節約・ライフプラン

節約・ライフプラン

住宅資金・返済
山下さん顔写真 FP:山下和之

長らくマイホーム関連の不動産会社、金融機関、そして実際にマイホームを買われた一般の方々など、多方面の取材に携わってきた経験を生かして本音でお答えします。効率的なマイホームの頭金づくりから、ローン破綻に陥らないローンの組み方、少しでもトクする返済方法まで何でもご質問ください。

■ご相談者
相談者(仮名)
芳川 雄一さん
31歳、会社員。共働きの奥さん(28歳)と2人くらし。
「つみたてくん」を始めたけれど公庫廃止の動き 特典は保証される?3年後まで購入は待ったほうがいい?
今年春の「つみたてん」( 住宅金融公庫の住宅債券) の受付に申し込んで、この秋から積み立てを始めました。40万円コースで、5 年後には元利合計で約440 万円ほどになる予定です。現在マイホームのための貯金が600 万円ほどなので、これと合わせて頭金1000万円で、5000万円までの新築マンションを買いたいと考えています。でも、気になるのが公庫廃止の動き。公庫が廃止になっても、つみたてくんは元本が保証されるのでしょうか。割増融資などの特典は利用できるのでしょうか。いまは賃貸マンションに住んでいますが、住み心地がよくないので、来年の春の契約更新前には引っ越しを考えています。つみたてくんの元本が保証されなかったり、特典が利用できないとなれば、5年も待つ意味はないので、今度の引っ越しのときに買ってしまったほうがいいのでしょうか。


・芳川さんのマイホーム計画のポイント
  • 3〜5年後に5000万円までの新築マンションか中古一戸建てを購入
  • それまでに頭金を1000万円にする(現在600 万円、今秋よりつみたてくん40万円コースをスタート)
  • 現在の家賃は約12万円。ローンも月々12万円、ボーナス時20万円程度に抑えたい
■アドバイス
特典に期待するなら待っても損はしないが、本当に欲しい物件が見つかれば買うこともオススメ

住宅金融公庫の「つみたてん」は20万円、40万円、60万円の各コースがあって、半年に1 回ずつ7 回から11回積み立てるものです。7 回以上積み立てると、最高で公庫の割増融資を1320万円利用できるなどの特典があります。しかも、利回りは5 年後の年平均利回りで1 %近くになるので、たいへん有利な金融商品としても人気があります。ただ、ご質問にもあるように、気になるのが公庫廃止の動きです。政府は2005年度末までの公庫の融資業務廃止を決めていて、その方向で年々融資業務も縮小しています。つみたてくんの特典は3 年後から有効になるのですが、その時点では公庫が融資業務を行っていない可能性もあります。その場合、つみたてくんがどうなるのか気になるところです。

住宅金融公庫によると、公庫の融資業務が廃止された場合もつみたてくんの元本については確実に保証するとしています。もともとつみたてんは途中解約しても一定の手数料がかかるだけで、特にペナルティはないので金融商品としてみた場合の使い勝手も決して悪くはありません。その意味では、安心していただいていいと思います。問題は、割増融資などの特典ですが、この点については「公庫融資が廃止されたときには現在の特典を継続できるとは保証できない」としています。公庫サイドでは、受け皿となる民間金融機関などを通して継続できるように努力する方向ですが、調整が不調に終わって継続できない可能性もあります。ですから、特典だけにこだわってつみたてくんを続けていると、資金計画に狂いが出てくる可能性があります。

芳川さんの場合には、近く引っ越しを予定されているようで、特典がなくなるのならそのときに買ってしまったほうがいいのかと悩んでおられるようです。いろんな考え方があるでしょうが、これから物件を探してほんとうにほしいと思う物件が見つかったら、買ってもいいのではないかと思います。購入予算に比べて現在はまだ頭金がやや不足気味なので、5000万円の新築マンションを買うとボーナス返済なしで毎月返済額は16万円強で、年間約197 万円の返済になります。毎月約13万円、ボーナス時約20万円に割り振ることができますから、年収800 万円ならさほど厳しい負担ではないかもしれません。早めに買えば、それだけ早く返済が終わるのですから、それも一つの考え方でしょう。

ただし、これはあくまでも「ほんとうにほしいと思う物件が見つかったとき」という前提つきです。実のところ、これからの住宅購入環境の変化を見通した場合には、そう焦る必要はないと思います。経済がこんな状態ですから、この数年のうちに価格や金利が急激に上昇することは考えにくく、ある程度の年月をかけて、ジックリ探しても、そう後悔することはないはずです。仮に、5 年後まで価格が変わらないとすれば、頭金が1000万円になりますから、返済計画も格段にラクになります。割増融資を1320万円利用できれば、ボーナス返済なしで毎月14万円台の返済ですみます。これなら、毎月約11万円、ボーナス時20万円の負担で買うことができます。仮に、公庫の割増融資を利用できない場合でも毎月返済額が数千円増える範囲にとどまります。

とはいえ絶対ということはありません。一応、金利や価格のアップも頭に入れておいたほうがいいでしょう。ここでは金利が1 %上がった場合の試算をしてみました。すると、現在頭金600 万円で買うより毎月の返済額は多くなってしまいます。5 年間セッセと頭金を増やしても、金利アップに吸収されてしまうわけです。現在の経済情勢では金利アップは考えにくいといっても、1 %程度の上昇は決してないこととはいえません。こうした点も一応念頭に入れながら、いま買うのか、つみたてくんを終えてから買うのか、ジックリ判断していただきたいところです。

5000万円の新築マンションを購入する場合の資金計画

・首都圏で専有面積80m2の新築マンションを購入

・現在の資金計画
融資の種類 借入額 金利 返済方法 毎月返済額
 公庫基本融資 2,420万円   2.55% 35年 8万7163円
 年金一般融資 800万円 2.75% 35年 2万8940円
 銀行ローン 1180万円 3.40% 35年 4万8087円
 合計 4400万円 -- -- 16万4190円

・5 年後の資金計画

 公庫の割増融資を使える場合
融資の種類 借入額 金利 返済方法 毎月返済額
 公庫基本融資 3740万円  2.55% 35年 13万4707円
 年金一般融資 260万円 2.75% 35年 9646円
 合計 4000万円 -- -- 14万4353円

 公庫の割増融資がない場合
融資の種類 借入額 金利 返済方法 毎月返済額
 公庫基本融資 2420万円   2.55% 35年 8万7163円
 年金一般融資 800万円 2.75% 35年 2万8940円
 銀行ローン 780万円 3.40% 35年 3万1786円
 合計 4000万円 -- -- 14万7889円

 公庫の割増融資がなく、金利が1 %上がった場合
融資の種類 借入額 金利 返済方法 毎月返済額
 公庫基本融資 2420万円   3.55% 35年 10万0718円
 年金一般融資 800万円 3.75% 35年 3万4232円
 銀行ローン 780万円 4.40% 35年 3万6432円
 合計 4000万円 -- -- 17万1382円




 ▲ INDEX 

Copyright(C) NTT IF Corporation