第11回:お金持ちが死んでしまったら、そのお金はだれのものになるか知っていますか?【子供に話すお金の話】


縁起でもないお話で恐縮ですが、もしお金をたくさん持っている人が死んでしまったら、そのお金は、だれのものになると思いますか・・・?こう聞かれたら皆さんは、どう答えますか?ほとんどの人は、死んだ人と一緒に暮らしていた家族のものになると思うでしょう。では、死んだ人に家族がたくさんいたら、具体的にだれがどれだけもらえるのでしょうか。逆に、一緒に暮らしている家族がいなかったらどうなるのでしょうか。

実は、死んだ人のものをだれがどれだけもらえるかということについては、細かく法律で決まっているのです。そして、亡くなった人のお金をもらうことを「相続」といいます。今回は、「相続」についてお話しましょう。

結論から言うと、夫婦と子供が最優先

相続の基本的なルールは、「妻(夫)が半分。残りの半分を子供の数で分ける。」となります。また、子供がいない場合は、代わりに「おじいさん、おばあさん」がもらえます。「おじいさん、おばあさん」もいない場合は、死んだ人の兄弟や姉妹がもらえることになります。お父さんが死んでしまった場合の具体例は以下の通りです。

例えば、Aさん・Aさんの妻・子供2人の4人家族がいたとします。もし、Aさんが死んでしまったら、Aさんの妻の分は1/2となり、残りの1/2を子供どうしで分けます。つまり、この場合は以下の通りになります。
Aさんの妻・・・1/2
子供(上の子)・・・1/2÷2=1/4
子供(下の子)・・・1/2÷2=1/4

もし子供が3人の5人家族だったらどうなるでしょうか。同じように以下の通りになります。
Aさんの妻・・・1/2
子供(上の子)・・・1/2÷3=1/6
子供(真ん中)・・・1/2÷3=1/6
子供(下の子)・・・1/2÷3=1/6

引き継がれるのはお金だけなの?

死んだ人から引き継がれるのは、お金だけなのでしょうか?実は、死んだ人のものというのは、お金だけではなく、家や車や宝石なども含まれます。だから、例えば死んだ人があまりお金を持っていなくても、土地や家、宝石などをたくさん持っていれば、残された家族は、たくさんの財産を相続することになるのです。また、逆に死んだ人に借金があった場合は、借金も死んだ人の家族が相続します。では、たくさんの借金をしていた人が死んでしまったら、残された家族は、たくさんの借金を返済していかなければならないのでしょうか。

死んだ人の財産や借金について、残された家族は「相続しない」ということができます。これを「相続放棄」といいます。つまり、例えば死んだお父さんが1億円の借金をしていたとしても、相続放棄をすれば、借金は引き継がなくても良いのです。

では、例えば死んだお父さんに借金と貯金と両方あった場合はどうでしょうか。もしも銀行に預金が2,000万円あり、借金が1,000万円あった場合、銀行の2,000万円だけ引き継いで、借金の1,000万円は引き継がなくても良いのでしょうか。相続放棄は、特定の借金だけ、または財産だけを相続しない、ということはできません。ですから、残念ながら、財産を引き継ぐ場合は、借金も引き継がなくてはならないのです。

全額もらえるの?

死んだ人のものをもらった家族は、その一部を税金として国に払わなければなりません。この税金を相続税といい、その計算方法は相続税法という法律で決まっています。

相続税法は、相続税を計算するのにあたって、死んだ人の残した財産のうちで、残された家族が暮らしてゆくために必要だと思われるものについては税金がかからないようにするために、いろいろな工夫がしてあります。だから、今の日本では、死んだ人がかなり多くの財産を残した場合にだけ、残された家族が相続税を支払わなければならないという制度になっています。

では、どれくらいのお金を税金として納める必要があるでしょうか。

例えば、お父さんの財産を、お母さんと子供の2人で相続する場合・・・

まず、財産から、借金や葬式費用などを差し引きます。ここでは、1億円だったとします。

相続税を支払う場合、1億円全てに対して税金がかかるわけではなく、5,000万円 +(1人あたり1,000万円)までは税金はかかりません。この場合、家族が2人ですので、5,000万円+1,000万円×2人=7,000万円までは無税です。(これを基礎控除と呼びます)残った3,000万円に税金がかかります。家族2人の場合だと、税金は350万円です。

では、1億円をお母さんと子供で半分ずつもらったとしましょう。そして、子供は10歳だったとします。

お母さんの税金=350万円×1/2=175万円
ところが、お母さんはお父さんと夫婦だったので、税金が軽減されます。この例の場合は、お母さんには税金はかかりません。

子供の税金=350万円×1/2=175万円
相続した子供が未成年だった場合、20歳になるまで1歳につき6万円ずつ相続税が軽減されます。だから、175万円-6万円×(20歳-10歳)=115万円となります。つまり、1億円という大金を相続しても、この場合の相続税は115万円程度で済みます。

ところで、相続で死んだ人の財産をもらった人のうち、相続税を支払わなければならなかった人は、どれくらいの割合だと思いますか?平成17年の場合、亡くなった人のうち、その家族が相続税を支払わなければならなかった人の割合は、たったの4.2%です。よく相続税対策で不動産を買ったりする人がいますが、実際に遺族が相続税を支払う人は20人に1人もいないため、ほとんどの家庭では不動産や生命保険などによる相続“税”対策は不要といえます。

なお、相続税を支払わなければならない人や、相続税法の決まりで特別に相続税がかからないようにできる一部の人などは、死んだ人が住んでいたところの税務署に申告をしなければなりません。この、申告や相続税の支払いをいつまでにすればよいかというと、原則として死んだ日から10か月後までです。10か月というと長く感じますが、人が死んだときというのは、葬式をはじめとして、残された家族がすることはたくさんあります。その間に、死んだ人の戸籍を調べたり、家や土地などの価値を調べたり、いろいろ時間のかかる事をしなければならないので、意外と早く時間が過ぎてしまうので注意が必要です。

生きているうちならば、だれに何をあげるか決められます。

はじめに、法律で死んだ人の財産は家族のだれがどれだけもらうかが決まっているといいましたが、それは死んだ人の意思表示が何もなかった場合です。生きている人は、自分が死んだときに自分の財産を、だれにどれだけ残すのかを自分で決めることができます。ただし、自分の希望をきちんと実現するためには、その希望を、遺言という形で残しておかなければなりません。遺言は満15歳以上の人が作ることができ、作った人が死んでからその効力を生じます。

遺言の形式は法律で厳格に定められていますから、どうしても遺言の内容を秘密にしたい場合を除いては、記載内容の不備などによってせっかく作った遺言が無効になってしまわないように、弁護士・司法書士・行政書士などの法律の専門家に相談しながら作成するか、または公証人という専門家に作成してもらえる公正証書遺言を作成するのが安全です。

人が亡くなるというのは悲しいことですが、一方で相続の手続きを行なう必要があるため、けっこう忙しいものです。また、特にお金持ちの人は、自分が万が一死んでしまったときに家族の人に財産を残したい場合は、遺言が必要になります。「自分がもし死んだら」などと考えたくはないものですが、万が一のときには何をしなければならないか、を知っておくといざというときに役立ちます。
具体的な税金の相談であれば税理士に相談するのが良いでしょうし、一般的な知識ならばファイナンシャルプランナーが相談にのってくれます。

執筆:藤田匡彦(ふじたまさひこ)CFP
湘南の会計事務所にてファイナンシャルプランナーとしてお客様に役立つアドバイスを心がけている。

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