第14回:日銀券と政府紙幣


なぜ国は紙幣を刷れない?

なぜ政府が紙幣を刷らないのでしょうか?政府がお札を刷れば、簡単で良いとは思いませんか?
政府が紙幣を刷ると言うことはお金が簡単に手に入る為、税収以上の支出を続けることによる財政赤字が増え、財政赤の累増がインフレを生むからです。

政府に代わり、近代資本主義の20世紀の諸国で中央銀行が通貨を発行する機関とされました。
その理由は、金融資産にインフレによる事実上の課税が行われるからです。
西欧と米国では、マネーを貯める資本家がインフレ課税をもっとも嫌います。

日銀が作られたのは1882年(明治15年)でした。その後、インフレの原因だった明治政府の政府紙幣を回収し、日銀券に変えています。その後は、日華事変(1938年)から第二次世界大戦の後(1953年)まで、再び政府紙幣が発行された時期もありました。

中央銀行でもなく、政府が資産の裏付け(担保)がなくても、発行する紙幣を「政府紙幣」と言います。

 中央銀行でもなく、政府が資産の裏付け(担保)がなくても、発行する紙幣を「政府紙幣」と言います。

中央銀行が紙幣を発行する理由

政府が通貨発行出来ない場合、政府の財政赤字は債券市場で国債を売ることによって、ファイナンス(=資金調達)するしかありません。国債には支払金利がつき、返済の義務もあります。財政赤字が大きくなり、累積赤字が増えると国債の金利を高くしないと債券市場では売れなくなります。

債券市場で、邦銀等が買い受ける国債の金利率が10%と高くなったとすると政府の利払いが増えるため、財政赤字が一層大きくなって政府の資金不足がより拡大して行きます。

こうなると政府は、金庫が枯渇して財政の支出に難渋します。結果として、政府は財政支出を小さくせざるを得ません。政府の通貨発行権を、中央銀行に移管するような事は出来ません。

政府紙幣が発行できる場合、政府は国債を発行せず政府紙幣を発行します。発行した政府紙幣には、金利支払いの義務がなく返済の義務もない。紙幣には返済期限もありません。
このため政府には、財政の赤字(=資金の不足)を抑制する要因がなくなる。

政府紙幣を認めると、政府の財政赤字が金利高という歯止めがなく拡大していき、最後には大きなインフレというマネー価値の下落が生じます。

 政府紙幣を認めると、政府の財政赤字が金利高という歯止めがなく拡大していき、最後には大きなインフレというマネー価値の下落が生じます。

インフレ課税とは

経済規模に対し、通貨が発行され過ぎるとインフレの原因になります。その時の通貨の価値は、物価が2倍になると通貨の価値(=商品購買力)は1/2に下がります。

預金を2,000万円持っていて、額面が同じなので2,000万円の価値があると思っていても、引き出して使うと2年前の1,000万円分しかない。2年前にはあった1,000万円の価値はどこに消えたのか?

「インフレ課税1,000万円」があったことになって、1,000万円分は政府が課税して使ったのです。政府の財政赤字が原因のインフレは「見えない課税」です。なお、政府債務の実質価値も1/2に減ります。

以上のような、インフレ課税を防止するためにロスチャイルド等の資本家は、政府から政府紙幣の発行権を奪って中央銀行を作り、移管したのです。

中央銀行による財政のファイナンス

しかし、中央銀行が政府から直接、国債を買えば財政のファイナンス(政府へのマネーの提供)になります。これは、政府が政府紙幣を発行する事とほぼ同じとなります。
日銀が直接国債を買いつけると、政府の言うままに刷って国債を買うことになり、政府の造幣局になってしまいます。

その為、世界中で「中央銀行が直接に国債を買って、政府に現金を与えること」は法律で禁止されています。

日本でも国会が認めるやむを得ない場合(国民経済の、決済機能を破壊する金融のシステミックな危機)を除き、日銀が政府から国債を買うことは禁じられています(日銀法)。
図を見ると日銀は、インフレを恐れ、日銀券(紙幣)を増やしていないことがわかります。

マネタリベースの推移 日本銀行関連統計より作成


執筆:チームM 代表 松井信夫(ファイナンシャルプランナー)CFP®
株式会社ウィム 代表取締役。NHK文化センターをはじめ、全国各地で年100回以上のセミナーを行う人気ファイナンシャルプランナー。
“プロのノウハウを分かりやすく”をモットーに、ジェスチャーを混じえて説明するセミナーは、笑いあり、涙あり、飽きさせない語りが評判です。
顧問契約のお客様へのコンサルティングでは、リーマンショック、ギリシャショックなど数々の金融危機の中でも、お客様の資産を増やし続けてきた実績が有名。
著書に、『金融時事用語辞典』(共著、金融ジャーナル刊)、『銀行では絶対に 聞けない資産運用の話』(書肆侃侃房刊)がある。
チームMの本部は銀座6丁目の株式会社ウイム内にあり、毎月全国からFPや金融関係者が知識向上、スキルアップ等の為に集まり、相互研鑽を行っています。

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