節約・ライフプラン

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住宅資金・返済
山下さん顔写真 FP:山下和之

長らくマイホーム関連の不動産会社、金融機関、そして実際にマイホームを買われた一般の方々など、多方面の取材に携わってきた経験を生かして本音でお答えします。効率的なマイホームの頭金づくりから、ローン破綻に陥らないローンの組み方、少しでもトクする返済方法まで何でもご質問ください。

■ご相談者
相談者(仮名)
今城 満之さん
29歳公務員。33歳の奥様と0歳のお子様の3人家族。年収630万円
マンション購入を決定、2年後からローン返済が始まります。返済負担率が30%を超えてもやっていけるものでしょうか?
最近新築マンションの購入契約を結びました。価格は3650万円で、自己資金は1000万円です。大型の物件なので、入居は2年後になるのですが、いまからローンの返済が心配です。管理費や修繕積立金、駐車場料金まで加えると返済負担率が30%を超えてしまいます。まだ若いので多少は年収も上がるとは思いますが、こんな資金計画でほんとうに問題はないでしょうか。

 今城さんの相談のポイント
  • いまの計画では返済負担率が30%を超えるが問題はないか
  • 返済負担率を下げるために金利の低いローンにしたほうがいいのか
  • ほかに返済負担を軽くする方法はないか
■アドバイス
家計管理さえシッカリやっていけば十分に返済可能な資金計画だと思います

公庫融資を中心とした資金計画で安心

今城さんの場合、公庫融資を中心にした資金計画を立てておられます。公庫融資は2007年3月で原則的に直接融資は廃止されることになっていますが、それまでに申し込んだ分は申込み時の条件通りに利用できるので心配はありません。2年後にいくら金利が上がっていても、現在の2.80%の金利で借りることができるのです。最近は、公庫と民間が提携した「フラット35」という最長35年の固定金利型のローンが、都市銀行でも2%台後半で利用できるようになっています。しかし、これは融資実行時の金利が適用されるので、2年後に入居するときに金利が上がっていると返済計画に大きな影響が出てきます。また、民間ローンでは年利1%前後のきわめて金利の低い商品もありますが、それらも同じように融資実行時の金利が適用されますし、一定期間後には金利・返済額の大幅アップの可能性もあります。特に融資実行までの期間が長い大型の新築マンションの場合には、今城さんのように、現在の低い金利が保証される公庫融資を中心に資金計画を立てるのが最も安全だと思います。

返済負担率をどう考えればいいのか

それでも、購入後の負担が大きくなるのを懸念されているようなので、それを検証しておきましょう。一般に、住宅ローンの年間返済額は年収の25%以下に抑えるのが無難といわれています。もちろん、年収が1000万円を超えるような高額所得者なら25%を超えても十分にやっていけるでしょうが、年収500万円、600万円台であれば、やはり25%をひとつの目安にするのがいいでしょう。実際、住宅金融公庫の調査でも、公庫融資を利用して新築マンションを買った人の返済負担率の平均は全国平均で19.5%、価格の高い首都圏でも20.5%となっています。25%を上限に、できれば20%前後に抑えることができればベストということになりそうです。その点から、今城さんの資金計画をチェックすると、下にあるように、20.9%で、首都圏の平均値とほぼ同じ水準ということになり、さほど無理のない範囲という気がします。家計管理さえシッカリしていけば、現在29歳で今後もしばらくは年収アップが考えられる今城さんなら十分にやっていける計画だと思います。

管理費などの諸経費の負担も忘れずに

今城さんの懸念は、マンションの場合にはローンだけではなく、管理費・長期修繕積立金・駐車場料金などの負担も考慮しなければならない点にあります。実際、これらを加えると返済負担率は27.0%になります。額面の年収ではなく手取りベースでみると、32.6%に上がってしまいます。手取りの3割以上を住宅関係費に取られるのは、たしかにつらいかもしれませんが、首都圏で新築マンションを購入しようとする以上は、これは止むを得ない現実ということができます。公庫調査の首都圏の平均値20.5%の返済負担率の人でも、管理費などのその他の負担を加え、さらに手取りベースで計算すると、ほぼ例外なく3割程度の負担になるはずです。それでも、2年後にマンションに引っ越すときには、現在はゼロ歳児のお子様も多少は手が離れて、奥様もお仕事に復帰できる可能性があります。家計の切り詰めと、収入の増加で何とか対応していくことができるはずでしょうし、実際にみなさんそうされていると思います。

金利の低いローンはお勧めできない

それでも何とか返済負担を抑えたいということなら、金利の低いローンに切り換える、自己資金を増やす――の二つの方法が考えられます。しかし、金利の低いローンは先にも触れたようにたいへんリスクが大きくなります。たとえば、固定期間選択型3年ものの、0.95%や1.00%のキャンペーン金利を利用すると、2年後に今の金利が続いていれば、返済額を2万円以上減らすことができます。しかし、2年後も低金利が続いているかどうかは誰にも分かりませんし、よしんばそうだったとしても、その3年後には金利が上がって、返済額が大幅に増えるリスクがあります。それよりは、自己資金を増やす努力が先決でしょう。ご両親と相談して贈与を受けることができないか、完成までの2年間に何とか貯蓄を増やして、借入額を減らせないかガンバってみてください。仮に、ご両親から300万円の贈与を得ることができれば、ローンだけの負担率なら18.4%で、諸経費を含めても手取りに対する負担率は3割を切ります。「住宅取得資金贈与の特例」を利用すれば、贈与税はゼロですみますから、これがベストでしょう。そうでなくも、これから2年間で借入額を100万円でも200万円でも減らす努力をされてはどうでしょうか。


今城さんの資金計画

購入予定価格 3650万円
自己資金 1000万円


1. 親からの贈与なしの場合
融資の種類 借入額 金利 返済期間 毎月返済額
公庫基本融資 2550万円 2.80% 30年 104,778円
銀行ローン 100万円 1.50% 20年 4,825円
合計 2650万円 -- -- 109,603円

●毎月かかる住居費
住宅ローン 109,603円
管理費 15,300円
修繕積立金 6,800円
駐車場料金 15,000円
合計 146,703円

●負担率
年収(額面に対する負ローン負担率 109,603円×12カ月÷630万円= 20.9%
年収(額面)に対する住居費負担率 146,703円×12カ月÷630万円= 27.9%
手取り額に対する住居費負担率 146,703円×12カ月÷540万円= 32.6%
2. 親からの贈与があった場合(贈与額300万円)
融資の種類 借入額 金利 返済期間 毎月返済額
公庫基本融資 2350万円 2.80% 30年 96,560円

●毎月かかる住居費
住宅ローン 96,560円
管理費 15,300円
修繕積立金 6,800円
駐車場料金 15,000円
合計 133,660円

●負担率
年収(額面に対する負ローン負担率 96,560円×12カ月÷630万円= 18.4%
年収(額面)に対する住居費負担率 133,660円×12カ月÷630万円= 25.5%
手取り額に対する住居費負担率 133,660円×12カ月÷540万円= 29.7%



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