節約・ライフプラン

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社会保障の落とし穴

第3回:「元気で長生き」が理想!保険料は払い損が幸せというけれど・・・
〜 年収に比例しない老齢厚生年金、一生涯支払いが続く保険料

「これまで払った保険料の元を取らないとソンだから、要介護の状態になりたい」と考える人ってあまりいませんね。誰しも、できる限り介護サービスを受けず人生を全うする「元気で長生き」が理想でしょう。公的介護保険や医療保険の保険料は、「払い損」が一番幸せです。
しかし、払った保険料に応じて受けられる老後の年金に比べ、介護保険や医療保険は利用しなければ保険料は掛け捨てです。
介護サービスや医療の治療などの内容は、払う保険料の多少に関係なく同じですが、サービスなどを受けたときの自己負担割合は前年の所得で異なります。今回は、低所得者に比べ見逃されがちな高収入だった人の「75歳からの社会保険」のリスクをお話しましょう。

現役時代の年収に比例しない年金受給額

厚生年金に加入しているAさんとBさん。退職時の年収がBさんの約2倍のAさんですが、年金額は2倍にはなりません。
「えっ、サラリーマンの年金って、『報酬比例』ではなかったの?」
そういう声が聞こえてきそうです。ここに年金制度の複雑さがあるのです。これから順を追って解説していきましょう。
二人が65歳から受給できる年金は、老齢厚生年金と老齢基礎年金(国民年金)です。ふたつの制度から計算された合計額を受給する訳ですが、その計算方法に特徴があるのです。

<AさんとBさんの年金額のイメージ>


※年金額の計算の元になる平均給与は収入上昇を考慮。総報酬制は考慮せず試算。

年金が収入に比例しないわけ 〜 標準報酬月額に上限がある

さて、老齢厚生年金は、たしかに報酬比例の制度なのですが、「標準報酬月額」という算定方法に注意が必要です。下表を参照してください。現役時代に得ていた月額に応じて、「標準報酬月額」という金額が算定され、保険料、年金額に反映されます。報酬が多いほど、標準報酬月額も多くなっていきます。しかし、よく見てください。標準報酬月額は、62万円が上限となっているのです。

たとえば、給与が77万円の場合、年金の計算の基礎となる標準報酬月額は、62万円として計算されます。つまり一定以上の収入のある人の老齢厚生年金額は収入に比例しないことになるのです。年収1200万円のAさんと、624万円のBさんの老齢厚生年金が2倍でない理由がここにあるのです。

さらに老齢基礎年金が加算されたものが、65歳から受給する年金額となる訳ですが、老齢基礎年金は、加入期間が同じであれば、収入が多くても年金額は収入に比例しません。

厚生年金
等級
標準報酬月額 報酬月額
円以上    円未満
1 98,000          〜101,000
2 104,000 101,000〜107,000
3 110,000 107,000〜114,000
4 118,000 114,000〜122,000
5 126,000 122,000〜130,000
6 134,000 130,000〜138,000
7 142,000 138,000〜146,000
8 150,000 146,000〜155,000
9 160,000 155,000〜165,000
10 170,000 165,000〜175,000
11 180,000 175,000〜185,000
12 190,000 185,000〜195,000
13 200,000 195,000〜210,000
14 220,000 210,000〜230,000
15 240,000 230,000〜250,000
16 260,000 250,000〜270,000
17 280,000 270,000〜290,000
18 300,000 290,000〜310,000
19 320,000 310,000〜330,000
20 340,000 330,000〜350,000
21 360,000 350,000〜370,000
22 380,000 370,000〜395,000
23 410,000 395,000〜425,000
24 440,000 425,000〜455,000
25 470,000 455,000〜485,000
26 500,000 485,000〜515,000
27 530,000 515,000〜545,000
28 560,000 545,000〜575,000
29 590,000 575,000〜605,000
30 620,000※ 605,000〜          
年3回以下の賞与等は、1回150万円が上限
※ 厚生年金の標準報酬月額の上限

年金額と社会保険料を世帯合算してみよう

Aさん、Bさんともに妻は専業主婦(国民年金)として、世帯合算の年金受給額を計算してみましょう。どちらも40年の加入期間を満たしているとすると、夫の報酬額と関わりなく、一律に79万2,100円が支給されます。

さらに社会保険料の負担を考えに入れてみましょう。後期高齢者医療制度と65歳以上の介護保険の保険料は個人単位で支払いますが、保険料の計算は世帯の収入も関係するため、夫の年金額が高い世帯の保険料は高くなります。

年金額から社会保険料を差し引いた金額について、AさんとBさんを比べると、違い(倍率)は、一層小さくなることが分かります。

<夫婦が共に75歳時のイメージ>


※年金額と社会保険料は、平成20年4月現在、社会保険料は東京都C市で試算

老後はどこに住む? 地域で異なる高齢者の保険料  格差最大1.4倍 年平均8万3,885円

後期高齢者(長寿)医療制度の保険料は都道府県、介護保険は市町村で異なります。老後どこに住むかを考えるとき医療と介護の保険料も重要な選択肢の1つになりそうです。年間保険料の平均は、8万3,885円、保険料の格差は、最大1.4倍となっています。
もちろん、年金額が高い世帯の保険料は高くなります。

厚生年金208万円(単身者)の後期高齢者の年間保険料の例

長野 岩手 静岡 東京 三重 新潟 山形
71,700円 72,200円 73,600円 73,880円 74,103円 74,600円 74,900円
熊本 山口 佐賀 北海道 香川 高知 福岡
94,100円 95,177円 95,800円 96,100円 97,000円 97,409円 101,750円

平成20年4月現在

準備は早すぎることはない〜 老後をイメージしてプランニングを!

上記は現在の平均的な厚生年金受給者の保険料です。団塊の世代が75歳になる約15年後は、高齢者比率がもっと高くなります。果たして公費や若年者の保険料がどれだけ期待できるでしょう。また、将来的には高齢者の保険料や窓口負担は増える可能性がありそうです。
現役時代に高収入の人は、「75歳からの社会保険」のリスクも認識して、準備を怠らないことが肝心ですね。

<後期高齢者の医療にかかる費用の負担内容>

より豊かな老後の準備のために、自分自身で「個人年金」などを利用して準備をしておく方法があります。確定型の個人年金であれば、年収とは無関係に、支払った保険料に対して確実に予定通りの年金額と、場合によってはプラスして増加年金を受け取ることができます。

現役時代の収入の一部を自分自身の老後の資産として残しておくことで、公的年金の受取額が現役時代の報酬に比例しないことを補い、高齢者比率が上がっていくなどの社会環境の変化に対して備えておくことができます。また、「個人年金」は所定の条件を満たせば保険料控除を受けられ、税負担が軽減されることも有利な点です。

一般的な確定年金型の個人年金は、準備が早ければ早いほど、戻り率と照らし合わせていろいろなプランを検討する際の自由度が高くなりますので、早めのご検討がオススメです。

執筆:音川敏枝(ファイナンシャルプランナー)CFPR
ファイナンシャルプランナー(CFP)、社会保険労務士、DCアドバイザー、社会福祉士。
仲間8名で女性の視点からのライフプランテキスト作成後、FPとして独立。金融機関や行政・企業等で、女性の視点からのライフプランセミナーや年金セミナー、お金に関する個人相談、成年後見制度の相談を実施。日経新聞にコラム「社会保障ミステリー」、読売新聞に「音川敏枝の家計塾」を連載中。 主な著書に、『離婚でソンをしないための女のお金BOOK』(主婦と生活社)、『年金計算トレーニングBOOK』(ビジネス教育出版社)、『女性のみなさまお待たせしました できるゾ離婚 やるゾ年金分割』(日本法令)。
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