結論からいってしまうと、瀬戸さんの場合には繰り上げ返済も借り換えもさほど効果は期待できません。奥さんの収入が一時的に大幅に減少するのに備えて、それまでにシッカリと預金を増やしながら、生活の節約を徹底するのが一番現実的な対応策といえるでしょう。なぜなのか、具体的に検証してみましょう。
まず貯蓄のうち100万円を繰り上げ返済して、毎月の返済額を減らす方法を考えてみましょう。
マイホームを買ってから3年が経過した瀬戸さんのいまのローン残高は約3571万円。100万円を「返済額圧縮型」で繰り上げ返済すると、毎月の返済額は12万3722円になります。毎月の負担が3575円減ることになります。正直いって年収が200万円以上減ってしまうのに比べると焼け石に水といわざるを得ません。第一、貯蓄200万円のなかから100万円を繰り上げ返済に充ててしまうのには不安が残ります。こういう厳しい時代ですから、万一収入が途絶えても半年から1年は生活できるだけの蓄えは残しておくべきでしょう。それに出産費用の準備も欠かせません。さまざまな意味で現在の段階での繰り上げ返済はお勧めできないのです。
次に金利上昇リスクへの不安ですが、たしかに変動金利型は金利が上がると6年目には返済額が増えます。金利上昇幅が大きいと、返済額の増額だけではカバー仕切れず利息が重なっていき、「未払い利息」が発生するリスクがあります。優遇金利を利用して2.075%の金利で借りている瀬戸さんの場合にも、金利が4%、5%に上がってしまうと、そのリスクがでてきます。しかし、現実的に現在の経済状況を考えたとき金利上昇リスクがどこまであるのでしょうか。エコノミストの見解をみても、ほとんどの人が「ここ2,3年は大幅な金利上昇は考えにくい」としています。私自身もそう思います。ですから、固定金利型の借り換えもそう急ぐ必要はないと思います。もう少し経済、金利情勢を見極めてからの動きでいいのではないでしょうか。(注:2002年10月時点)
仮に固定金利型に借り換えたとしても、負担は重くなるばかりです。最近では各種の優遇金利を適用する銀行が増えていますが、それでも10年固定金利型になると金利は2.80%程度。毎月の返済額は14万円台になってしまいます。通常の金利では15万円台です。当面金利アップが考えにくい現状では、こちらもあまりお勧めできません。ただし、今後の金利動向に常に目を配っていただき、金利上昇傾向が明確になってきたときには、多少返済額が増えるにしても借り換えを実行するようにしてください。
・瀬戸さんの現在の住宅ローン
借入額 |
金利 |
返済期間 |
毎月返済額 |
現在の残高 |
3800万円 |
2.075% |
35年 |
12万7347円 |
3571万2510円 |
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・返済額圧縮型で100万円繰り上げ返済する
借入額 |
金利 |
返済期間 |
毎月返済額 |
3471万円 |
2.075% |
32年 |
12万3772円 |
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・10年固定に借り換える(1)……優遇金利がない場合
借入額 |
金利 |
返済期間 |
毎月返済額 |
3571万円 |
3.40% |
32年 |
15万2700円 |
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・10年固定に借り換える(2)………優遇金利がある場合
借入額 |
金利 |
返済期間 |
毎月返済額 |
3571万円 |
2.85% |
32年 |
14万1861円 |
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