専業主婦に近い状態の今、死亡保障額が800万円しかないのは、リスクが高すぎる状態です。現在の中辻家には、最低でも3,000万円の死亡保障は欲しいところです。
保険料の一例として、通信販売タイプの定期保険で3,000万円の死亡保障を確保すると、20年満期でひと月の保険料は1万4,000円程度になります。現在の共済に比べると保険料がかなり増えますが、貯蓄が15万円しかない中辻家にとっては、死亡保障にかけるお金は必要なコストといえるでしょう。貯蓄を大きく増やせないまま、老後に入ることを考えても、ご主人に万が一のことがあったときの、奥様とお子様の生活を守ってくれるのは生命保険からの死亡保険金になるからです。ひと月1万4,000円の保険料負担が重くて、保険の見直しについては気が進まなくても、せめて2,000万円くらいの死亡保障は確保しましょう。死亡保障額を2,000万円に下げると、保険料負担は1万円弱に減らせます。
現在の家計の状態で、ご主人に万が一のことがあったら、ご長女は私立高校に通い続けるのもままならなくなり、その後に続く、お二人のお子様の進路にも大きな影響を与えてしまいます。生命保険料は安心して暮らしていくためのコストと割り切って、早めに見直しをおこなうことをおすすめします。
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