第3回:中高生の金銭感覚と携帯電話


携帯電話は1990年後半から急速に普及し始め、2007年5月では契約数は9700万加入にもなりました。計算上では、ほぼ日本人全員が1台ずつ持っている計算になります。利用方法も単に通話のみならず、メールやカメラの利用が当たり前のようになり、最近ではICチップを搭載しておサイフ携帯として買い物に使えるようになったり、定期券や切符などの代わりに使えるようになったり、更には映画のチケットを携帯電話にダウンロードすると会場の読み取り専用機にかざせば、チケット要らずで入場できたりと、どんどん携帯電話は進化し続けています。

しかし、携帯電話の普及とともに、見知らぬ団体からの突然の高額請求や電車内のマナーの問題など、様々な社会問題も顕在化しました。その中で、「携帯電話が子供の金銭感覚を狂わせる」というのも実は隠れた社会問題の一つであり、今回は「中高生の金銭感覚と携帯電話」を中心にお話をしたいと思います。

高校生の携帯電話普及率は90%以上

近年では携帯電話を持つ子供を多く見かけるようになりました。以下が10代の子供たちの携帯電話の利用実態です。

図1:「情報モラルに関する調査報告書」
(平成17年3月、財団法人コンピュータ教育開発センター)

図2:平成18年度情報通信白書(総務省)

図1を見ると中学生の約半数が、そして高校生ではほぼ全員が携帯電話を保有しているということがわかります。また、図2を見ると月々の平均利用料金は10代の子供たちが突出して高くなっており、利用形態を見ると音声通話はむしろ少なく、メールやインターネット、着うたやゲームなどの非音声系サービスが多いのが特徴です。このデータを見る限り、子供にとっては携帯電話がもはや生活必需品となっていると言えるのかもしれません。

さて、それでは携帯電話の利用料金のうち、子供たちはいくらぐらいを自分で支払っているのでしょうか。それを示したのが以下の図になります。

図3:モバイル社会白書2006の中にある「一般向けモバイル利用調査」

図3を見ると、約3割の子供が自分では支払っておらず、また図2のデータから1ヶ月あたりの平均利用料金が15,000円を超えていることを考慮に入れると、大抵の子供が親に負担してもらっているというのが実態であることがわかります。そしてこの実態こそが、子供の金銭感覚と大いに関係しているのです。その理由を次章で詳しく見ていきましょう。

「後払い方式」が子供の金銭感覚を鈍らせる!?

冒頭で、「携帯電話が子供の金銭感覚を狂わせる」というのが社会問題の一つであることを申し上げました。では、なぜ携帯電話が金銭感覚を狂わせる可能性を秘めているのでしょうか。 実は、携帯電話の利用料金が「後払いである」という特徴と大きく関係してくるのです。

通常、私たちは何かを買うときは、お金と引き換えに物をもらいます。例えば、八百屋さんに野菜を買いに行くと、現金と引き換えに野菜を買うことができます。このとき、お金を持っていなければ買うことはできません。つまり、物を買う際には通常はお金を持っている必要があり、そのためには「自分の財布の中にいくらお金があるか」ということを気にしておかなければなりません。

ところが携帯電話の場合は、誰かに電話やメールをする時には、利用料金はかかっているにもかかわらず、お金を用意しておく必要はありません。なぜなら、後で使った分をまとめて請求書にして送ってくるという「後払い」の仕組みだからなのです。 この仕組みは、現金をいつも持たなくてもいいという点で大変便利なのですが、その反面、お金を持たなくても使えてしまうため、きちっと自分で管理ができていないと、後で大変な金額を請求されて困ってしまう、ということにもなりかねません。 収入もなく、金銭感覚も身についていない子供にクレジットカードを持たせることに躊躇する親も多いでしょう。それは、クレジットカードが現金を持たなくても物を買えてしまう「後払い」のシステムだからなのです。

つまり、実は携帯電話もクレジットカードと同様、自分で管理ができないまま子供に持たせると、金銭感覚が身につかなくなってしまう危険性があるのです。更に言えば、最近では電子マネーも普及してきており、親のクレジットカードでチャージできるように設定してしまえば、それこそ子供は親のクレジットカードを持って自由に買い物ができることと全く同様なのです。特に子供の携帯電話の料金を親が負担する場合、子供が自分でいくら使ったのかを認識していなければ、無制限に使ってしまう可能性もあるわけです。

携帯電話は音声通話のみならず、メール・インターネット、そして電子マネーの分野へと進化を続けており、今後もますます便利になっていくことでしょう。しかし便利になるということは、裏を返せば、あまりお金のことを気にしなくても物が買えてしまうということでもあるのです。こうした危険性を親は認識し、子供に適切な管理をさせるということはとても重要なことなのです。

子供に金銭感覚を身につけさせるためには

まずは毎月いくらぐらい使っているのかについて、きちっと認識させましょう。そのための有効な手段として、例えば「ある一定の額までは親が負担して、残りを子供が負担する」或いは「使った金額のうちの一定割合をお小遣いの中から負担させる」というルールを決めると、「自分のお小遣いが減る」という危機感から、必然的に子供はいくら使ったかを認識するようになるでしょう。また、利用料金の上限設定ができるメニューを各携帯電話会社が提供していますので、そのサービスを利用するというのも良いかもしれません。

毎月の料金は家計を圧迫するほどでもないため、全額負担をしてあげているというご家庭もあるでしょう。また、子供にお金のことで心配をかけさせたくないというお考えのご家庭もあるかもしれません。しかし、金銭感覚が身につかないうちに無制限に子供がお金を使う癖がついてしまうと、後からその癖を直すのは大変ですし、またその癖を直すことができなければ、そのことで苦労されるのはお子さんご本人なのです。

これからも様々なサービスが登場し、ますます「お金を気にしなくて良い便利な時代」になっていくでしょう。そしてだからこそ、今のうちから「子供の金銭感覚をしっかり身につけさせる」ということは、親の大切な役割となるのではないでしょうか。

執筆:坂本光(さかもと ひかる)CFP
一級ファイナンシャルプランナー・CFP®、心理カウンセラー。2006年5月週末起業を決意し、通信事業者に勤務しながら合同会社FPアウトソーシング代表を務める。ファイナンシャルプランニングに関する個別相談・セミナー講師としても活動中。

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